入居者さんへの防災の呼びかけで、オーナーのリスクも減らせます
ウチコミ!タイムズ編集部
2019/12/08
イメージ/123RF
例年休みもなく日本の各地を襲う風水害。忘れた頃にどころか、前回の記憶も生々しいうちにやってくる大地震。賃貸オーナーである皆さんは、入居者さんに対して、防災のための呼びかけを何かしていらっしゃいますか?
「しているよ」とおっしゃるオーナーさんは、積極的な賃貸経営をされているエネルギッシュな方も含めて、多分ほとんどいらっしゃらないでしょう。「それは入居者さんの自己責任の範疇にあること」と、普通は誰もがそう思うからです。
ですが、これからはちょっと考え方を変えてみた方がよいのかもしれません。なぜなら、入居者さんの防災意識が高まることは、入居者さんご自身のメリットなだけではなく、そのままオーナーさんのメリットにもなるからです。
さまざまな自然災害に関連して、賃貸住宅にお住まいの入居者さんに対し、オーナーさんから呼びかけやお声がけをしておいたほうがよいこと。主ないくつかを挙げていきましょう。
■ベランダを掃除してください!
大雨でベランダに水が溢れ、部屋が浸水する事故が、報道などによると意外に多く起きているようです。原因は排水口の詰まりです。溜まった落ち葉や土ボコリ、ゴミなどによって、雨水がせき止められてしまうのです。
これが起こると、2階や3階やそれ以上であっても、変わらず「床上浸水」してしまいます。入居者さんご自身も普段なかなか気づけないこのリスクについて、しっかりと呼びかけることで、事故の発生とともに物件へのダメージも防いでください。
■洗濯機用蛇口は閉めてください!
水を流したり止めたりは、洗濯機側のコントロールに任せれば楽ということで、水道の蛇口を開きっぱなしにしている人がいます。地震の揺れによりホースが外れると、水が流れ、床が水浸しになってしまいます。洗濯する時以外は、蛇口はつねに閉めておくよう呼びかけてください。
「ホースが外れると水が止まるオートストッパー付きの水栓だから安心」ということもありません。その場合も、普段から閉めておくのが正解です。蛇口からホースは外れなくとも、ホース本体の破損やホースが洗濯機から外れる事故が起こると、そこから水が流れ出るおそれがあるからです。
■家具が倒れないようにしてください!
家具の転倒による圧死は、地震による死亡原因の多くを占めています。特にワンルームや1Kなどでは、重いタンスや本棚の目の前で寝ている入居者さんも多いはずです。入居者さんの命を守り、同時に物件を災害で人が亡くなった現場にはしない。そのためにも家具の固定を呼びかけましょう。家具転倒防止器具の提供をオーナーさん自らがされてもよいほどの重いリスクです。
■ベランダに風で倒れるもの、飛ぶものを置かないようにしてください!
今年(2019年)9月の台風15号による被害では、千葉県市原市のゴルフ練習場の鉄柱が民家の上に倒れるなど、強風が猛威をふるいました。こうした状況の中では、ベランダに風で飛びやすいもの、倒れやすい物があると、それらが掃き出し窓のガラスを破り、室内へ雨が吹き込むなどの被害に直結します。ベランダにそうしたものを置かないよう、ぜひ入居者さんに呼びかけてください。
■停電時はロウソクを使わないでください!
現代人の多くは、ロウソクの扱いにあまり慣れてはいません。そこで停電時に慌ててロウソクに火を灯し、火災を起こす例が見られます。2018年に北海道で地震が起き、長時間の停電に見舞われた際は、消防庁が、「直前の台風21号による停電地域で、少なくとも3件ロウソクが原因と思われる火災が発生している」旨、注意喚起を行っています。
入居者さんにロウソクの危険性を知らせるとともに、電池式のランタンなど、災害時用の灯りの確保をぜひ呼びかけてください。
■避難時はブレーカーを落としてください。通電火災に注意を!
自然災害により停電が起きたあと、電力の復旧とともに生じる「通電火災」の危険性が指摘されています。停まっていた電気ストーブが再び動きはじめたところ、そこに倒れかかってきていた物に火がつくなどが典型的な例です。
同様に、水没し、濡れた家電が、通電によってショートすることもあります。入居者さんには、停電した状態で部屋を離れる際は、必ずブレーカーを落とし、家電のコンセントも抜いておくよう呼びかけてください。
■大きな地震の直後はトイレを使わないでください!
大きな地震のあと、揺れによってトイレの排水管が破損していることがあります。そこで水を流すと、水や排泄物の漏れや逆流が起こり、それらが居室や物件内を汚す可能性があります。「大きな地震のあとは、排水管の破損が無く、下水道も機能していることが確認されるまでは、トイレの使用は中止」をあらかじめ入居者さんに呼びかけておきましょう。非常用の簡易トイレをオーナーさんが準備、配布しておいてもよい案件です。
以上、いずれをご覧いただいても判るとおり、入居者さんが災害への対応力を増すことは、そのままオーナーさんの資産が守られることにもつながるのです。
オーナーさんも入居者さんも、ともに必要な保険に加入しておくという、事後のセーフティネットももちろん大事ですが、普段からの呼びかけや、防災グッズの用意といった事前の備えも同じように大切です。
(文/朝倉継道)
この記事を書いた人
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