これからは大家さんも『AI』を活用する時代 未来の賃貸経営で取り残されないために身につけるべきは“ITリテラシー”
ウチコミ!タイムズ編集部
2024/02/17
「大家コネクト」の機能の1つである「AI大家税理士による賃貸経営相談」。こちらは、大家さんならではの疑問や相談に24時間いつでも答えてくれるという、今までにない最新鋭で画期的な機能です!このAIの正体は、Knees bee税理士法人を運営し、大家さん専門税理士である渡邊浩滋氏がChatGPTを基に開発した「AI大家税理士レンくん」。渡邊氏は独自に書籍を多数出版しており、それらを「AI大家税理士レンくん」に読み込ませた、いわば“もう一人の渡邊氏”なのです。今回は、渡邊氏ご本人にその開発秘話や活用方法などを伺いました。(取材・文/安本 夏未)
税理士という職業もAIに淘汰される?
―――「AI大家税理士レンくん」とはどういうものですか。
オープンAI社が作ったChatGPTを独自にカスタマイズしたものになります。私が今までに書き溜めてきた20冊以上に相当する書籍・メルマガ・ブログなどのあらゆる文字データをChatGPTに読み込ませた、オリジナルのAIのようなものです。
―――開発しようと思ったきっかけは何ですか。
2023年の初めに「ChatGPT」なるものが世間に出回って、それはもう衝撃を受けました。実はもともとAIに対しての意識はあったんです。理由は、AIによって奪われる職業のトップ10に税理士がランクインしているからです。「いつかは私の職業もAIに取って代わられるのではないか」という危機感と、「どうやったらAIに勝てるんだろう?」ということを5年以上前から考えていました。
そしてその結論は、“いかにデータを保有しているか”だと結論付けました。AIを活用するためには、情報源となるデータの蓄積が必要です。そのために私は、普段から継続的に業務のあらゆることをデータに残しておきました。メルマガ1つ取っても、作り込みを意識しながらデータ化しました。
そして23年にChatGPTが台頭し、「今こそこの蓄積してきたデータが生かせるのではないか」と考え、開発に至りました。
“AI大家税理士”をどう活用するか
―――「AI大家税理士レンくん」にはどのような相談をすることができますか。
大家さんからのあらゆる質問に対して相談していただくことが可能だと思いますが、むしろマニアックな質問をしていただいた方が嬉しいです。私は、ネット検索すればすぐに答えが出てくるような回答は発信せずに、「大家さん専門税理士」だからこそ回答できる賃貸経営ならではの税務相談や疑問について発信しているので、実際に物件を所有している大家さんならではのマニアックな質問の方がしっかりと回答してくれると思います(笑)。ちなみに、今までに来たマニアックな質問は「フェラーリは経費になるか」などですね。
また、建物の耐用年数の計算もできます。耐用年数は構造によって変動しますが、現在「AI大家税理士レンくん」では木造・RC造の計算に対応しています。鉄骨造の耐用年数はこれから搭載させる予定です。
さらに、賃貸経営に対しての心構えについても発信しているので、「AI大家税理士レンくん」と大家さんの間で“対話”をして、「渡邊だったらどう考えるのか」ということを感じ取ってほしいなと考えています。
実際の「AI大家税理士レンくん」への質問例。会話をするように掘り下げていくのがコツ
上手に付き合うコツはITへのリテラシー
―――「AI大家税理士レンくん」を活用するうえで気を付けた方がいいことはありますか。
全部をうのみにするのは危険だということです。なぜなら、AIというのは“検索”という側面ではあまり有効活用できないからです。ChatGPTは、インターネットという広大な海から似たキーワード同士を拾い上げて、それらをつなぎ合わせることによってあたかも会話ができているかのように見せています。インターネットの情報というのは、当然ながら間違った知識や嘘も多く含まれます。そのため、ChatGPTの回答が正しいか否かは判断できません。正解を与えてもらうのではなく、ひとつのヒントとして受け取ってもらいたいので、しっかりと対話をして「こういう解決策があるんだ」という気付きをご自身で得てもらいたいです。
そして、ChatGPTを使う際には質問の仕方にも要注意です。漠然とした、抽象的な質問を投げかける方が多いですが、そうすると抽象的な回答しか返ってこないので「これは使えないな」と判断してしまうケースがあります。ただあまり細かすぎても“ズバリ”という回答は難しいので、一般論ではあるけれど具体的な質問をするといいと思います。あとは質問を変えてみるという手もあって、「◯◯について教えてください」という質問だと一般的な回答になってしまうので、「◯◯が経費として認められる理由を挙げてください」など、質問の切り口を変えるといいと思います。また、質問をするときに1往復で会話を終えてしまう方が多いのですが、ChatGPTは情報を要約して回答する特徴があるので、1 往復で会話を終えてしまうと「薄くて広い回答」という印象になってしまうことがあります。“AIは会話ができる”という特性を生かして、ぜひどんどん深掘りして質問してほしいです。一連の会話で疑問を解消できるという点が、AIとインターネット上での検索との大きな違いであり、AIを利用するメリットだと思います。
―――この記事を読んでいる大家さんに伝えたいことはありますか。
ChatGPTの台頭によって、今後AI技術の発達がどんどん進むでしょう。そして大家さん自身もAIに対するリテラシーを上げていく必要があると思います。AIは最新の技術なので、そこに対して過度な幻想を抱いている方もいらっしゃいます。しかし、AIも元は人間が作ったものなので、搭載させたデータ以外のことは起こりません。「どんなことでもAI が全てを解決してくれる」という考えだと、なかなかAIとの付き合いは難しいです。
今はSNSでお部屋を紹介している大家さんも多いですが、少し前まではSNSで空室の募集なんて考えられなかったことです。しかし今の若い人はそこに順応していて、SNSでの空室募集はひとつの立派な手段になりつつあります。逆に言えば、これからはそこに目を向けないと賃貸経営が立ち行かなくなるかもしれません。ITやAIの分野でのリテラシーを上げることは、これからの時代の大家さんに必須だと感じています。
渡邊 浩滋(わたなべ こうじ) Knees bee 税理士法人 税理士・司法書士
大学在学中に司法書士試験に合格。大学卒業後、総合商社に入社。法務部にて契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。その頃、実家のアパート経営(5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚。立て直すために経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出する。資産税専門の税理士法人に勤務後、2011年に税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所を設立。2022年に法人化。税理士と大家の両方の視点から賃貸経営に困っている大家さんのサポートに取り組む。講演・セミナーで全国の大家さんと接するうちに同じ悩みを持つ遠方の大家さんを救いたいと思い、2018年に大家さん専門税理士の全国ネットワーク「Knees bee」を設立。
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この記事を書いた人
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