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家賃上昇の波高く、大学新入生市場は息切れ? 2025年前半・家賃の「いま」

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家賃を値上げする一番のタイミングは?

今年も賃貸繁忙期といわれる季節が終わった。2月から3月を中心とする一時期のことだ。転勤や就職、入学などにともなう人々の移動が、この時分とりわけ多くなる。賃貸住宅では、当然のことながら入居者の入れ替わりが増えてくる。

今年は、この機会に家賃を値上げしたオーナーもいることだろう。賃貸住宅の家賃は、現在都市部を中心にかなりの上昇傾向にある。

とはいえ、家賃の値上げは入居者にとっては生活上の一大事だ。そのことへの納得を得るのみならず、法令上の制約も含め、実行にあたっては賃貸オーナーが苦労を強いられることも少なくない。

よって、値上げをするならば、契約更新時も含め「入居中」というタイミングを出来れば避けておくのが得策だ。

古い契約が終了し、新たな契約が白紙の状態で始まる時点での家賃の値上げ―――賃料の再設定こそが、それが可能な限りは、もっともストレスのないやり方となるだろう。

「岩盤」が動き出した24年

述べたとおり、賃貸住宅の家賃は、近年都市部を中心に上昇傾向にある。それを示す基礎的なデータとして、消費者物価指数の前年同月比変動率の推移がある。東京都区部の数字を見ていこう。ここ1年半分をさかのぼってみる。

「消費者物価指数 東京都区部・民営家賃の前年同月比の変動(上昇)率」

年月
25年 4月 1.8%(中旬速報値)
3月 1.1%
2月 1.0%
1月 0.9%
24年 12月 0.9%
11月 0.9%
10月 0.8%
9月 0.7%
8月 0.7%
7月 0.6%
6月 0.6%
5月 0.7%
4月 0.5%
3月 0.4%
2月 0.2%
1月 0.2%
23年 12月 0.1%
11月 0.1%

このとおりだ。昨年の春以降、加速された様子で数字は伸びてきている。

「変動の乏しい“岩盤価格”と見られてきた家賃がいよいよ動き出した」―――大手メディア等によるそんな報道を見聞きした人も多いだろう。

家賃の上昇は、全国主要な都市部の多くでも

次の資料を紹介しよう。

不動産ポータルサイト「at home」を運営するアットホーム株式会社による月例の報告だ。市場の動きを測る指標として、過去より業界内で頼りにされているものだ。

まずは、25年3月分、賃貸マンションの平均家賃の前年同月からの変化率となる。(全国13エリア・4月22日公表)

  • 「30㎡以下」「30~50㎡」「50~70㎡」「70㎡超」の全て(計4つ)の面積帯で3.0%以上の上昇が見られるエリア
    ……埼玉県、千葉県、福岡市 /計3エリア
  • 3つの面積帯で3.0%以上の上昇
    ……東京23区、神奈川県、京都市、大阪市 /計4エリア
  • 2つの面積帯で3.0%以上の上昇
    ……札幌市、東京都下、神戸市 /計3エリア

このとおり、賃貸マンションでは、主要な都市部からなる13エリアのうち、10エリアで、4つの面積帯のうちの半分(2つ)以上がプラス3.0%以上の高い前年同月比を示すかたちとなっている。なお、この括りから漏れたのは、仙台市、名古屋市、広島市の3エリアだ。ちなみに広島市エリアでは、4つの面積帯全ての変化率が-0.5%以下となっており、上昇している区分がない。

続いて、アパートの数字となる。エリアの数と顔ぶれは賃貸マンションと同じ。面積帯は1つ減って3つとなる。

  • 「30㎡以下」「30~50㎡」「50~70㎡以下」の全て(計3つ)の面積帯で3.0%以上の上昇が見られるエリア
    ……千葉県、東京23区、京都市 /計3エリア
  • 2つの面積帯で3.0%以上の上昇
    ……埼玉県、東京都下、神奈川県、大阪市、神戸市、福岡市 /計6エリア

このとおり、13エリア中9エリアで、3つの面積帯のうち2つ以上がプラス3.0%以上の高い前年同月比を示している。なお、残りは、札幌市、仙台市、名古屋市、広島市の4エリアとなる。

ちなみに、家賃が3.0%以上増えるということは、元が月6万円であれば1年で21,600円以上、月12万円であれば43,200円以上が増加する計算となる。

東京・首都圏のみならず、他の多くの都市部にも家賃上昇の高い波が及んでいることがわかる以上のデータ、となるわけだ。

この春、家賃が特に上がったと見られる「関東」

さらに、こんな資料だ。

公益社団法人・全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)による「不動産市況DI調査」の第37回・先般5月1日公表のものから数字を紹介しよう。アンケートに答えているのは、全宅連モニター会員―――不動産、建築等にかかわる240事業者となる。

質問内容:
居住用賃貸物件の賃料における、現在(25.4.1)の動向について、3カ月前(25.1.1)と比較してどのように感じますか?

