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「規制改革」「デジタル改革」の2枚看板で株価はどこまで上がるか?――今月の推奨9銘柄

望月 純夫望月 純夫

2020/11/10

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イメージ/©︎blueone・123RF

菅政権が掲げる2枚看板は「規制改革」と「デジタル改革」の推進だ。この二つは日本全体の生産性向上のために密接な関係にある。

しかし、わが国では、行政のデジタル化が一向に進まず、世界経済フォーラムが公表するIT競争ランキングは19年で12位に留まり、国連が発表する電子政府ランキングでは、エストニア、米国、オランダ、アイスランド、ノルウェーにも抜かれ、18年の10位から19年には14位にランクダウンする有様だ。これは各省庁間における縦割り重視の規制が存在したことで、日本全体の進化が妨げられてきたことによる。

そこで具体的な方策として、行政デジタル化の推進母体となる「デジタル庁」を21年秋前までに新設し、各省庁のシステムやデータ様式の統一化を進めること。と同時に、地方自治体や外部の行政機関ともシステムやデータ様式の統一化を図り、日本全体で行政手続きが円滑かつ迅速に、簡単にオンラインで行えるようにすることだ。

その推進役として河野太郎氏を行政改革・規制改革大臣に据え、自民党内でデジタルに精進し、デジタル人脈を有する平井卓也氏をデジタル改革・IT 大臣に抜擢したことは、菅首相が本気で日本を作り変えようとしている表れと言える。

デジタルガバメントの構築に関して、菅首相は25年までに行政デジタル化を達成するようにも指示。21年度予算では、総務省に対しては前年度比約5倍の38億8000万円を計上し、早くも意欲を見せている。

菅内閣の支持率は発足の直後の74%から緩やかに下落してはいるが、外国人投資家はアベノミクス同様、スガノミクスは成長戦略ということで日本株の持ち株比率を引き上げて行く可能性は高い。実際、10月第1週の571億円売り越しから、同第2週には4170億円の大幅買い越しと投資スタンスに変化が見られた。

さらに菅首相は2050年の温暖化ガスゼロを表明し、最大限再生エネルギーを導入するとも明言、来夏にまとめる次期エネルギー基本計画でも再生エネの比率を大幅に高める予定だ。

国際的に中国は2035年に全て環境車に移行する計画で、政策に売りなし。

このレポートを書いている11月6日現在、米大統領選の決着はついていないが、日経平均株価は米国離れをしても良いタイミングに来ているように思う。ただ目先のピークは純資産倍率の1.2倍の2万5600円を想定。

キーワードは「デジタル」と「環境」の9銘柄

今月の注目銘柄としては、デジタル化関連として、NTTデータ(9613)、NEC(6701)、NECネッツ(1973)、TDK(6762)が中心銘柄とする。

NTTデータの21年3月期は海外事業が大苦戦となっているが、コロナ禍が収まることで、来期以降は今期に計上する構造改革費用150億円がなくなり、業績の回復が期待される。同社はシステム開発の最大手、中央省庁のシステム運用、銀行の大規模システム開発、地銀や信販向けの供与システムの提供・運営を得意としており、国内では群を抜く存在である。2016年6月の4575円(分割915円)と2020年3月安値858円でダブルボトムを形成しており、20201月高値1588円と同年3月8月の安値858円の下落幅730円に対する倍返し2318円を目指す動きが2021年度に達成も。

NECネッツは、NECの傘下で電気通信工事を主力事業としてきたが、現在はネットワーク関連のICTシステムの企画・コンサルティング設計・構築を主力事業とし、クラウドを含めた運用や遠隔監視、アウトソーシングも行っており、現在のDX化加速の流れは、大きなチャンスと言える。21年3月期は最高益更新もあり目標は3000円。

独立系SIのアイネス(9742)は三菱総研と資本提携し、自治体向け総合行政システムに強みを持っている。

次のテーマは電気自動車で、今年の8月に電気自動車専業の米テスラモーターズの株価が年初の6倍となり、日本の自動車メーカー9社を合計した時価総額を超えた。テスラの株価上昇の背景にあるのは、新型コロナで低迷する経済を立て直すために環境を通じて景気浮揚を目指す「グリーンリカバリー」や「ESG投資」の普及などにより、投資がEV関連企業に集中する資金の流れだ。

欧州ではEVの補助金を増やしたことで、急激に販売台数が急激に増加し、中国も20年末終了予定の補助金制度を2年延長し、今後の販売台数の増加を見込んでいる。日本もEV購入時に最大40万円の補助金が給付されている。

パナソニック(6752)はテスラ向け米国車載工場を増強している。また薄型バッテリーを採用し、航続距離は300㎞と短くなったものの街中利用に特化したEVの仕上がりとなっている。

ニチコン(6996)が世界で初めて市場に導入したV2Hシステムに注目が集まっている。これによりEVで蓄えた電気を家庭で使えることが可能となった。日産(7201)のリーフは、一般家庭の2~4日の電気供給を可能にした。

V2Hの技術は世界で先行し、さらに進化している。EV関連ではGSユアサ(6674)、全固体電池の開発が進んでいる村田製作所(981)、TDK(6762)、三井ハイテック(6966)、三井金属(5706)等に注目。

投資信託はアベノミクスを引き継ぎで、国際型が強し

菅政権はアベノミクスを引き継ぐ体制ということから、投資信託は体勢に大きな影響がないと思われる。全体としてはコロナショックによる大打撃を受けたものの、世界的な金融緩和や大型の財政投入による経済回復を促す流れに変化はないことから投資資金の流入は加速している。

ただ、資金流入は海外株式(グローバル型)投信が中心で国内株式型の流入速度は鈍いままである。

具体的には7月に新規設定されたアセットマネージメントOne「グローバルESGハイクオリティ成長株ファンド」は設定時に3830億円もの資金を集め、9月には6000億円弱まで増加。

ヤフーファイナンスで投資信託の資金流入額(月次)の上位20本のうち国際型投信信託は18本で、このうち北米型に属するのが9本で、北米型は主に米国市場に投資するタイプである。

米国企業を組み入れ運用する投資信託では、農林中金全共連アセットマネージメントが運用する「農林中金(パートナーズ)長期厳選投資おおぶね」は好パフォーマンで人気がある。

日本株では、中小型株を対象とするアクティブ運用のファンド、エンジェルジャパン・アセットマネージメントが助言するSBIアセットマネージメントの投信に注目したい。兼業投資家の投資は長期投資が原則で、長期で保有し続けられるようなためには、過度なリスクをとらないようにすることである。

コロナショックのような市場の急変は、2008年のリーマンショック、2013年の英国のEU離脱等々、数年に一度はあるものである。その都度市場から退場を余儀されないように、下げに耐えられないほどのポジション(投資残高)を持たないことも大事なポイントである。そのリスク低減のためには、インデックス連動型や定額積立型投資を利用できる。

※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。

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この記事を書いた人

コンサルタント、ラジオパーソナリティ

1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。

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