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エアコン・冷蔵庫など残置物を入居者の責任とする契約について

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前回に引き続き、賃貸紛争を避ける為に気を付けていただきたい事をお話しします。前回は、少し難しい内容でしたので、今回はもう少しわかり易いお話しをしていきます。

大家さん(賃貸経営)をしていれば、この様なお話しには良く出会うと思います。いわゆる、残置物のお話しです。

残置物とは、賃貸契約を交した入居者さんが、入居期間中に大家さんに承諾してもらい、設置されていなかった設備等を設置して住んでいたものの、自分が退去する時点で撤去などするのが面倒になり残していった設備等の事をいいます。

代表的な物では、エアコンなどが良くありますね。他にも、冷蔵庫・洗濯機・ガス台・電子レンジなんて物も良く聞きますね。

これらの設備類、賃貸経営をしている大家さんは、次の入居者に「残置物ですから責任はとりません」などと契約書上で念押しをした上、賃貸契約を交している方も多いのでは、と思います。

更に、その「残置物」の撤去まで、契約書上で入居者さんの責任としているものも多く見かけます。つまり、契約後の「この残置物」の責任は全て入居者さんの責任という形が常態化している様ですが、それで大丈夫なのでしょうか?

民法や借地借家法その他の法令上では、どうなのか? 気になります。

では、この「残置物」に対する考え方や法的な規定はどの様になっているのでしょうか?

1.入居者は、賃貸住宅の退去に際して自分が設置した物は撤去しなければいけない原状回復義務があります。

〜これは、民法でも規定されている「原状回復義務」で、自分で設置した物は撤去しなければいけない事になっています。当然、その費用や撤去も借主さんの責任となっています。

ですが、この撤去の責任のある入居者さんが、撤去をしないで置いていく事を大家さんに申し出て、大家さんもその設備を見てみると・・・「意外と新しく綺麗だし、使えるな・・・。」まだまだ使えそうだから「いいですよ〜」と了承・・・。こんな事って、よくあると思います。

2.どんな形であれ、貸主さんが了承した「前入居者が置いて行った設備」は、大家さんに無償で譲渡されたことになります。

つまり、どんな事を言ったとしても、貸主さんの所有物となってしまいます。同じ残置物でも、いろんな経緯があります。その経緯から見て行きましょう。

どういう事かと言いますと・・・。

前入居者が「大家さんの許可を貰って、エアコンを残していった」とします。大家さんは、一旦その設備を気に入って引き受けたら「所有者は大家さん」でしか無く、残置物ですらありません。

また、入居者さんが一方的に「残していったエアコン等」であったとしても、その残置物は「元の入居者との問題」でしかありません。

この場合は、残された残置物が不必要であれば、大家さんが自己負担で「撤去・処分」を行い、その費用を「元入居者」に請求。これが正しい対処法です。

このようにお話しすると、大家さんが「一方的に不利」なだけのように見えます。しかし、この様な事を防ぐために「敷金や家賃保証会社による保証委託」という大家さんの危険負担を担保する手段もあります。その上、このような残置物に利害も何もない「新入居者」に取らせる責任では、そもそもありません。

上の話をまとめますと「経緯はどうあれ、認めてしまえば・・・大家さんの所有物=残置物では無い」となります。

では、賃貸契約の特約などで、残置物の説明及び「残置物の修理・交換・撤去」の責任を借主とした契約は有効か?

基本的に「契約自由の原則」からすれば、頭から「ダメ」とはなりません。貸主・入居者の合意に基づいて、双方が納得すれば良いわけですが、注意と覚悟が必要です。

・その注意とはなにか?

