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土地値や建築費上昇が原因ではない 新築マンションの価格が上がっているワケ(2/4ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2021/10/09

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小さなケーキを分け合う「メジャー7」

だが、ちょっと待て、である。ここで私たちが冷静に考えなければならないのが、では「こんなにお高い」マンションを買っているのは誰なのかということだ。面白いデータを示そう。
04年当初、首都圏1都3県の新築マンションは8万5429戸供給されていた。

ところが20年はコロナ禍の影響があったとはいえ、2万7228戸と3万戸割れになっている。コロナ前の19年でも3万1238戸だ。首都圏における新築マンション供給戸数はこの15年あまりの期間で、なんと3分の1に縮小している。またこの間、新築マンションを供給するデベロッパーの数は4分の1に減少しているのだ。

2020〜2011年の首都圏マンション発売個数の推移(単位:戸)

出典/不動産経済研究所「全国マンション市場動向—2020年のまとめ—」

新築マンションマーケットは、大相撲でいえば、土俵が3分の1に小さくなって、これまで前頭14枚目までで競っていた力士が、小結以上で相撲を取っている状況にある。よく新築マンション業界では、メジャー7(三井、住友、三菱、野村、東京建物、東急、大京)などと称しているが、残った彼らで小さくなったケーキを分け合っているのが新築マンションマーケットの実態だ。

つまり、新築マンションは良く売れているから(需要があるから)、人気で高くなっているのではなく、需要がなくなったので、デベロッパーが供給を絞って特定の顧客にだけ販売している構図が見えてくる。

誰に売っているのか 価格上昇の本質は?

マーケットが縮小しているためにプレーヤーも少なくなった。さて、彼らはいったい誰に対してマンションを売っているのだろうか。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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