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今とその先の“安⼼”のために何をすべきか?

3人に1人が高齢者の時代 逼迫する身元保証問題(2/2ページ)

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今後も深刻な問題 ⾼齢者の⾝元保証

——⾼齢者が直⾯する、とくに深刻な問題とはどういったものでしょうか。

⾼齢者を取り巻く現状のなかでもとくに根深いと感じているのが、単⾝で⾝寄りのない⽅からのご相談です。総務省が公表した20年の国勢調査で、65歳以上の⽅の5⼈に1⼈が一⼈暮らしをされているという実態が浮き彫りになりました。⼊院や⾼齢者施設、賃貸住宅への⼊居など、⽣活におけるさまざまな局⾯において、緊急連絡先を担う⾝元保証⼈が必要になります。⾝元保証⼈は、緊急時の対応から死亡時の⾝元引き受けや債務保証を担う重要な存在です。これまでは家族がそれを担うことが⼀般的でした。しかし、少⼦化や核家族化が進⾏するなか、⼦や兄弟姉妹、親戚を頼ることのできない⾼齢者が増加しており、⾝元保証⼈を確保できないことで賃貸住宅への⼊居や⼊院を断られるなどといった事態が相次いでいます。こうした⽅に向けて、当団体では⾝元保証の対応を⾏っています。⾝元保証に加え⽣活サポートをお任せいただくことで、毎⽉の定期訪問により、ヘルパー的な役割や、ご相談者のお体の様⼦を⾒ながら、主治医やケアマネジャーと連携をとるという役割も果たしています。


出典/日本総合研究所「超高齢社会における身元保証の現状と課題」を基に編集部にて作成

また、⾝寄りがいないことで、⾃⾝が亡くなったときの不安を抱えている⽅のご相談も多く寄せられます。相続⼈がいないため、財産をどうするのか、⽕葬や葬儀、埋葬は誰が⾏うのか、飼っているペットはどうなるのか……。こうした死後対応についても、サポートを⾏っています。

私が担当した例だと、単⾝の男性で全く⾝寄りがなく(相続⼈がいない)、さらに猫を飼っているという⽅からのご相談がありました。がんによる余命宣告を受けたことで、⾃分の死後についての不安をケアマネジャーに打ち明け、当団体に相談することになったのです。相続⼈がいない場合、何もしなければ、残された遺産は国に帰属することになります。

その男性は遺産を動物愛護団体に寄付したいということでしたので、遺⾔によって心配されていたペットを含めた死後対応や希望する寄付を叶えることができました。遺⾔執⾏者を当団体に指定していただくことで、我々が代理⼈としてご相談者の遺⾔内容を実現させることができます。

まもなくして、その⽅が亡くなったという連絡を受け、すぐに現地に⾏って死亡確認をし、葬儀屋の⼿配、⽕葬と納⾻を⾏い、飼っていた猫もその当⽇にNPO法⼈の団体に預かっていただきました。納⾻先のお寺の住職とは⽣前に打ち合わせをしていたため、スムーズに納⾻ができ、三回忌まで法要した後、最終的に永代供養をして墓じまいをしたのが21年9⽉末のことです。

こうした単⾝で⾝寄りがいないことによる⾝元保証や死後対応の問題は、これからますます増えていくでしょう。今後、主にそうした⽅々へのサポートを厚く⾏っていきたいと考えています。

終わりの準備でなく受け継ぐための⽀援

——亡くなってからその数年先まで⽀援は続くのですね。

我々は“今とその先のありがとうへ”という⾔葉を理念として掲げています。今ご健在でサポートさせていただいている⽅だけでなく、亡くなった後もサポートをし、その安⼼から聞こえてくる“ありがとう”を⼤切にしているのです。

当団体のスタッフは、もともとケアマネジャーやヘルパーをしていた⽅など、福祉に携わっていた⽅が多く在籍しています。⾼齢者の⽅との会話や、体調の変化から発せられるシグナルを受け取るには、そうした経験を⻑年積んだベテランが持つ⼒が必要になります。福祉の世界で⾼齢者の⽅の深いお悩みを肌で感じた経験があるからこそ、理念を⼤切にする熱い思いをもって活動しているという点は、当団体の特徴の⼀つかもしれません。

——終活は踏み出すのに少しハードルが⾼いイメージですが、始めてみるきっかけになりそうですね。

この先は、例えば、ゴミ捨てや家の⽚付けといったような、地域密着型で⾼齢者の⽅々の⽣活に根差したサポートをしていきたいと考えています。いまだ「終活」という⾔葉は後ろ向きなイメージとなっていることから、⽇々の⽣活のなかに我々のサポートがあり、その延⻑線上に終活があるようなイメージだといいのかもしれませんね。

10年ほど前、終活とともに“エンディングノート”という⾔葉の認知が⼀気に広がりましたが、“エンディング”という⾔葉も少し後ろ向きなイメージを思い起こさせるかもしれません。当団体では、“⼤切な想いを次世代につなぐ”、そして、それをサポートするという意味を持った「継ぐサポノート」という名前で提供しています。

そのノートの中⾝は、相続に関することや認知症を発症した際の財産管理についてはもちろんのこと、⾃⾝の住所や連絡先などの基本情報に始まり、趣味や好きなもの、パソコンや携帯電話の処分について、⾎液型などの⾝体に関する情報、延命治療や余命宣告、臓器提供についての意思、ペットの情報、葬儀やお墓についての要望、もしものときに連絡してほしい先や資産についての情報などが記しておけるようになっています。

終活というと、相続や財産についてばかりを取り上げがちですが、“後に遺していく⼈へ思いをつないでいく”ということが⼤切なんです。葬儀の予算ひとつとってみても、しっかりと思いが受け継がれていれば、後に遺された⼈たちが悩むことは少ないでしょう。


都民シルバーサポートセンターのホームページ。高齢者の想いを次世代につなぐサポートを行っている

⾼齢化が進んでいく状況のなか、オーナー様にとってもさまざまな側⾯で不安や孤独を感じることがあると思いますが、⼿を差し伸べてくれる⼈はたくさんいるということを伝えたいです。それは我々のような団体だけでなく、家族の存在が⾮常に⼤きいと思います。

「継ぐサポノート」により家族が集まり、この先について話し合うきっかけになればとても嬉しいです。⼀⼈で悩まず、⾃分の⾔葉で思いを伝えていっていただきたいと切に願います。

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この記事を書いた人

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