大阪と東京のインバウンドの特徴の違いは何か
熊ヶ谷一幸
2016/08/22
いま、日本で最もインバウンドが熱い場所はどこなのでしょうか?
それは「大阪」です。先日2日間かけて大阪のインバウンドスポット、すなわち外国人ツーリストがよく現れる場所を案内していただきました。それは、主に以下のエリアでした。
「大阪駅周辺」、「新世界」、「日本橋」、「心斎橋商店街」、「黒門市場」、「船場」、「中崎町」。
一般に、大阪は次の5つの観光エリアに分けられるようです。「キタ・中之島エリア」、「大阪城エリア」、「ミナミエリア」、「天王寺・阿倍野エリア」、「ベイエリア」。
まず、たいていの外国人旅行者は土地勘などなく、「キタ」と「ミナミ」の違いもよくわかっていませんから、この日本人にはなじみのあるエリア区分はあまり意味がないようです。ただ、特定の関心ある目的地にピンポイントで足を運びます。ひとつの特徴あるエリアを街区の連なりとして理解するには、しばらくその土地に住むなり、相当なリピーターにでもならないかぎり、とても難しいことだからです。
まず、一番驚いたことは、心斎橋商店街をはじめとした延々と続く商店街の連なりと人ごみの驚くほどの多さです。大阪は地下街もすごいのですが、やはり東京にはこういうタイプの商圏はありません。せいぜい銀座がホコ天になったときとか、あとは私鉄沿線の駅前商店街くらいでしょうか。全然スケールが小さいのです。大阪のようにアーケードの商店街がどこまでも続くような状況は、海外を探してもそんなにないのではないでしょうか。
もうひとつは、それとも関連するのですが、大阪は東京に比べ街がコンパクトなぶん、キタから天王寺まで歩いていけること。その間、商店街が名前を変えて接続していることも面白いですし、個性の異なるエリアを歩いて縦断していけるということです。
なるほど、東京にも異なる個性を持ったエリアがいくつもありますが、大阪に比べて広いぶん、それぞれ点在していて、歩いてその違いを理解するというようなことは、できなくはないかもしれませんが、大阪ほどたやすくはありません。結局、地下鉄をどう乗り継ぐかということが、東京散策のポイントになりますが、大阪では1日かけて歩いて回ることもできない話ではない。
こういう都市のスケール感というのは、どちらかというとアジアというより、ヨーロッパの都市に近いといえるかもしれないことです。外国人ツーリストにとって訪れた都市がある程度コンパクトであるということは、魅力につながるものです。なぜなら、初めて訪れた人間にも全体像が把握しやすいからです。把握しやすいということは、また来てみようという気にさせるところがあるのです。その点、東京は大きすぎて、全体像を把握しようなどという気持ちを最初から失わせるようなところがあります。
もちろん、そうはいっても、日本の地方都市に比べれば、大阪は大きいですし、歩いて観光しようなどという気持ちにはふつうはならないでしょう。でも、いまや北京や上海、広州などの大都市では、すでに大阪に比べて公共交通網が拡大していることもあり、これらの都市の住人の感覚では、東京は無理でも、大阪なら全体像を把握できると思えるかもしれません。そして、それが外国人ツーリストにとっての大阪に対する親しみや愛着につながる可能性があるのだろうと思います。
大阪観光局の調査によれば、関西を訪れる外国客の特徴は、買い物を好む東アジアや東南アジアからの観光客が多いことだそうです。なにしろ関空に乗り入れるLCC比率は全体の30%超と全国一です。LCCを利用して賢く旅する外国人旅行者のことを「関西バジェットトラベラー」などと呼ばれています。一般に東京には出張や公費で訪れる旅客も多いのに対し、関西は「自分のお金で楽しみたい人が訪れる」といわれ、リピーター比率も東京より高いことも指摘されています。
外国人ツーリスト、とりわけアジア客にとっては、東京より大阪のほうが親しみを感じている人が多いのかもしれません。実際、年間2000万人まであとわずかに近づいた訪日外国人旅行者数は全国的に増えたことは確かですが、関西の伸び率は全国平均をはるかに上回っている状況にあるからです・・・。
この記事を書いた人
不動産鑑定士
株式会社東洋不動産研究所 代表取締役。1966年(昭和41年)生まれ。平成元年 慶応義塾大学法学部政治学科卒業。 学生時代はバトミントンなどのスポーツとアルバイトに没頭。不動産を生かすのは人間次第であり、個人生活・企業活動の成長は不動産のあり方・価値を極大化し、さらに個人生活・企業活動を成長させる、という不動産とのベストな付き合い方を提唱。どのタイミングで取得して処分するのかを時間軸でとらえ、ソリューション型の不動産調査・鑑定を日々実践している。 趣味は、エアロビクス。大手スポーツクラブの特別会員となっており、時間があればあちらこちらのスタジオに出没しては、主に中上級者向けエアロビクスを楽しんでいる。来年は、競技エアロビクスにチャレンジしようと考えている。 [担当]物件調査 熊ヶ谷一幸は個人間直接売買において物件調査により権利関係の確認をします。