地方の過疎化、少子高齢化、空き家問題解決の可能性
川久保文佳
2018/07/03
まったなしの空き家対策
昨今、空き家率上昇の傾向にあり、2030年には3戸に1戸が空き家になるということが予想されています。少子高齢化と住まいへの需要やニーズの変化によって、都心の空き家率は高まり、地方都市の空き家は増える一方です。逆に、共同住宅や訪日外国人の流入の滞在先への移行など、対策できる要素はまだあると考えられます。
しかし、住まいを移動するだけでは、人口減少にある日本において、空き家数の低下には繋がりません。新しい用途と転用によって、現存するものを十分な価値あるものへと変更し、利活用することが必要だと考えます。
都心での空き家問題と地方との空き家問題では大きな差が生まれます。都心では空き家が増えても企業からの税収もあることから、あまり都市環境の悪化は目立ちません。しかし、地方では、空き家が増えることによる社会問題として、都市環境の悪化が考えられます。都心と同様で、空き巣、放火、大麻の栽培や取引に利用されるなど、空き家が犯罪の温床になることもあり得ます。さらに地方では、下水道などインフラの無力化、少ない人数で維持することによるコストの上昇、地域に人が少なくなることによる行政サービスの低下、交通手段の減少、固定資産税の増大が考えられます。
現在、その部分を観光という産業で埋めようという動きがあります。もともと地方都市にはさまざまな文化資産があり、海外から見ても素晴らしい自然環境や歴史的建築物、地域の産物などの宝が点在しています。地方都市から海外へ直接情報を発信して、短期滞在人口を増やすという動きも出ています。
民泊への転用に影
しかしながら、国策として行った 住宅宿泊事業法がスムーズに機能していない状況に陥っています。
住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に伴って、正規運用以外の物件をサイトから削除し、予約を一方的に取り消すという事態へ発展しました。通常の旅行会社であれば、賠償問題に発展する場合も多くあります。この民泊新法関連に対する一連の報道を見て、「民泊の何が根本的に問題になっているのか?」と疑問を感じている人も多いはずです。「安心安全の確保が一番の課題で、正規に登録されると、どこで住宅宿泊事業をおこなっているかが把握できる。小学校周辺など、一定の地域を除いて、受け入れが可能になる。」と、ヤミ民泊を排除する目的で設定した法令であったはずですが、「日本が好きで、リピーターになり、自国に戻って日本の価値を伝えていた方々に対して急に宿泊キャンセルをおこなう」という事態が起きています。民泊業界の産業としての未成熟さから起きたものなのか? 法令を急ぎすぎたのか? という疑問は残りますが、旅行者が多大な迷惑をこうむっています。休暇で飛行機を取り、さらに、宿泊を確保したにも関わらず、宿泊場所がないという事態は、楽しみである日本への旅行さえも悪い印象を与えました。
空き家対策は?
空き家対策へは、各自治体もようやく動き出したというところです。ある自治体では、大学教授をメンバーに加えて、月1回程度の有識者会議を行ったりしています。具体的な提案はなく、報告が主たる目的になっているようです。対策と対策の始動に数年かかりそうなスピード感です。人を地方へ流動し、地方への観光客を呼び込むことを目的として、さらには、空き家の対策への発展として、国土交通省、観光庁が日本版DMO(観光地経営組織)という仕組みを推奨しています。自治体のブランディングということで、内外の人材やノウハウを取り込みつつ、多様な関係者と連携していく仕組みです。この目的は観光による地方創生です。しかし、地元からは、DMOが地元定着ではなく、都心から来て、短期しか関わらないとして、地域にお金を落とす仕組みにはなっていないとの意見も出ています。
観光の恩恵を地域でうけるために
住宅宿泊事業法では、ホテル・旅館業での宿泊と違い、住宅を宿泊へ利用するということですので、住宅や集合住宅の転用が可能です。働き方がいろいろな形になりつつある中で、住まいが収益源になるというのは、自宅介護者や子育て世代の方にも嬉しいことです。核家族化などの家族の離散によって、余ってしまった住宅なども活用できます。都心では、新しく簡易宿泊所を建てて運用する事業者も増えています。しかし、まだ、活用できるものをリフォームや転用で生かしていくというのも大切だと感じます。
大型施設では、施設内に食事や買い物施設があり、地方都市の商店街が恩恵を受けることは少ないですが、住宅に住むように泊まる民泊は、地域で食材を買い、地域で飲食をして、暮らすことを楽しむというコンセプトで広がってきたものなので、地域に収益をもたらします。旅行者の38パーセントは宿泊に費やされるという統計で考えると、家族の旅費を120万円としたときに45万6000円は宿泊費になります。それを地域の受任が得て、税金の納付とともに、地域の財源になると考えたとき、地方創生の鍵になりうると考えるべきではないでしょうか?
この記事を書いた人
一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事
一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。