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あの家は私の学費の20倍はする――プライベートカウンセリングで相続トラブルをうやむやに(3/4ページ)

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不安と不信感が大きく膨らんで

A子「あの、ちょっと言いにくいことなんですが、生前、母は、高校生だった私にこの家と土地はすべて私に遺すから心配しなくていいよ、と言って、大学の学費はおじさんに頼んであると。そこのことを遺言書に残してくれいたようなのです。お母さんが亡くなって、私は大学に戻って、学生寮に入りました。そのあと一周忌で家に戻ってみると、母と暮らした家が更地になっていたんです。それでおじさんに聞くと、母の医療費と私の学費を払うために売ったというんです。でも、そこで遺言書のことを言い出せなくて……」

「そうか。腑に落ちない感じなんですね?」

A子「ええ、田舎ですが、家のとなりは昔のお城があって、結構にぎやかなところだったんです。夜になると、そのことを思い出して、悲しいし、どうしようと」

「納得できないのも、無理はないですね。それで夜中に落ちつかなくなるんですね」

A子「ええ、大学を卒業して寮を出たら、もう、住むところも帰る家もない、と考えてしまいます。それに家族もいない。たったひとりで、知らない土地で、どうしていくんだろうと。無性に誰かと話したくなって、おばさんにLINEしたりして……。それがおばさんにとっては迷惑だったなと思います。でも、あの家は、私の学費の20倍はすると思うんです」

カウンセリングでこころのモヤモヤが一気に晴れることも

プライベートカウンセリングでは、夫婦の気持ちのすれ違いや家族の関係修復、家族内でも引きこもりなどを扱うことが多いでのですが、A子さんのような金銭が関係するお話も意外に少なくないのです。

最初、この相談では身内のいない従妹を心配しての話と思っていましたが、どうも、そんな穏やかな話ではなさそうです。目の前にいる、この清楚で美しい23歳の女性の身に起こっていることを想像すると、とてもやるせない気持ちになりました。

本音を吐露したAさん。そんな重苦しいカウンセリングルームの空気を変えようと「就活はどんなお仕事を考えているんですか?」と尋ねると、意外な答えが返ってきました。

A子「大学に入ったときは、絵本の出版とかに興味があったんですが、今回のことで遺言書や土地のことを調べているうちに、相続やなどに興味がでてきたんです」

「えぇ? 絵本から相続ですか? 思い切った方向転換ですね」

A子「はい。弁護士は無理なので司法書士を目指そうと思っているのです。今回のことで、遺言書には有効期限がないことが分かりました。もし、公正証書遺言だったとすると、それがどこにあるか公証役場で検索することもできるんです。まずは、自分事としてそれをやってみようと思います。 家族がいないから、資格をとって、強くならないと、これから生きていけないという思いを、今日、カウンセリングを受けて改めて強くしました。これ、おじさんには言わないでくださいね」

私は、さっきまでこの女性の身を案じていた自分を猛省した。もはや彼女は自立した強い意志を持った女性なのだと。

カウンセリングでは、こちらが何かをいうこともなく、相談者が持っていたこころのモヤモヤ感の本質の見極め、なかなかできない決断に踏ん切りをつけるきっかけになることがしばしばあります。

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この記事を書いた人

公認心理師 博士(医学)

大手不動産会社で産業保健活動を行う一方、都内で親子や夫婦の関係改善のためのプライベートカウンセリングを実践している。また、最近は、Webカウンセリングも行い、関東甲信越や東北地方の人たちとのセッションにも力を入れている。

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