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中古住宅で儲ける不動産会社の手口

まず中古住宅売買の仕組みを知っておく

高橋正典高橋正典

2016/01/04

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不動産会社は儲けるために何をするのか

 一般的に中古住宅の売却をする場合、自社で設計・建設した戸建てを販売する「不動産分譲会社」ではなく、さまざまな中古物件を取り扱う「不動産仲介会社」に依頼することになりますが、以下のようなケースが多く見受けられます。

「Aさんが不動産仲介会社Bに中古住宅の売却を依頼したものの、最初の値段ではなかなか売れない状況。あせるAさんにBは元の価格より値下げした額で業者Cに下取りさせることを提案、Aさんは受け入れました。下取りの契約後、Aさんがその場所を訪れてみると、何とBの名前で値下げする前の金額で売られていたのです」

 これは不動産仲介会社による売り主に対する重大な背任行為(何が問題なのかは後述します)ですが、実は自社の利益を上げるためにこのようなことが行なわれたのです。普通に買い主を見つけて売却するよりも、一度、買い取り業者に下取りさせてから、再度、自社で販売したほうが多額の手数料を得ることができるのです。

住宅の取引は「個人から個人」と「個人から業者」のケースがある

 住宅の取引では、「個人から個人」だけではなく「個人から業者」への売却のケースもあります。

 売り主から売却を依頼された不動産仲介会社Dは、「レインズ(不動産流通標準システム)」という不動産会社間の物件情報ネットワークに物件情報を登録、公開します。すると、その情報を見た不動産仲介会社Eが自社の顧客にその物件を紹介、購入することになるとDは売り主から、Eは買い主となる顧客からそれぞれ仲介手数料(売買価格の3パーセント+6万円が上限で、売り主・買い主ともに仲介会社に支払うことになる)を得ることになります。これが「個人から個人」の売却の手数料の流れです。

 その一方で「個人から業者」の場合、不動産買い取り専門会社による下取りが行なわれたケースはどうでしょうか?

 売り主は不動産仲介会社Fに売却を依頼しますが、Fはいろいろな理由をつけて売り主に値下げを認めさせ、不動産買い取り専門業者Gに下取りさせます。この取引が実現すると、Fは売り主とGから3パーセントずつ手数料を得ることになるので元の価格のおよそ6パーセントという「個人から個人」のケースのほぼ倍の利益になるのです。

 Gのような買取専門業者は、リフォーム等を行なってから転売することが目的です。そこでFはGに対して「転売する場合には自らが仲介する」という約束をさせる場合もあり、その場合にはFはさらにGと次の新たな買い主から手数料を得ることができ、Gも再販売により利益を得ることができるのです。元の売り主だけが割を食ってしまう結果となりました。

 このような商取引は、不動産取引においては普通に行なわれていることですが、もしあなたが不動産を売り出し買い主が下取り業者に決まった場合はその販売活動は失敗だったといっていいでしょう。このケースは、どうしても売れなかった時の最終手段か、諸事情により短期間で売らなければいけない場合の緊急手段と考えておきましょう。

中古住宅を売る重要な要素「タイミング」

 自社の利益を優先する不動産会社が多いなか、中古住宅を少しでも高く売る重要な要素のひとつに「タイミング」があります。この「タイミング」を見極めることで、数百万円単位で得をすることがあります。

 昨今は建築価格が高騰しているので、新築戸建ての価格はかなり高くなっています。そうなると、中古戸建ての価格は購入者にとってかなり割安感があるわけです。たとえば、ある新築物件とその物件より広く少し安い中古物件があれば、中古物件を選ぶ購入者も多いのです。

 また、マンションでよくあるパターンですが、競合物件があるかないかという「タイミング」も重要です。競合物件があると、どうしても比較されてしまいますし買いたたきされることもあります。少しでも高く売るためには、あえて「タイミング」を遅らせるという判断も必要になります。どうしても今すぐ売らなければならない場合は、「インスペクション」と呼ばれるプロによる建物診断を行ない、中古住宅に安心・安全という付加価値をつけるという方法もあります。

営業担当者の本音は「少しでも安く売る」

 最後に、不動産仲介会社の営業担当者の本音についても知っておきましょう。

 熱心で前向きな言葉を並べてくる営業に、あなたは「この人に任せてみよう」と思うかもしれません。しかし、彼らの給与は多くの場合、固定給プラス歩合給が基本なので、仲介手数料をいかに多くとれるかが彼らの収入に直結するわけです。

 とはいえ、少しでも高く売ることを目指しているのかといえばそうとも言えません。歩合給の決め方にもよりますが、数百万円高く売るために時間をかけて数千円の歩合給を取るよりも、安く売ってたくさんの数をこなしたいと思う営業の方が多いのです。つまりは、売り主を説得し少しでも値下げをしようとしてくるということです。ですので、営業担当者とはうまくつきあいながら、積極的な販売活動を行なってもらえるようにコントロールしていくことが大切なのです。

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この記事を書いた人

株式会社バイヤーズスタイル代表取締役

株式会社セラーズエージェント取締役。 一般社団法人 相続支援士協会 理事。 1970年、東京都中野区生まれ。売りっぱなしの単なる「物件紹介屋」と言われる日本の不動産業界の慣習を変え、生涯にわたり、より顧客に寄り添う「エージェント(代理人)ビジネス」にシフトさせるべく、株式会社バイヤーズスタイルを設立。業界で初めてすべての取扱い物件に「住宅履歴書」を導入、顧客の物件の資産価値向上を担う。一般的に売りづらいとされる、築年数の古い中古住宅の売買に精通しており、顧客から厚い信頼を得ている。 さらに、ひとつひとつの中古住宅(建物)を正しく評価し、流通させるため「売却の窓口(R)」を運営し、その加盟店は全国に広がる。 不動産流通の現場を最も知る不動産コンサルタントとして、各種メディア・媒体等においての寄稿やコラム等多数。 宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、国土交通大臣登録証明事業不動産コンサルティング技能登録者。 著書に『実家の処分で困らないために今すぐ知っておきたいこと』(かんき出版) 、『プロだけが知っている!中古住宅の魅せ方・売り方』(朝日新聞出版) 、『マイホームは、中古の戸建てを買いなさい!』(ダイヤモンド社) 、『不動産広告を読め』(東洋経済新報社)など。

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