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1棟の新築木造アパートから8棟143室まで拡大した不動産投資 「〇棟〇室〇億円」という指標から離れ、自分自身の視点で生きていく

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撮影/吉田 達史(Photo Current 66)

賃貸経営などでは、ともすれば所有する棟数や部屋数、物件価格、融資額などで事業規模を比較・評価されることがある。しかし、それらだけで事業が順調かどうかの判断はできない。会社員時代から不動産投資を始め、最終的に8棟143室12億円という規模にまで不動産事業を成長させた桜木大洋氏はいま、ほとんどの所有物件を売却し、新たなフェーズに向かっている。不動産投資で失敗も成功も経験してきた桜木氏に、賃貸経営に本当に必要なこと、これからの展開について聞く。(取材・文/財部 寛子)

不動産よりも大きい会社員のリスク

──桜木さんが大手メーカーでの会社員を辞めて、不動産投資を選んだ理由にどのようなことがあったのでしょうか。

40代の中頃、職場の先輩たちの姿を見て、会社員を続けるのはリスクが大きいと感じたためです。
大きな会社に勤めていれば安心というわけではなく、転勤になったり子会社に出向になったりといったことが起こり得ます。50代中盤にもなれば給料は上がらず、どちらかといえば減っていく方が現実的。これらは人生に大きく影響する出来事だと感じていました。

──しかし、不動産投資にもさまざまなリスクがつきまといます。

もちろんです。たとえば、賃貸経営のリスクとして、空室や修繕、水漏れなどは当然あることです。しかし、どれも対策が確立されているものばかり。人事労務系の変化と隣り合わせの会社員のリスクの方が、よほど怖いと感じていました。

──会社員時代、不動産投資の見通しが立ったと思ったのはどういった状態になったときですか。

会社員との兼業は4年間でした。その間に、会社員の年収の2倍以上のキャッシュフローになりました。特に、アメリカに留学したいという娘の希望を叶えてあげられたことは、不動産投資をやっていたからこそです。会社員を辞めても家族を路頭に迷わせることはないと確信し、退職したその日には家族から「おめでとう!」とサプライズパーティーをしてもらえました。

正確に徹底的に収支を把握する

──1棟目はどのような物件を購入したのですか。

最初はなにから勉強していいか全く分からず、とりあえず近場でやっていた現地見学会に行ってみたことが始まりです。そこで初めて見学した物件が、リーマンショック後の影響で物件価格が下がったうえに、自己資金ゼロ円でいいと言われ、1棟目の購入となりました。2棟目は、東日本大震災で自宅が被災した際に地震保険が下り、修繕後に少し余ったお金を元手に福岡の新築アパートをフルローンで購入しました。しかし、空室が埋まらなかったり、広告費などの費用がかかったりして、手元に大したお金が残っていないような気はしていました。

──空室が出れば、想定通りの利回りとはいきませんよね。

そこで、収支を正確に把握することにしました。たとえば、賃貸経営で毎月100万円の収入があると捉えていても、それが実際には95万円だったり、80万円だったりすることもあるでしょう。ところが、その差をそれほど意識していないオーナー様も少なくないかもしれません。毎月異なる収入と支出を1円単位で把握することで、本来得られるはずの家賃収入や予定外の支出によって失われている金額がどれほどかが痛いほど分かります。
私はまず、1年間ずっと満室と仮定した場合の家賃収入から、固定の支出(管理委託費、ローン、税金など)を差し引いたキャッシュフローを仮置きした1年分の表を作り、その隣に毎月管理会社から送られてくる実績を上書きして、収入と経費をエクセル表にまとめ、当初の計画と実績との差分を比較していくことにしました。

──その結果、どういったことが明確になりましたか。

手残りキャッシュが少ない物件ほど、借り入れ金利と管理委託費が高いということを実感しました。そこで、管理会社に管理費削減の交渉をしましたが、「オーナー一律料金のため安くすることはできない」との回答。その代わりにローン借り換えのための銀行を紹介されました。とはいえ、どの銀行でも容易く借り換えに応じてくれるわけではありません。4つ目の銀行でようやく低金利での借り換えが実現しました。その後、キャッシュフローが改善されたことで気持ち的にも安定し、収支の把握がいかに大切かということを実感しました。
また、所有物件の収支を正確に把握していると、金融機関に説明する際に非常に説得力がありますし、次の物件購入条件の基準にもなります。


桜木さんが活用する収支実績表(出典:「桜木不動産投資アカデミー」)。当サイトで作り方の紹介や作成サポートを受けられる

自分流の空室対策ステージング

──賃貸経営の大きなリスクである空室対策については、どのような工夫をしていますか。

まずは、2通りのステージングです。とはいえ、私はDIYなどが不向きなタイプなので、基本的に自分でステージングは手掛けません。
そこで1つめが、管理会社の客付け担当者に「家賃1カ月分まで」などの予算を決めてステージングをお願いする方法です。入居希望者を案内する当人が部屋作りをしてくれ
れば、必然的に気持ちのこもった客付けにつながると考えました。使用した家具は、入居者が希望すればそのまま差し上げ、不要であれば次回のステージングに使用してもらいます。
2つめは、プロのコーディネーターに依頼する方法です。割高ではありますが、その分コンセプトにもインパクトがあり、ドアを開けたときに誰もが歓声を上げるレベルになります。

──ほかにはどのようなことをしていますか。

家賃を下げることは極力避けるようにしています。市場全体の価値や売却時の利回りを下げることにもなりますからね。一番大切なことは、現場を知っている管理会社と話し合うこと。「初期費用◯万円」「フリーレント〇カ月」「1年間家賃10%引き」などは、物件やターゲット、時期によって効力も異なります。自分の物件だからといってなんでも決めてしまわずに、できる限り管理会社の担当者にアイデアを出してもらいます。