エリア やや上昇している 横ばいである 合計
北海道・東北・甲信越地区 29.6% 55.6% 85.2%
関東地区 55.3%(他の地区に突出して多い) 39.5% 94.8%
中部地区 17.4% 82.6% 100.0%
近畿地区 20.0% 77.5% 97.5%
中国・四国地区 3.7%(他の地区より著しく少ない) 77.8% 81.5%
九州・沖縄地区 35.7% 57.1% 92.8%

見てのとおり、これらの数字は、今年の賃貸繁忙期における家賃動向についての「プロによる実感値」をいわば示すものとなっている(1月1日~4月1日という対象期間の大半が当該時期に重なる)。

そのうえで、6地区全てで「やや上昇している」「横ばいである」を合わせた数字が80%以上にのぼり、うち4地区で90%を超える状況だ。

なかでも、とりわけ目立つのが、関東地区における「やや上昇している・55.3%」という突出した数字となる。

そこで、先ほどの消費者物価指数を思い出すと、東京都区部の民営家賃・前年同月比の今年4月の値が、いきなり前月より大きく上がっている。

(再掲)
4月 1.8%(中旬速報値)
3月 1.1%

このことと上記(事業者実感値)は、どうやら符合するものといえそうだ。

また、もうひとつ目に付くのが、中国・四国地区における「やや上昇している・3.7%」という、他地区よりも著しく下がった数字となる。

こちらは、さきほどのアットホーム社のデータにおいて、広島市エリアの勢いが他エリアに比べ「ふるわない」ことと、やはり符合する可能性がある。

大学新入生を抱える家庭はすでに「息切れ」?

最後に、東京私大教連(東京地区私立大学教職員組合連合)による調査結果を紹介しよう。「私立大学新入生の家計負担調査」の24年度分が、先般4月4日に公表されている。

この調査の対象は、1都2県の9つの私立大学(短期大学1を含む)に24年度に入学した新入生の保護者・父母となっている。有効回答数は3,910件だ。各学校名も挙げておこう。

  • 東京都6校
    ……工学院大学、中央大学、東京経済大学、明治大学、明治薬科大学、早稲田大学
  • 埼玉県1校
    ……獨協大学
  • 栃木県2校
    ……作新学院大学、作新学院大学女子短期大学部

以下は、学生が賃貸住宅に暮らしている場合の毎月の家賃(平均)の推移となる。保護者等から彼らに送られる「仕送り」の月額平均も添える。

(なお、ここでの仕送り額の平均は6月以降を計算したものとなる。入学直後の一時的な出費がかさむ時期を除くかたちとなっている)

年度 平均家賃 平均仕送り額
2015年度 61,200円 86,700円
(16~19年度・略)
2020年度 64,200円 82,400円
2021年度 66,700円 86,200円
2022年度 67,300円 88,600円
2023年度 69,700円 89,300円
2024年度 68,900円 88,500円

このとおり、支払われる家賃の額にあっては、23年度まで徐々に上がってきていたのが、24年度では息切れしたかのように下がっている。

また、仕送りの方も、近年上がってきていたのが、24年度においてはやはり下がった。

大学新入生を抱える各家庭における経済環境が、目下厳しさを増していることを窺わせるこれらの数字となっている。

なお、間違えてはいけないが、東京私大教連が公表している上記24年度の数字は、昨年行われたアンケートに基づくものだ(実施時期は5月から7月)。つまり、今年の新入生に関するデータではない。

そのうえで、当記事にもすでに示したとおり、現下の家賃上昇にあっては、昨年春頃から今年にかけ、おそらくは「加速」がついている。

よって、今年度の大学新入生とその保護者等に対しては、さらなる冷たい向かい風が吹いた、この春となっていることだろう。

―――以上、賃貸繁忙期を今年も終えたいま、上がり続けている家賃について、いくつかの数字をひろってみた。

紹介したアットホーム社、全宅連、東京私大教連の各資料については、下記のリンク先でさらに詳しく内容をご確認いただける。

アットホーム(株)全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向(25年3月)

全宅連 第37回・不動産市況DI調査

東京私大教連 私立大学新入生の家計負担調査 2024年度

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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この記事を書いた人

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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