最小の資金で最大の効果を引き出す! 空き家リフォーム・リノベーションの考え方
高橋 洋子
2016/08/04
信頼できるリフォーム・リノベーション業者の見つけ方
家を新築するよりもリフォーム・リノベーションするほうがむずかしい
空き家再生にリフォーム・リノベーションは欠かせません。どこに依頼するか、どうリフォーム・リノベーションをするか頭を抱えている方も多いようです。
中古住宅のリフォームやリノベーションのむずかしさは、業者選びにあります。急成長している業種だけに、業者は玉石混合。工事費500万円以下は無資格でも工事ができるため、なかにはとんでもない工事を行なう業者もあります。
業者を選ぶときに見るべきポイントは「提案力、技術力、施工力、対応力、実績、アフターケア」の6つです。
まずは、依頼先の候補として業者をピックアップ。その業者に住まいの悩みを相談し、間取りやデザインなど、満足いく仕上がりを期待できるか「提案力」を見ます。次に、その提案を実現できるだけの「技術力」「施工力」があるかを見ます。
さらに職人の数や社内のチェック体制、トラブルがあったときの対処法などの「対応力」が十分かどうかを見ます。そして、「施行実績」やお客様の声などの評判、工事後の「アフターケア」や保証制度もチェックします。
「施工実績」は数多くの工事を手がけていればいいというわけではありません。「施工実績」がマンションばかりの業者に、一戸建てのリフォーム・リノベーションを依頼するのは避けたいものです。一戸建てには耐震補強工事が伴いますが、そこまでできるマンション系の業者は限られているからです。
優良な業者を見きわめるためには、一定の条件を満たした業者しか登録できない仲介サイトを利用すると便利です。希望条件を入力すれば、同時に数社の相見積もりを送ってくれます。3~5社ほど相見積もりを取り、比較検討してみるといいでしょう。
お金をかけるところ、かけないところ
リフォーム・リノベーションはお金をかければいいわけではない
空き家をリフォーム・リノベーションで再生するといっても、予算が無限にあるわけではありませんから、「多少お金をかけてでもリフォームするべきところ」と、「お金をかけなくてもいいところ」があることをわかっていなければなりません。
お金をかけてでもどうにかしたいというのは、最低限の生活を送れるように、生活空間を整えることです。水が出る、お湯がわく、トイレの水が流せるといった住まいとしての最低限の機能を確保しなければなりません。
そういった生活するための最低限の機能に問題がない場合、壁や床など目に見える部分をきれいにする「表層リフォーム」を行なうだけで、入居者を決めている事例もあります。
ただし、「生活できればいい」と考えるのであれば、「表層リフォーム」を行なわなくても支障はありません。賃貸物件の場合、入居者の側にもできるだけ安く借りたいというニーズもあるため、手をまったく加えなくても借り手が見つかることもあります。
たとえば、前の人が長く暮らしていたために、生活感の残る汚れた壁や床をリフォームしなければと思っていたところ、猫を飼っているご夫婦が、「どうせすぐに猫が汚すから、そのままでいい」と言って、リフォームする前に入居が決まった例もあります。
壁や床、外観など目に入りやすい箇所を入念に
部屋の印象を大きく左右するのが壁と床
リフォーム・リノベーションに対する考え方は、投資家さんによってまさに人それぞれです。
先ほど、「表層リフォーム」を行なわなくても入居者が見つかった事例をお伝えしましたが、逆に、大きく目に入る「壁と床」や、第一印象となる「外観」にお金をかけて見栄えをよくすることが、入居の決め手になると考えている人もいます。
またある人は、キッチンにこだわって、激安空き家でも、3口ガスコンロに魚焼きグリルもあるキッチン台を入れることで、入居者を早く決められると言います。キッチン台の取り替え価格は、仲介業者に出すAD(広告料)2カ月分に相当するようです。それを考えると安いものかもしれません。
そのほか、入居者に壁紙を好きに選んでもらったり、DIYで壁を塗ったりしてもいいというオーナーもいます。DIYで家をつくっていく楽しさを味わいたい入居者もいますから、そうした人とマッチングすれば、オーナーはリフォームする手間とお金を省くこともできて、かつ入居者は自分の好きなようにリフォーム・リノベーションできるという利点があります。
安全性とコストをどう考えるか
このようにいろいろな考え方がありますが、すべての物件に共通して考えるべきは「安全性」でしょう。耐震補強などに多額の投資をしてしまうと、回収までに時間がかかってしまうので悩ましいところではありますが、無視することはできません。
長期保有する前提なら、耐震補強をしたり、家が長く持つようにお金をかけてしっかりリフォーム・リノベーションすることで、安心して長く住んだり貸したりできます。さらに高く売却できる可能性も出てきます。どこまでコストをかけるかは慎重な検討が必要です。
なお、リフォーム費用を安く抑えるためには「分離発注」といって、部分的に得意な業者さんに振り分けて発注をしたり、「施主支給」といって、部材を自分で安く見つけて入手して、それを使ったりすることで費用を抑えることもできます。
いずれにしろ、ご自身がどんな家に再生したいのかをしっかりプランニングして、「お金をかけるべきところ」「お金をかけなくていいところ」を見きわめることが大切です。
この記事を書いた人
暮らし研究所エメラルド・ホーム代表
暮らしのジャーナリスト・ファイナンシャルプランナー 1979年岐阜県生まれ。 情報誌の編集、フリーライターを経て現職。空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、お得なマネー情報の研究に目覚め、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。講演・執筆・FP相談を通じて、家探しの基本から中古住宅の価値向上とリノベーションの魅力を伝えている。空き家活用に関するセミナーは3年でのべ2000名が参加し、「わかりやすくて、おもしろい。勇気がもらえる」と幅広い世代から好評を得ている。著書に『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)、『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)など。