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空室対策としてペット可住宅を積極的に取り組みたいが…

実際のトラブル事例から大家さんがゴミ部屋や住民トラブルを未然に防ぐ方法を考える(2/2ページ)

山本 葉子山本 葉子

2020/02/27

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「ペット可賃貸住宅」だからこそできるコミュニケーション

さて、自分がこのような物件のオーナーだったと思うと、正直、怖いですね。仮にあのまま放置されていたとしたら、“ゴミ部屋”になっていたことでしょう。

ペット可に限らずですが、賃貸物件の室内が「適正に(キレイに)使われているかどうか」を日常的に把握するのは困難です。共用部分と違って各部屋に監視カメラはもちろんつけられないですし、特段の用もないのに室内を見せてくださいとも言えません。

先のケースの男性住人は、「(人にとっての)猫の問題行動」に困って保護団体に連絡してきたわけですが、実はペットの飼育などの相談を活用して住人の把握・部屋の使用状況の可視化などにつなげることができます。

猫(や犬)を飼い始めた直後は、ペットがフードを残したり、下痢や嘔吐をしたり、なかには風邪症状になったりします。ペットとの同居開始直後は健康面やメンタル面でも相談事の多くなります。

また、順調に飼育していても今回のように手術の必要性などに気づかず、どう対処してよいのかわからないことも起こります。そこで管理会社にペット相談の窓口やマンション内に「飼い主の会」があれば、そこにペットの問題解決ができ、部屋の状況もわかるため、大事に至らず解決することができます。

この件では、どの時点から男性がビール缶をため込み始めたのかは特定できません。しかし、彼も可愛い猫のたわいもない話やフードのチョイスなどを気軽に話せる相手がいたら、保護団体に電話するよりずっとずっと以前、それほどひどくない状態の時に、誰かに気づいてもらえたのではと思います。

一方、管理する側も、飼育動物の様子を聞くことをきっかけに、住む人との関係を築ければ無理なく室内に立ち入る機会を作ることができるでしょう。

手間のかかることですが、「問題が起きる以前から、自発的に中を見せてもらえるようにする」「早期発見・早期対応がしやすくなり部屋のダメージなどのリスクを減らせる」ように運営体制を整えると、ペット可物件は一般の賃貸よりも賃貸中の室内の把握がしやすくなるのです。しかし、放置すればペット可住宅はトラブルの原因にもなります。

ペット可物件は空室対策になると同時に、住んでくれる方々とのよい関係を無理なく継続することができます。そして、そのことで物件の資産価値を損なうことを防ぐことにもつながります。ただし、それを維持するために少々のマンパワーと経費をかけることが求められます。

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この記事を書いた人

NPO法人東京キャットガーディアン 代表

東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。

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