貸主・入居者の合意とはいえ、賃貸契約の性質上、契約の条件や特約等については、貸主側に有利な事は周知の事実です。過去の裁判の判例などでも、よく示されています。

例えば・・・この条件を飲まないのでしたら、契約は出来ません。・・・なんて言われてしまうと、入居者側はつらいですね。

そんな見解が示された「判例」もいくつもあります。実際に思い当たるかたもいるんではないでしょうか。

その時点では、入居者が折れて「賃貸契約」となったとしても、その後に「他の問題」が発生したときには影響が出そうです。入居者さん側に「我慢」を強いすぎると、思わぬ逆襲にも会いかねません。

一旦は・・・不利な条件を飲んで契約したが、隣人の騒音、設備の不具合などその後に発生した問題などがこじれる可能性。そんな危険もあります。また、退去の時点での「残置物の撤去」の問題が再燃する恐れもあるでしょう。

・現在施行されている「賃貸住宅の紛争防止条例」も注意しておかないといけません。(民法も関連します)

この条例では、賃貸住宅の設備の修繕などについて「基本原則」が決められています。賃貸住宅に付帯している「設備類」の修繕について、原則では「貸主の責任」となっています。一部、特約を決められる事にはなっていますが、入居者側の負担は「小修繕程度が限度」とされている事に注意が必要です。

つまり、全交換になる様な金額の負担、大修繕と認められる負担は、賃貸契約書で特約等を結んでいたとしても「無効」となってしまいます。基準としては、通常使用の範疇の汚損は「入居者の責任は無い」と解釈されます。

過去の「判例」でも、残置物であったエアコンの修理費が4万円かかる話がありましたが、結果は「4万円=大修繕」と判事されています。

・では、覚悟とは・・・。

今までお話ししてきました、状況を踏まえた上で、どの程度まで「責任を持たせるか」の判断をどうするか? そこにつきます。参考に、考察を書いておきますので、今後の参考にお使いください。

【考察】

ここまで、難しいお話しを展開してきましたが、お分かりいただけましたでしょうか? 少し、頭がこんがらがりそうな状況かもしれません。一旦、話を整理しましょう。

・残置物の取扱い

残置物は「どんな形で引き受けたとしても」次の「新入居者」に貸した時点で「貸主の所有物」と見られてしまう。

交換・修繕・撤去を全て「新入居者」に負担させるのは、法律的に貸主に有利になるとは限らない。賃貸契約で、残置物を「新入居者」譲渡する方法があるが、拒否されれば、解決にはならない。

残置物は、あくまでも「前入居者」つまり当事者間で解決するのがベストと言えます。残置物を引き受けた場合は、最初から「自己所有の設備」との覚悟も必要といえる。残置物の経費を補てんするのには「敷金・家賃保証会社」などの手段を考えた方が、安全。

※これは、あくまでも「最悪のケース」を想定、つまり「訴訟」を念頭に考えています。

貸主と入居者の関係性や賃貸住宅への入居の際の諸条件、賃貸契約の時点から、入居者にシビアな条件であったのか?又は、入居者に有利な条件で契約していたか? という様な状況も「訴訟」等になった場合は「大きく影響」をして来ます。

例えば・・・

賃貸契約の時点で、敷金や礼金も無く、残置物のエアコンについても、設置してから3年程しか経過していない設備で、入居者が使わないのであれば「貸主の負担で撤去します」・・・この様な状況の中、入居者が「自分で責任取りますから下さい。」という様なケースになってくれば、今回の記事で書いている「心配」も少ないでしょう。

反対に、敷金礼金はがっちりあって、残置物についても、契約時点から「入居者側に選択の余地が無い」・・・こんな状況では金額的な負担が同等クラスの話でも、結果が変わってくる公算が強いですね。

以上の話で、結局、ハッキリとした事が分からないじゃないか・・・。とお思いになるでしょうが、考察を参考に考えて頂ければ、大家さんなりの結論も見いだせますでしょう。

貸主も借主も気持ちよく良い関係を続けたいものです。部屋を貸したい人、部屋を借りたい人が集まり、コミュニケーションをしているサイトがあります。

ウチコミ!と言います。借主さんも貸主さんも一度覗いてみてはいかがでしょうか?

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この記事を書いた人

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