「猫付きシェアハウス」の作り方、運営方法を教えます!(3/3ページ)
山本 葉子
2020/10/08
キッチンは格子状の柵の「トレリス」などの資材を使って猫たちが入らないように独立させます。これはキッチンに置いてあるものを食べてしまったりしないようにするためで、開けた空間にするため見えるけど入れない「クローズドキッチン」にするわけです。
キッチン猫侵入対策
こうしたことで「作りかけのミネストローネを猫がなめちゃった!」「玉ねぎ中毒になっちゃう?」といった事態も防げます。
以前ご相談いただいたケースでは、炒め物でフライパンを振っているときに、「猫が飛び込んで来た」というものもありました。フライパンの動きに釣られての行動だと思うのですが、このときは幸いにも人にも猫にも火傷はなく、猫が「キャベツまみれになった」だけで、無事だったようですが、やはり、キッチンに入れないようにしておくほうが安全です。
入居者は「保護猫の預かりボランティア」
「猫付きシェアハウス」のシステムですが、考え方としては住人の方々が保護猫達の預かりボランティアとなります。
ですので、入居者の方どうしでシフトを組んでいただき、猫たちの朝ごはん・夜ごはんの用意、猫のトイレの清掃の当番を決め、気が付いたことはノートに書いて住人同士でも情報共有していただいています。
また、猫たちの体調に問題が出た場合はいち早く知らせていただき、保護団体が対応し、ケアの方針を立てます。
いろいろな事情で行き場を失った猫たちの中には、体調が万全でない子もいて、年を重ねてライフステージが変わると処方食が必要になったりします。そのため団体の獣医師の指導をもとに食べるものを工夫したり、量を加減したりしています。猫たちの飼育・体調管理については、入居者の方々と保護団体が協力して行っていくイメージです。
猫仕様棚
今までの物件運営(東京2カ所・大阪2カ所)では、住人の方々とてもきれいに住んでくださっていています。シェハウスですので週に1度のサイクルで、団体のスタッフが巡回をおこなっています。そして、消耗品の補充を中心に、水回りの清掃やチェックを行い、入居者の皆さんと猫話をしたりしています。
猫をただシェアハウスに入れただけでは、よい飼育は保証されません、入居者の方の中には猫の飼育が初めてという人もいます。
入居の動機も、相談できる・猫について学べる・社会貢献になる――そういったことをメリットと考えてくださる方などさまざまです。どの物件も数多くの方に入居してもらっていて、とてもありがたいと思っています。
そして、シェアハウスを卒業された方の中には「猫OKの物件を用意できました!」と、譲渡を申し出てくれる方も多くいらっしゃいます。こうした方はこれまで猫と一緒に暮らし、猫の様子をよく知っているベテランの預かりボランティアさんとなられています。
シェアハウスに入居されたばかりの時は飼育の初心者だった方も、生活を共にすることで猫についての充分な知識をスキルを身につけています。こうして運営していく「猫付きシェアハウス」は、小さなシェルターの機能と猫の飼育を学ぶ場ともなっています。
この秋に東京でまた一つ「猫付きシェアハウス」がオープン予定です。
猫と人が共生し、社会貢献事業にもなる。もちろんほかにも方法はあるかと思いますが、付加価値のついた楽しい物件運営を考えていきたいと思っています。
この記事を書いた人
NPO法人東京キャットガーディアン 代表
東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。