ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

増える空き家、変わる需要

少子高齢化、進む一極集中、頼れるのはインバウンドだけ?

川久保文佳川久保文佳

2019/09/13

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

イメージ/123RF

最近、茨城県や埼玉県、千葉県房総半島の空き家の相談が増えてきました。

古い住宅でリノベーションしても借り手がつかない場合もあるようです。先日も、空き家をリノベーションして販売している会社を訪ねました。空き家の情報が士業の先生や自治体などあらゆるところから集まってきていて、増え続けていて収集がつかない状態とのことでした。

① 空き家情報→②リノベーション→③使えるようにする。
ここまでは順調に進むようです。契約形態ではサブリースも組まれており、入居者がいなくてもオーナーには月額わずかですが、手元に料金の支払いがされるとのことでした。しかし、借り手が見つからないままだと運営会社には収益が入らず、空き家対策も頭打ちになり、オーナーへの支払いも減額、場合によってはサブリース契約の解消ということにもなりかねません。

シェアハウス事業を行っていた会社が倒産に至ったのも記憶に新しいと思いますが、ローンを組み、建物を用意できたとしても、結局、その物件に入る人がいなければ、収益があがりません。件のシェアハウスの事業者は計画もずさんで、経営的に問題もありましたが、サブリースだから安心というわけではなく、「本当に入居するのか?」「借り手がいるのか?」「物件の事業計画は現実的か?」といったことをきちんと見極めることが重要です。

では、最近の住まいの需要における、賃貸者や購入者はどうなのでしょうか? 少子高齢化で人口は減少。しかも、首都圏への一極集中はいまも続いています。こうした状況では地方都市はますます、借り手がいなくなっています。

しかし、その一方で、田舎に暮らしたいという人も増えてきています。また、海外からの旅行客が都心だけではなく日本の地方都市へ興味を示してきています。そういった需要の掘り起こしが、空き家に住む人を増やしていくこと要因になりえます。

財産としての保有リスク

最近の20代から40代の方に取材すると、住まいにこだわらない人が増えていると感じます。稀ですが、中には安いシェアハウスに住みながらバーチャルな仮想空間世界での自分を楽しんでいる人もいます。

また、家を建てるということに関しては、購入した不動産に投資価値がないのなら、賃貸でよいのでは? という考え方もあるようです。家を持つことに対しての気持ちを、さらに減退させているのが、所有していることによるリスクです。 

不動産は所有することによって固定資産税を払い続ける必要があります。他の投資ではお金を取られることはありません。株式投資で税金がかかるといっても、それはあくまでも売却益にかかるものです。つまり、儲かった場合に所有税がとられるわけです。金や絵画なども保有しているからと課税されることはありません。

しかも、不動産は税金のほかにも管理費や雑草除去などの経費がかかり、こうしたリスクは付きまといます。

現在、人口減少によって祖父母や両親の家が空き家になり、引き継ぐ人が多くなってきています。しかし、使ってもいない家を保有しているだけで税金を取られるリスクを回避したいと考えて手放すケースが増え、地方都市ではこれまで以上に空き家が増えていくでしょう。

この結果、不動産の市場の価格が崩壊しつつあります。実際、数千万円をかけて建てた住宅を売ろうとしてもまったく買い手がつかないといった例も増えています。

空き家の市場価格崩壊 茨城県の戸建て4DK 390万円~

茨城県で50坪土地付き4DKの戸建てが390万円台で売り出されていました。物件をみると塀に囲まれてカーポートも整備された物件です。昭和53年築、木造2階建てです。常磐線の通る駅からも徒歩10分。周辺には大型スーパーや小中学校などもあります。建物自体の評価はゼロになるため、評価は土地だけになるのでしょうが、路線価から見るとこの価格はあまりに低いものでした。

建てた当初、数千万円した物件なため、安値では売却したくないという話をよく耳にします。なかには老後の生活費として活用したいので、3000万円以下では売りたくないという方もいます。しかし、実際にはそうした価格で売却できず、かなりの安値で手放す方も多くなってきています。

空きが目立つ保養施設やリゾートマンションの活用法は

こうした物件が多いのはリゾートマンションや別荘などの物件です。売れない理由は、温泉権利やリゾートマンションなどでは管理費の負担が大きいことがあります。なかには管理費が月額5万円といった物件もあります。

とはいえ、最近、こうしたリゾートマンションや別荘、保養施設をインバウンド向けに活用する動きが出てきています。

海外から来る旅行者の要望が、大都市圏からこうした地方へという変化してきています。全体の数から比べるとわずかですが、1つの動きとして地方都市での体験型宿泊へと移行しつつあります。また、現地の人の暖かさや居心地の良い場所に長期滞在して、現地の暮らしを楽しむ施設も増えてきています。海外の方に日本の良さを聞くと、どの地域に行っても、人が優しいし、親切だといいます。人が人を呼び、人が集うのは、そういった現地の人たちの対応やひとつひとつの親切が積み重なっていっているのだと感じます。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。

ページのトップへ

ウチコミ!