──空室がどうしても埋まらなかった経験はありますか。

ありますね。東京都清瀬市の駅から徒歩約20分で1K40室、埼玉県富士見市の駅から徒歩約4分で1K46室、どちらも3点ユニットの物件を所有していました。駅から遠い清瀬市の物件は常に満室なのですが、駅から近い富士見市の物件は満室になったことが一度もありませんでした。
苦戦した理由ははっきりとは分かりませんが、おそらく周辺に似たような物件が多くあったことが敗因と思われます。その物件はあと1室で満室というときに、新型コロナの流行によって外国人の入居者が11人も帰国してしまいました。その後、レンタルオフィス化や法人へのまとめリースをすることで、かなり空室が埋まりました。駅から近い物件ということで、仕事部屋としてのニーズは高かったようです。

管理会社を自分の分身に

──管理会社とのつき合い方に悩みを持っているオーナーも少なくありません。

管理会社を自分の味方につけることは賃貸経営の基本。私の不動産投資人生においては、管理会社・不動産会社を一番大切にしてきたといっても過言ではありません。
当然のことですが、新しい物件を購入したら、どんなに遠い場所でも必ず1回は管理会社の方と直接会います。そのときに一緒に写真撮影やLINEの交換をして、コミュニケーションを図っています。それから早期に空室を埋めてもらいたいときなど、お願いをするときも必ず直接会いに行きます。

──特にどのようなことを意識しておつき合いをしていますか。

早いレスポンスや目的の共有による信頼関係の構築が大切です。
たとえば、空室が埋まらない場合に、安易に家賃の値下げを提案してくる管理会社は実に事務的で、オーナーの立場を考えているとはなかなか思えません。家賃を下げずに、良質な入居者に長く住んでもらうことが理想です。そういった目的をしっかりと共有したうえで、ある程度の裁量を管理会社に委ねます。たとえばフリーレントの期間や敷金・礼金の有無、家賃値下げの限度といった枠を決めておき、入居希望者が交渉してきたときは現場での判断を担当者に任せます。そこまで信頼できるのは、私の考え方や希望を十分に理解してもらっているからです。
管理会社から連絡を受けたときには必ず24時間以内に返信します。相手を待たせないことが信頼につながると信じ、また後回しにしないことで鮮度の高い正確な回答ができると思い、サラリーマン時代からポリシーにしています。

──賃貸経営に対する姿勢や思いがかみ合わなければ、管理会社を替えることも空室対策の手段の1つになりますね。

もちろんです。いい管理会社の選び方を教えてほしいと聞かれることも多いのですが、判断基準が分からないのも仕方ありません。ネット上には管理会社の一括査定サイトがあるので、そういったところからスタートし、実際に面談してみるのもいいでしょう。
最初の管理会社との会話で「空室が続いたとき、どんな対策をしてくれますか」と尋ねます。そのときの回答がスピーディーで複数の具体案が出てくると、過去にもいい経験をしていることが肌感覚で分かります。そういう管理会社があれば、積極的にコミュニケーションを深めていくといいでしょう。

「〇棟〇室〇億円」から離れた人生を

──いま、沖縄でも賃貸経営の準備をしていると聞きました。

昨年、それまでに所有していたほとんどの物件を売却したため、まとまったキャッシュが入ってきました。この資産をどう活用するかを検討しているところです。
私は沖縄の気候風土が大好きで、那覇市内にワンルームマンションを借りて毎月1週間ほど滞在しています。地元での人脈も広がり、読谷村にある戸建てを購入して今春から民泊を始めることになりました。また、那覇の国際通り近くに新しく建つタワーマンションも契約済みで、ここでも民泊を予定しています。
どちらの民泊も、必ずしも多くの利益を上げることが目的ではなく、たまに自分や家族が住みながら、収入と経費・返済額がトントンであればいいくらいの気持ちです。


桜木さん一家のお気に入りスポット「果報バンタ」

──今後、不動産投資はどのような展開を考えているのでしょうか。

会社を辞めてから9年ほどが経ち、一段落ついたと感じているところです。正直、いまは目指すところが特に決まっていません。
不動産を多く所有して事業を大きくしていきたいわけではなく、「〇棟〇室〇億円」といった不動産投資家の規模を判断するような指標からも離れたいという思いがあります。お金と時間に余裕があっても、健康でなければ意味がありません。賃貸経営はどこにいてもできますから、健康に気を遣いつつときどき沖縄の暖かな気候に包まれてのんびり暮らしているというのが現状です。
これからますます、本当の幸せはどこにあるのかを考え、他人との比較ではなく、自分自身の視点を大切に生きていきたいと思っています。


桜木 大洋(さくらぎ たいよう)さん
1966年生まれ。千葉県浦安市と沖縄県那覇市の2拠点で生活。10年にわたるメルマガ配信をライフワークとする傍ら、セミナー講演や個別コンサルタントとしても活動。大手メーカーの会社員として勤務していた頃、先輩の姿を見て将来はジリ貧だと不安を覚え、さまざまな副業を経験。唯一、結果が出たのが不動産投資で、2016年に会社を退職。1棟の新築木造アパートからスタートして8棟143室まで規模を拡大。太陽光や民泊、貸会議室など多くの不動産投資活動を手掛け、昨年ほとんどの所有物件を売却。現在は東京都日野市にRCマンション、大阪府に戸建て、茨城県に4,000㎡の太陽光発電設備を所有。主な著書に『自己資金0円からはじめる不動産投資』(青月社)がある。日々の気づきや学びを綴ったメールマガジンは1,600号を超える。

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この記事を書いた人

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