子どもが成長しても困らない間取りの考え方
秋津智幸
2016/02/04
同じと3LDKでも物件によって条件は違う
マンション購入を考えている場合、自分の好きなエリアを選んで、価格など予算から絞り込んで物件を決めていきます。候補となる物件のなかから、購入する物件を絞り込む際には、「間取り」も重要な検討要素のひとつです。
ここでは、間取り選びの考え方をご紹介しますが、たとえばひとえに3LDKといっても千差万別です。床面積が50平方メートルでも部屋を3つと8畳以上のLD(リビングダイニング)があれば、3LDKですし、100平方メートル超でも部屋とLDの構成が一緒なら、ひと部屋のサイズは大きくなり、収納も増えるかもしれませんが3LDKです。同じ3LDKでも、物件によって条件はそれぞれ違います。
「家族の構成」と「生活スタイル」で間取りを選ぶ
間取り選びの基本は、「家族の構成」と「生活スタイル」を考慮することです。「家族の構成」とは、「夫婦と子どもふたり」、「祖父母と夫婦と子どもひとり」などの家族を構成する人のことです。ただし、一言で子どもといっても、その子どもの年齢でも選ぶべき間取りは異なってきます。
また、「生活スタイル」については、一家団らんを基本として長い時間を家族一緒に過ごす家庭なのか、個人のプライベートを重視する家庭なのかで選ぶ間取りは変わります。また、妻が専業主婦で常に誰か家にいる家庭に合った間取り、子どももある程度大きく、夫婦共働きで昼間は家に誰もいない家庭に合った間取りといった考え方もできます。
この「家族の構成」と「生活スタイル」は完全に切り離すことはできず、相互に関係している部分があります。
間取りを考える前の大前提は「部屋の面積」
さて、間取りを考える前に大前提となるのは、実は部屋の面積です。マンションを購入する場合、コンパクトな物件を購入したとしても、狭くなったら住み替えればいいという考えも方もありますが、住み替えはそう簡単ではなく、誰もが住み替えできる訳ではありません。
むしろ、間取りは後々リフォームで可変できますので、一定の面積を確保することができれば、住み替えという多額の費用がかかることはしなくても、数百万円程度と現実的な費用で家族の構成に合わせた家にすることができます。
現在と将来の家族構成を想定し、どの程度の面積が必要かを考えましょう。またこのとき、子どもはいつか独立するという前提に立つこと。いま、子どもがいても、最後には夫婦ふたりなると考えると、あまり広すぎても後々マンションの維持費等で困ることがあります。
どれくらいの面積があればいいのか?
国土交通省では、住生活基本計画という計画のなかで、「誘導居住面積水準」と「最低居住面積水準」のふたつを策定しています。これは、各世帯についてどの程度の居住面積があるとよいかについて一定の水準を定めたものです。
ここでいう誘導居住面積水準とは理想とする住宅の面積で、最低居住面積水準とは最低限ほしい住宅の面積です。
都市型の誘導居住面積水準では、単身者は40平方メートル、ふたり以上の世帯では、「20平方メートル×世帯人数+15平方メートル」とされています。また、最低居住面積水準では、単身者で25平方メートル、ふたり以上の世帯では、「10平方メートル×世帯人数+10平方メートル」としています。
具体例として4人家族なら、誘導居住面積水準は95平方メートル、最低居住面積水準は50平方メートルとなります。これらはあくまで国土交通省の目標のようなもので、現実に考えた場合、95平方メートル以上の家を購入するには相当な予算が必要です。
実際のところ夫婦と子どもふたりであれば、子どもが成長し、一時的に手狭になることがありますが、70~80平方メートルあれば十分対応できます。昨今は時期的に不要な季節ものなどを預けることできるトランクルームも普及してきており、実際、トランクルーム業界が活況です。家が手狭になる理由のひとつは“収納”なので、その部分をトランクルームなどのサービスを利用することで一時的な狭さを回避することができます。
具体的なケースで考えてみると…
では、ここから少し具体的に考えてみましょう。すべてのパターンを挙げることはできないので、代表的なパターンで考えてみます。
(1)夫婦ふたりの世帯
将来的に子どもがほしいか否かが、マンションの面積や間取りを選ぶキーポイントになります。将来的に子どもがいらないという夫婦であれば、面積50平方メートル前後の1LDKまたは2LDKで十分です。ただ、夫婦でも互いにプライベートを重視する夫婦なら、2LDKとしたいところです。
将来的に子どもがほしいのであれば、やはりもう少し面積があったほうが望ましく、子どもはひとりと考えるのであれば60~65平方メートルぐらいの2LDKか3LDK。子どもがふたりほしいと考えている夫婦であれば、70~80平方メートルぐらいの3LDKまたは4LDKが妥当でしょう。ただ、年齢が若い夫婦なら、あまり大きな予算が取れないこともあり、現実的には子どもがふたりほしい場合でも65平方メートル前後の3LDKであれば、対応は可能です。
(2)夫婦と子どもひとりの世帯
今後、子どもは増えないという前提で考えた場合ですが、60〜65平方メートルぐらいの3LDK。面積が大きければなおよいですが、家族3人で各人1部屋確保できますので、面積が60平方メートルでも子どもが大きくなっても対応できます。
(3)夫婦と子どもふたりの世帯
上記にある通り、70~80㎡の3LDK~4LDK以上が理想。ただ、都内など不動産が高額なところでは65㎡ぐらいの3LDKが現実的な面積になります。65㎡程度の場合、子どもが大きくなり、独立までの数年間はかなり厳しくなるので、多少リビングが狭くても、主寝室がやや広めの間取りにしておくと、将来、主寝室を2部屋に分割して独立した子ども部屋にすることもできます。
各世帯に共通しますが、プライベートを重視したい場合は、各居室が廊下から出入りできる間取りを選び、団らんを重視する場合はリビングが広めの間取りを選ぶとよいでしょう。
また、生活上、家事動線も重要で、キッチンと洗濯機が直線で結ばれているか、回遊できる(ぐるっと回れる)動線だと使い勝手がよいといわれています。
この記事を書いた人
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級。 神奈川県住宅供給公社にて、分譲マンション、一戸建・宅地分譲、高齢者住宅等の新規不動産販売部門に従事した後、同社賃貸部門にて賃貸物件の募集、管理業務に従事する。その後、不動産投資専門の仲介会社を経て、不動産コンサルタントとして独立。 現在は「不動産サポートオフィス」の代表コンサルタントとして、自宅の購入、不動産投資、住み替え、融資など多岐にわたる不動産に関する相談・コンサルティングを行なう。その他、不動産業者向けの研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。 主な著書に、「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)、「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」「賃貸生活A to Z」(アスペクト)がある。