4月以降の入居者募集は"手遅れ"ではない データが示す新たな可能性
2025/04/11

賃貸市場において、1~3月は新生活の準備で物件を探す人が集中する繁忙期。多くのオーナー様にとって、空室を埋めるチャンス到来の時期です。しかし、この時期を過ぎてしまった際に「もう今年は空室のままかも......」と諦めてしまうのは早計かもしれません。今回は、4~6月における入居者獲得の可能性を検証します。(文/佐藤 美月)
繁忙期とそれ以外 データが示す“同水準”
「繁忙期に広告費をかけたけれど、結局空室が埋まらなかった」「4月に入ったら、賃貸情報サイトからの問い合わせが激減した」このような経験をお持ちのオーナー様もいらっしゃるかもしれません。しかし、本当に4月以降は入居者が見つかりづらいのでしょうか。
実はウチコミ!において、過去の1~3月と4~6月の成約数を比較すると、ほぼ同水準、もしくは4~6月の方が多い年もあります。また、入居希望者からの問い合わせメッセージ数においても、ほとんど差はありません。また、最近では、働き方の多様化やライフスタイルの変化により、必ずしも4月に入居する必要がない人も増えています。ウチコミ!の入居希望者会員が直近半年間に登録した引っ越し理由のデータによると、「入学・就職」や「転職・転勤」など引っ越し時期の制約がある件数は全体の4割以下でした。例えば、リモートワークが可能な職種であれば、異動の制約がなく、引っ越すタイミングを自由に選べますし、早期退職やセカンドライフを見据えて、ゆったりと住まいを探す人もいます。
4月以降のお部屋探し その特徴に迫る
では、4月以降に入居を希望する人は、どのような層が多いのでしょうか。
繁忙期と言われる1~3月では、進学、就職、転勤など、新生活を始めるために引っ越しを余儀なくされる人が中心。時間的な制約があるため、多少条件に合わなくても「とりあえず住むことができれば良い」という層も一定数存在します。物件選びの優先順位は、家賃、駅からの距離、間取りなどが上位に挙がります。
一方、それ以外の時期では、繁忙期のような「いつまでに引っ越ししなければならない」という切迫感はありません。そのため、「本当に自分が住みたいと思える部屋」をじっくりと時間をかけて探す人が増える傾向があります。また、ペット可、楽器可、DIY可など、特定のニーズを持つ人も多く見られます。つまり、4月以降は、物件のスペックだけでなく、その物件でどのような暮らしができるのか、具体的なイメージを伝えられるかどうかが、入居者を獲得するための重要なポイントとなります。
不動産会社の動向も影響 繁忙期以外の入居者募集
4月以降の入居者募集を成功させるためには、集客の窓口である不動産仲介会社の動向を把握しておくことも不可欠です。
繁忙期には、募集に際して特別な工夫を講じなかったとしても、入居希望者からの問い合わせが多く来る時期です。不動産会社にとっては、多くのお客様に素早く対応し、次々に契約を決めていくことが求められるシーズンでもあります。そのため「今決めないと、すぐに他の人に取られてしまいますよ」といった営業トークも頻繁に聞かれます。しかし、4月以降になると、繁忙期ほどの物件の競争がないため、不動産会社はそういった営業トークがしづらい状況になります。入居希望者も「他の人に取られるかもしれない」という危機感が薄くなり、「本当に気に入った部屋があるなら住み替えよう」と考えているため、決断が遅くなります。決断にかける時間が長くなると、“見送り”に繋がりやすくもなります。つまり、4月以降に入居者が決まりにくいのは、物件の魅力が低下したからではなく「不動産会社のプッシュがしづらくなるから」という側面も影響している可能性があります。こうした場合、不動産会社のみに募集の間口を絞らず、オーナー様自身による「物件の魅力を一番わかっている人が、工夫して発信する」という集客方法が功を奏しやすいのです。
また、ウチコミ!入居希望者会員約600人を対象にしたアンケートで、「引っ越し費用が安く済む場合、転勤や新生活などのタイミングでなくても引っ越したいと思う」という問いに対し、「はい」と答えた人は8割以上にのぼりました。一般的に、入居の初期費用は家賃5~6カ月かかると言われています。ウチコミ!の場合、仲介手数料が無料になるため、その分の初期費用が抑えられ、「良い部屋を見つけたら問い合わせよう」と考えて利用している方も多いのです。
冒頭でお伝えした、4~6月のウチコミ!成約数が1~3月と同水準、もしくは多いという現象も、こうした要素が働いていることが考えられます。
83.7%が「引っ越し費用が安く済む場合、転勤や新生活のタイミング以外でも引っ越したい」と回答。
ターゲットを明確化が空室対策の鍵
では、4月以降も入居者獲得を目指すためには、どのような対策を講じれば良いのでしょうか。具体的な空室対策をご紹介します。
①ターゲット層を明確にする
どのような人に住んでほしいのか、ターゲット層を明確にしましょう。単身の社会人、カップル、ファミリー、学生など、ターゲット層によって物件の魅力やアピールポイントは大きく異なります。ターゲット層を明確にすることで、効果的な集客戦略を立てることができます。
②ターゲット層に響く集客にする
ターゲット層を定めたら、そのターゲット層に合わせた物件の魅力を伝える集客方法を考えてみましょう。例えば、単身の社会人向けであれば、駅からの距離や周辺の飲食店情報、インターネット環境、セキュリティ設備などを重点的にアピールすると、効果が見られやすいです。
③写真と動画を効果的に活用する
物件の写真は、入居希望者の第一印象を大きく左右します。プロのカメラマンに依頼したり、自分で撮影する場合でも、明るく清潔感のある写真を選びましょう。最近では、動画で物件の魅力を伝えることも効果的です。
4月以降も繁忙期! どの時期でも安定集客を
4月以降の入居者募集は、決して"手遅れ"ではありません。どの時期でも、お部屋探しをしている人は一定数存在します。そればかりか、4~6月は「ウチコミ!繁忙期」とも言えます。これからの時期、1~3月の時期とは異なる入居希望者のニーズを的確に捉え、データに基づいた効果的な空室対策を講じることが大切です。オーナー様と不動産会社で協力し、時期に左右されない安定した賃貸経営を実現していきましょう。
【関連記事】
入居希望者の本音に迫る! 約600人に調査 賃貸の常識に変革を求める声───礼金や仲介手数料を疑問視
1棟の新築木造アパートから8棟143室まで拡大した不動産投資 「〇棟〇室〇億円」という指標から離れ、自分自身の視点で生きていく
無料で使える空室対策♪ ウチコミ!無料会員登録はこちら
この記事を書いた人
賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。