「個人の売主」は必ず損をする。|両手取引狙いの不動産会社
ウチコミ!タイムズ編集部
2015/07/07
前回のお話しの「今まで新築が売れたのは性能ではなく 仕組み」のお話で出てきましたが、不動産流通市場には 不動産業者が売主になる「物件」と、一般の消費者が売主になる「物件」があります。
この二つの物件、どちらも共に「売主」ではありますが、相対的な情報量やノウハウの有無などから、とても同じ土俵で競争できる環境にはありません。
まず、不動産業者が売主の「物件」(以後、「業者物件」と表記します。)は、圧倒的に新築住宅かリフォーム済みの住宅が多い事です。
これには、住宅の保証が付いているものも多く、設備などは新品です。その上専門知識などの無い消費者の立場から見ても、ビジュアル的にも物件に問題を感じさせない「分かりやすい物件」です。
更に、耐震性能・性能評価・長期優良住宅など、消費者の希望に合わせて探すことも、オプション等で追加する事も「中古住宅」に比べて容易です。
これに対して、一般の消費者が売主の「物件」(以後、「個人物件」と表記します。)の場合は、殆どの物件が「中古住宅」です。
決して「中古住宅」が悪いという意味ではありませんが、単純に比較されてしまいますから、マイナス部分が出やすく不利な展開になりがちです。
その上、中古住宅を売られる大部分の方が、ご自身が住んだまま販売しています。これも、販売しないと動けませんから仕方がない事なのですが…。
販売するという見地から話をしますと、住んだ状態を見られてしまう為、販売とは関係のない家の中の生活状況まで、加味されてしまう可能性があります。
綺麗に整理・整頓されている家でさえ、経過年数やペットの匂いなど意外と、見る方に影響を与えてしまう事が多いのも事実です。
更に、購入する方の目線で見て行きますと、「中古住宅」の場合は他にも沢山の心配事が考えられます。
例えば…。
雨漏りは大丈夫なのか? シロアリにやられていないか? 給湯器などの設備は、あと何年使えるのか? リフォームするとしても幾ら掛ければどうなるのか? 地震などが来たときはどうなるのか? と、買主さんが決断するのにハードルがとても高い「物件」です。
以上の事だけを比べて見ても、圧倒的に不利な競争です。
本来であれば、この差を埋めるべく専門知識や経験を生かして販売営業をしてくれるハズの「個人物件」を取り扱う不動産業者(媒介契約を交している)が、不動産業界の「悪構造」の中にいて、個人売主に協力的ではありません。
つまり、1回の取引で沢山の収益が望める「物件」の営業を第一に動きます。不動産業者の収益の多寡で比べると、完全に「両手取引」ができる業者物件に軍配が上がってしまいます。
実際、携わる不動産会社の販売活動(業務負担)やリスクも格段に違います。「新築住宅など」の場合は、建物図面や仕様書、設備表、保証書と考えられる限りの資料が揃えられ、保証が付いています。と言う事は、物件の引き渡しまでが完了すれば、不動産業者の業務もほぼ完了となります。
「中古住宅」の場合では、所有者の管理如何では「資料が揃わない」事さえある上に、保証などはありません。
購入者に説明をしようにも、資料が無かったり、経緯が不明だったりと手間がかかる事が非常に多いのです。その上、契約となって引渡しが終わっても建物などの不具合やトラブルの対応にも応じなければなりません。
仲介に係る不動産業者の収入、手間、リスクヘッジと見合わせてきましたが、どれを取っても「業者物件」が有利な事が見えてきたと思います。この状況では、「業者物件」と「個人物件」の競争は、もう勝負にすらなりません。とても公平な競争には成りえないのが、今の不動産業界の構造です。
ここまでの話で「もう十分」という方もいらっしゃると思いますが、実はまだまだ続きがあります。続きは、いよいよ核心の部分です。更に恐ろしい内容の話になります。
次回 PART2をお楽しみに。
今では自分で物件を売りに出せるウチコミ!売買REVOというサイトなどもあります。
有効に使って不動産物件の売却、購入をしてみてはいかがでしょうか?
この記事を書いた人
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