不動産投資のポイント②-建物内覧編
熊ヶ谷一幸
2016/06/20
どのような収益物件が良いか
物件資料のポイントを理解したら、次はいよいよ実際に収益物件の内覧です。収益物件は、自分で利用する不動産ではないため、「収入と支出」などの面から、机上の段階で投資対象にならない物件を篩いにかけ絞り込む事が可能です。しかし、最終的には足を運んで集めた生の情報が不動産投資の成否を別けますので、現地では十分すぎるほど確認するよう心がけて内覧に行きましょう。
■立地条件・周辺環境について
物件資料編で説明した内容と重複しますが、内覧時においても立地に関しては、誰をターゲットとする物件か、より具体的なイメージを持ち検討する事が重要になります。同じ立地条件であってもその物件がターゲットとする顧客層により、そのニーズが異なる事は資料編でも説明した通りです。現地内覧時は、内覧前に資料確認時に使用した住宅地図を持って、周辺を徒歩で見て回り環境を肌で感じて下さい。また、地図だけではわからない、昼間と夜間の違い、近隣建物の築年数等も実際に自身の目で見て確認しましょう。
■土地利用状況について
立地条件や周辺環境をチェックしたら、次に対象物件の土地利用状況を確認します。利用状況を調査することは、収益性よりも土地自体の利用価値を判断することに繋がります。収益物件投資においては、現状の土地建物から生じているキャッシュフローだけではなく、土地本来の利用価値にも着目し、出口戦略までを事前に描いておく事が非常に重要となります。例えば、歓楽街に隣接し、その環境や治安により、低人気となってしまっているファミリー物件は、その土地自体のポテンシャルに難があるのではなく、単に土地の有効利用が行なえていないだけです。又、逆に現在はパチンコ店が高額で借りているが、もし現在のパチンコ店が退去してしまうと、立地的に次のテナント誘致は難しいといったケースもあります。
収益物件投資で成功するには、土地自体の利用価値をきっちりと確認した上で投資判断を行う事が必要となりますので、必ず収益性の評価を行うと同時に更地評価も併せて実施してください。なお、好立地であっても土地の瑕疵により、土地の有効活用が制限される場合、土地の利用価値が激減してしまう場合もあります。
■建物の概観・入居者の状況
資料だけでは、不明だった点を土地と同様に建物でも確認しておきましょう。現地での建物チェックは、建物全体のイメージを掴む事と、購入後に必要となりそうな修繕コストを事前に把握する事を主な目的として行います。建物全体のイメージを掴む際には、まず外観からどのような印象を受ける物件かを確認して下さい。次に、エントランス、駐輪場、ゴミ捨場、廊下等の共用部分をチェックし、入居者の質がどのような感じかを掴んで下さい。共用部分の管理が隅々まで行き届いている物件であれば、入居者審査が適正に行われトラブルが起きにくい物件と思って良いかと思います。又、修繕コストを把握する上で必要な建物の劣化状態は、専門家でなければ細かい調査はできないでしょうが、最低限目視で気になるところはチェックしておくべきでしょう。
■地元不動産会社からの情報収集
最後に、地元賃貸業者から賃料相場や今後の動向、エリアの特性等がヒアリングできれば、現地での調査も概ね終了です。地元で仲介をしている不動産会社はそのエリアは勿論、当該物件についての情報も持っているはずです。地元賃貸業者からは、ネットや売買業者からは得る事ができない生の賃貸情報が得られる絶好の機会です。しかしながら、賃貸業者によっては、正確な情報を伝えてくれない担当者も少なからず存在します。少しでも有益情報を得るために、ヒアリング時は簡単な手土産等を持参されるのも良いかもしれません。
又、地元の賃貸仲介会社は、そのエリアの中で数ある物件の中から、お買い得な物件を紹介する事はもちろんですが、それだけではなく自分達にとって、実入り(オーナーからの手数料)が大きい物件」へ契約を促進する事を忘れてはいけません。エリアの賃貸相場と併せて、エリア内で競争力のある物件が、「どのような設備を備えているか」、「どのような賃貸条件で募集を行なっているのか」の確認だけで終わらせずに、必ず競合物件が支払っている入居者斡旋時のリーシングフィー等についても確認しておきましょう。
地元の賃貸業者にヒアリングをする上で、最も頭を悩ますのが売主との守秘義務に関する事項です。売主は、物件近隣の賃貸業者に内密で物件売却を進めている事が一般的です。売主の了承が無い限り、ヒアリングをする際は、物件の特定ができない範囲内で聞き取りを行わなければなりませんが、正確な物件情報を伝えない中で、必要事項をきっちりと確認するのは、正直言って初心者の方には難しいかもしれません。
又、ヒアリングから派生する中でよくある失敗が、集客力のある賃貸仲介会社や最も親身になって対応してくれた不動産会社に購入後の物件管理まで任せてしまう事です。確かに、大手賃貸FCに加盟する仲介会社に管理を任せれば、たくさんの顧客を案内・契約してくれそうな気もします。しかし、高額の運用資産である収益物件の管理運営先を深く考えずに、テレビCMもやっているからといっただけの理由で賃貸仲介会社に任せてしまう事は、高額な投資を行う人間の行動としては、あまりに短絡的ではないでしょうか。やはり、基本的に賃貸仲介や建築の二次業務として管理を行う賃貸管理会社ではなく、賃貸物件の管理運営を中心に行う法人をお勧めいたします。
この記事を書いた人
不動産鑑定士
株式会社東洋不動産研究所 代表取締役。1966年(昭和41年)生まれ。平成元年 慶応義塾大学法学部政治学科卒業。 学生時代はバトミントンなどのスポーツとアルバイトに没頭。不動産を生かすのは人間次第であり、個人生活・企業活動の成長は不動産のあり方・価値を極大化し、さらに個人生活・企業活動を成長させる、という不動産とのベストな付き合い方を提唱。どのタイミングで取得して処分するのかを時間軸でとらえ、ソリューション型の不動産調査・鑑定を日々実践している。 趣味は、エアロビクス。大手スポーツクラブの特別会員となっており、時間があればあちらこちらのスタジオに出没しては、主に中上級者向けエアロビクスを楽しんでいる。来年は、競技エアロビクスにチャレンジしようと考えている。 [担当]物件調査 熊ヶ谷一幸は個人間直接売買において物件調査により権利関係の確認をします。