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空き家対策――家族のカタチと高齢化

小樽、イタリアに見る地域の積極活用で見えてくるもの

川久保文佳川久保文佳

2018/11/01

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空き家が増える要因は多く、都心への人口の集中、高齢化、少子化など、様々な要因があり、よほどの複合的な政策でもない限りは増え続けるでしょう。

野村総業研究所(2016年発表)の試算によると直近の2023年には総住宅戸数6646万戸のうち、21.1%にあたる1404万戸が空き家になるという予測が出され、かなりのスピードで空き家が増えることが予想されています。このことによって、特に地方の空き家の増加と高齢化、生産年齢人口の減少によって、経済活動が停滞し、税収が減り、地域経済のダメージはさらに大きくなります。

地域での積極的な活用を

現在、各地域から様々な空き家活用に対する活動が報告されています。
空き家は地域のコミュニケーションの場としての運用はもちろん、地域の安全を守りながら海外からの短期宿泊者の受け入れにも積極的になるべきです。今後も人口減少は否めず、短期宿泊者を受け入れることで、人口の減少した地域に合った経済活動が持続可能になると考えられます。

先日、静岡県掛川市、遠州横須賀街道の活性化の取り組みについて、現地の方と意見交換を行いました。遠州横須賀街道地区には古い家、景観、街並みを残していこうという取り組みを行っています。景観保存と地域の文化や芸術を大切にした活動も行われています。地元の設計事務所が中心となって古民家再生などを積極的に行っているようです。

ただ、国内や海外へ告知やSNSを利用した情報拡散には至っていないようです。地域活性化には、発信力こそが必要です。人が都心と地域を往来し、観光や立ち寄るだけではなく、地域に留まって生活することが地域の商店や飲食街、人々の収益に直結していきます。それには、空き家を壊すのではなく、使えるものは活用するという考えで、海外からの田舎ステイは短期でも積極的に受け入れるべきだと考えます。

民間のシンクタンク「ブランド総合研究所」が発表した地域の魅力度ランキングで4位を獲得した北海道の小樽市では、古民家や歴史的建造物の建物を保存しながら積極的な活用が行われています。また、海外の旅行者を受け入れる体制づくりも始まっています。

しかし、札幌市が近いために宿泊しないケースも多いといわれ、街で消費されるお金も少ないようです。旅行者が使用する金額の38%が宿泊費という数字から考えると積極的に空き家を活用して、宿泊施設や移住用住戸としての転用が望ましいと考えられます。

イタリアの小さな町の取り組み

空き家については、各地域でタダでも引き取ってほしいという家主がいる一方で、売れない土地や家屋に対しては各自治体も消極的で、受け取りを断られるケースも多くあるようです。

そんななかで海外では興味深い取り組みが行われています。その1つがイタリアのオッロラーイという地中海に浮かぶサルデーニャ島の山間部にある小さな町は、過疎化対策で、1ユーロで家を販売するという政策を用いています。メディアなどで取り上げられ、注目を集めています。過疎によるゴーストタウン化を防ぐために購入者が3年以上家の修復に関わるという条件付きで老朽化した家が販売されています。誰も住んでいない家が200戸以上もあるというこの地域で、デザイナーや音楽関係者などの文化人が増え始めていると聞きます。

日本では、2015年に施行された空き家対策特別措置法によって、朽ち果てた崩壊寸前の空き家の処分が可能になりました。ただ、持ち主が特定できない空き家の手続き、書類作成費用や解体費用の負担があり、なかなか進んでいないようです。中には解体費用を一部負担するなどの積極的な自治体もあります。各自治体では、空き家に対する有識者会議が行われ、空き家バンク登録が行われてきています。次には活用したくなるような施策が必要だと思われます。

東京都世田谷区では地域で空き家を積極的に活用できるように、勉強会やミーティングなどを積極的に行っています。11月には空き家に関するセミナーの開催が決まっています。地域に住んでいる人が地元で活動をし、外からも支援を得ていくという取り組みが少しずつ形になっているように思います。実際に活動している方々には自分の時間を惜しみなく地域の為に使っているなど、素晴らしい活動をしている方々も多くいます。

家族のカタチの変化も

空き家が増えてきている要因の1つとして、家族のカタチの変化があげられます。

従来、家族のカタチは、昭和の時代を象徴する「サザエさん一家」のように、家族がお互いに助け合い、家族という集合体で育まれた独特の風習や文化を大切にしてきました。それは、地域を大切にし、祖先を大切にし、代々の教えを受け継ぎ、守られてきました。そうしたなかで家も大切に保存され、代々引き継いできました。

しかし、現在では、その家も住む人もいなくなり、子どもたちは地域から都心に出ていったままになり、出ていった先で生活の拠点を設けたまま、いずれは地元に戻るということが、通用しなくなってきています。家も生き物ですので、空気を通さない、人のいない家は朽ち果てていきます。朽ち果てる前に活用できる対策が必要です。

 

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この記事を書いた人

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。

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