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土地値や建築費上昇が原因ではない 新築マンションの価格が上がっているワケ(3/4ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2021/10/09

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2010年と20年における各年で供給された新築マンションを価格帯別に比較してみよう。仮に分譲価格8000万円より上を高額物件とする。10年では全体の供給戸数4万4535戸のうち、高額物件は1972戸、全体戸数に占める割合はわずか4.4%にすぎない。ところが20年をみると、高額物件は3925戸で、全体に占める割合は14.4%にもなっている。つまり、縮小したマーケットの中で、メジャー7などのプレーヤーが相手にしている顧客は、一般庶民というよりも8000万円オーバーのマンションを購入できる「お金持ち」なのだ。

2010年と2020年の新築マンション価格帯別供給戸数

出典/不動産経済研究所

結論を言えば、最近の新築マンション価格が上昇しているのは、表面的には土地代が上がっているだとか、建物の建築費が上昇傾向にあるなどと分析、説明されるが、本質は違う。供給側が客を選んでいるのである。

8000万円を超えるような物件を喜んで買っている顧客のプロフィールは次の4つだ。①富裕層、②国内外の投資家、③高齢富裕層の相続対策、④夫婦ともが上場企業に勤務するパワーカップル、以上だ。

新築マンションマーケットは、不動産マーケット全体の中では年々縮小傾向にあり、もはや業界の中では決して大きなセグメントではない。不動産大手が、ここ十数年の間に、マンション供給会社を次々本体から切り離して別会社化してきたのは、その表れだ。

マンションストックはすでに660万戸を超える。首都圏での中古マンションの成約件数は20年で3万5825戸。すでに16年から新築マンションの供給戸数を上回っている。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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