改定が続く火災保険と地震保険、その背景とチェックポイント
平野 敦之
2022/03/12
イメージ/©︎faula・123RF
改定の続く火災保険・地震保険
大規模な自然災害の影響を受け火災保険と地震保険の改定が続いています。2014年以降、地震保険は4回、火災保険は3回改定が実施されました(※火災保険の改定実施時期は損保によって必ずしも同じ時期ではありません。地震保険は各社改定時期や改定内容は同一です)。
火災保険は21年5月に、地震保険は21年6月に損害保険料率算出機構が金融庁長官に対して次の改定の届出を行いました。いずれも、すでに金融庁の適合性審査を終えています。これによって火災保険と地震保険が再び改定される見込みとなりました。
火災保険の改定の背景と内容
火災保険は、自然災害リスクが増加傾向にあること、また、築年数によるリスクの違いを料率に反映させることが主な改定の背景です。
築年数が古い住宅は、新しい住宅よりも電気や給排水設備の老朽化による火災や水濡れリスク、台風や大雪による損壊リスクが高い実態があります。人の年齢と同じでどんな住宅も新築後は古くなっていくので誰にでも関係のあることだと考えてください。
<火災保険の改定の概要>
・火災保険の「参考純率」を平均で10.9%引き上げ。参考純率が適用できる期間を最長5年に
参考純率というのは火災保険料率そのものではなく、純粋な保険の補償部分の保険料(純保険料)部分で、必ずしもこの改定率のとおり改定されるわけではありません。
※【参考】火災保険料率=純保険料率+付加保険料率
各損保はこの参考純率を文字通り参考にして、火災保険料率に反映させて改定します。参考純率だけでも約10%というのは結構な引き上げです。参考純率の適用を5年間にするということは、火災保険の長期契約できる期間を5年にするということです。
現在は10年間、それ以前は36年間でした。長期契約であるほど割安になることを考えると影響の大きな改定です。
地震保険の改定の背景と内容
地震保険の改定の背景は、17年1月から3回に分けて実施した改定について、保険料不足が発生することからその後の改定でこの不足を改定することになっていました(今後10年程度見込み)。また、地震災害に関する各種基礎データの更新や、所在地・構造別の料率の見直しなども反映することになります。
こうした状況を背景に地震保険の次の改定では以下のことが変わります。
・地震保険の「基本料率」を全国平均で0.7%引き下げ
・地震保険の長期契約の割引の見直し(長期係数の見直し)
火災保険では参考純率が使われていましたが、地震保険は政府の関与する官民一体の保険で損保各社とも共通した内容です。そのため先ほどの「純保険料率」と「付加保険料率」を合わせたものを基本料率としています。つまり地震保険料は、この改定率のとおり見直しされます。
今回の改定で地震保険料率は全国平均で引き下げとなります。
全国的に引き下げの一方で、個別には、福島県(イ構造)、茨城県、埼玉県、徳島県(イ構造)、高知県(イ構造)は引き上げられます(割引なしの場合)。
ちなみに埼玉県のイ構造は+29.9%、ロ構造は+12.3%と結構な引き上げ幅です(イ構造は主に非木造、ロ構造は主に非木造)。
長期係数は期間5年の場合のみ改定され、これまで4.65だったものが4.7になります。大まかなイメージとして1年間の地震保険料×4.65だったものが、×4.7になると考えてください。
火災保険・地震保険の改定はいつ?
火災保険および地震保険の改定実施時期ですが、現時点では公表されていません。
過去の動きをみていると、改定の届出後、金融庁の適合性審査が終わってから、1年あるいは1年半程度くらいに実施されることが多いようです。
21年1月に改定が実施されていることなどを考慮すると、22年度中にもそれぞれの改定が実施される可能性が高いと考えられます。
火災保険・地震保険の次の改定に向けてのポイント
火災保険と地震保険の改定を考える際、地震保険は火災保険とセットで契約するというルールです。地震保険の加入の有無によって、火災保険の改定だけ考えればいい人と火災保険・地震保険の両方の改定を気にする必要がある人もいます。それを踏まえたうえで以下の点を考慮してください。
・現在の火災保険と地震保険の契約日および満期日の確認
・長期契約している場合、その間に実施された改定を確認
・保険料を安くするには、必要な補償の選択や免責金額の設定(共に火災保険に関係)、可能な範囲で長期一括払い
・次の改定の実施時期や動向をチェック。早めに改定後の試算してもらい、状況によっては満期前に見直しも視野にいれる
いまの保険を長期契約している人は、満期までの間に他の改定が実施されている可能性も高いため、その影響も受けます。保険代理店などで契約している人は、改定の実施が分かったら連絡してもらうように依頼しておくのもいいでしょう。
住まいの保険料は負担が増加傾向です。予算もあるでしょうから、早めの情報取集を心がけて対応するようにしてください。
【この著者のほかの記事】
「健康増進型保険」のメリットデメリット 選び方のポイントは?
自動車保険の「車両保険」――必要な人、そうでもない人
火災保険の申請代行トラブル多発 被害に遭わないために必要なこと
この記事を書いた人
平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp