収納スペースはどれくらい、どこに確保すればいいのか
山田章人
2016/01/28
使う場所の近くに収納する
収納場所と使用場所が違うと、収納すべきものが出しっ放しになってしまいがちで、部屋が片づかないうえに収納場所がデッドスペースになるという悪循環を生みだします。
キッチン・トイレなど、収納すべきものが明確な場合はイメージしやすいので、置くものを収納するスペースの確保と、置いてある状態を見渡せるつくりを心がけます。ストック品が見えないつくりは、余計な在庫を抱えてしまいやすく、収納しきれなくなる可能性もあります。
そのほか、玄関・洗面所には靴やタオルなどの収納が必要になりますが、リビングは収納について意識が及びにくい場所です。しかしながら、このリビングの収納こそが大事で、雑多なものを収納するスペースがあるかないかで日々の生活の利便性が大きく変わってきます。
壁に設置する棚・扉つきの小物入れを家の各所に設けることで、家のなかがすっきりします。家族が多ければ多いほど、雑多な荷物は増えますし、なかなか捨てられないものも出てきます。そのようなときに、これらの収納スペースを利用することで、必要なときにすぐ取り出せます。
収納をつくる上で気をつけたいこと
収納をつくるうえで大切なのが、奥行きの設定です。奥行きを深くつくりすぎると、奥のものが取り出し辛いうえに、何がしまってあるのか見づらくなってしまいます。これでは収納スペースとして使いづらく、最悪の場合はデッドスペースになってしまうので、収納するものを考慮しながら奥行きを決めましょう。
一般的に、本棚は300ミリ、食器棚は450ミリ、衣類は650ミリ、布団は910ミリくらいの奥行きが適当といわれています。
ウォークインクローゼットの有効活用
衣服を整理するのによく使われているのが、ウォークインクローゼットです。寝室に設置することが多いクローゼットですが、あまりに広すぎても動線に面積を使ってしまうので、最短の動線で収納部分を多くとるように工夫しましょう。
また、寝室には布団を収納する押し入れが必要になります。和室洋室問わず、和寝具を床に敷いて寝るという人も多いそうですが、これはベッドのように置いたままではなく、収納できるためスペースを確保できるからです。ですから、布団用の押し入れは必ず確保しましょう。
デッドスペースになりがちな場所を利用する
間取りを設計していくうえでデッドスペースになりがちなのが、階段の下や天井裏です。これらのスペースを収納にすると、上手に空間を生かせます。
ただ、階段は高さによってそれほど大きなスペースをとれないかもしれませんので、階段も収納スペースも上手に使えるような設計をお願いしましょう。入るものは限られてしまいますが、階段下に収納スペースがあると掃除用具など細かいものの収納に便利です。
また天井裏のスペースも高さに制限があるので収納物は限られてしまいますが、季節のイベント用のもの(節句で使う人形やクリスマスツリーなど)などを収納するのにはあったほうが便利です。
このように、収納スペースなどを工夫することで、生活が便利なものになります。後々「このスペースがあってよかった」と思えるので、設計タイミングで検討しておくとよいでしょう。
収納以外の空間利用
ここで、収納とはちょっと趣が違いますが、あったほうが便利なスペースを紹介しておきましょう。
最近は和室をつくらない家も多いようですが、実は和室があると重宝します。独立した部屋にするのがむずかしい場合は、リビングに畳のスペースをつくったり、収納可能な畳を敷いたりします。
また、机をうまく利用するのも手です。机あるだけで、その上でいろいろな作業ができたり、本を並べたりと収納スペースとしても役立ちます。
持ち物の整理をするには最適なタイミング
家を建てるタイミングというのは、持ち物の整理をするにも最適なタイミングです。新しい家にすれば、収納も増えると単純にお考えかもしれませんが、一度冷静に考えなおしてみてください。
例として坪60万円の住まいを考えてみましょう。
収納のスペースとして、押入れ2間分(1間は畳の長手と同じ幅)とすれば、それだけで床面積でいえば1坪の面積になります。新居で、新しい生活を始めるのに必要ない物を捨てずにとっておくと、その収納スペースが1坪増えるだけで単純に60万円のコストがかかることになります。
数千万円のうちの60万円が多いと考えるか、たいしたことないと考えるかはあなた次第ですが、契約を最終決定するときにこの60万円があればかなりいろいろなことができます。床暖房の面積が増やせますし、サッシの断熱性能をワンランク上げることができます。また、床材を合成品から無垢のフローリングに変えることもできるのです。
無駄な物の収納のために払う金額は思いのほか大きいので、住まいを考えると同時に収納場所のなかに収納する物のことも一度考えてみてください。
この記事を書いた人
一級建築士
5人建築家コンペでの家づくり 家escort京都 代表。 省エネ住宅診断士。 一級建築士事務所にて、神社仏閣から商業建築、住宅まで幅広く設計監理業務に従事した後、独立。2005年より、それまでの経験から、いい建物づくりには住まい手と設計者、施工者の相性のよい結びつきが不可欠と考え、住生活エージェントに専念。 住まい手が、自ら相性の良い建築家と施工者を選び出すのは至難の業であるという考えのもと、住まい手目線を基準に最適な建築家と施工者を結びつける代理人を目指す。自らの立場を、販売代理店ではなく、購入代理店と位置づけている。住まい手にとって最適な住宅とは何かを考え、老後までを考えた資金計画、不動産業者とは違う目線での土地探し、まだ施主様すら気づいていない好みや個性を引き出し最適な空間を生み出す工夫など、家づくりの準備を充実させることによって、結果、生涯心地のよい住まいを手に入れていただくことをミッションとして活動している。