4000円で始めて12件を運営中! 「MAO流Airbnb」の極意とは?
ウチコミ!タイムズ編集部
2016/07/22
きっかけは東京オリンピック
英語もできない、資金もない、不動産もなかったシングルマザーの鶴岡さん。自宅の寝室をゲストハウスにしたことに始まり、いまでは東京に9件、京都に3件の計12件を運営しています。ゲストに喜んでもらうことが何よりも嬉しいという鶴岡さんに、ゲストハウス運営の楽しさと「MAO流Airbnb成功術」についてお聞きしました。
——鶴岡さんが民泊に興味をもったきっかけからお聞かせいただけますか?
鶴岡 私が「民泊」に興味をもったのは、2013年9月のことでした。2020年の東京オリンピック開催が決まり、訪日外国人を自宅に泊めてあげたいと考えたんです。だって、オリンピックを前にホテルが足りなくなることは明らかでしたし、せっかく日本に来てくれたのに泊まる場所がなかったら大変だって思ったんです。
当時、中学生だった娘とふたりで「英語ができなくても大丈夫かな?」「空港にプラカード持って迎えにいく?」「一緒に観光したら楽しそうだね」なんて話ながら、どうやってゲストを見つけようかと考えていました。ホームページをつくっても見つけてもらえないだろうし、何かいい方法はないか、周りの人にも事あるごとに聞いていたんです。そんなときに教えてもらったのがAirbnbでした。ちょうど民泊に興味をもってから1年弱、2014年4月のことでした。
——Airbnbの存在を知って、最初はどんな印象をもたれたましたか?
鶴岡 「すごい!」と思いました。何がすごいって、集客もしてくれる、集金もしてくれる、保険もある、ありとあらゆるプラットフォームが整っているのに、手数料は宿泊料金の3%だけ。たった3%ですよ!
こんなこと普通のビジネスではあり得ないですよね。だから、本当のことをいうと、最初は、怪しいんじゃないか、後から何かを請求されるんじゃないかと思いました。そこで自分なりに調べてみたのですが、調べていくうちに、実際にAirbnbで部屋を貸している人のブログをいくつか見つけて、「じゃあ自分でもやってみよう!」と思ったんです。
そう決めたら即行動。すぐに部屋の準備をして、Airbnbに掲載しました。そうしたら、すぐに問い合わせが入って…。Airbnbのことを知ってから、4日後には初めてのゲストを自宅に迎えていましたね。ちなみに、初ゲストは新潟で語学留学をしていたアフリカの女の子でした。
「やってみてダメだったら止めればいいか」でスタート
鶴岡さんが運営するゲストハウスの一室。ベッドの上には”おもてなし”の花が置かれている
——すごい行動力ですね。不安はなかったのですか?
鶴岡 私は人が大好きなので、不安どころか、本当に楽しみでした。地方に住んでいる友達が泊まりに来る、親戚の人が泊まりに来るといった感覚です。日本人の感覚としては、知らない人を家に泊めるというのはハードルが高いと思いますが、海外から友達が来るって思えば楽しいじゃないですか。みなさん、むずかしく考えすぎです。
とにかくやってみてダメだったら止めればいいか、といった程度に考えていましたし、準備といえば、家のなかを掃除して寝室の私の荷物を娘の部屋に移動したことと、ベッドカバーのセットを買ったことくらいです。初期費用はベッドカバー代の4000円だけ。たったこれだけの手間で、ゲストが泊まりにきてくれたんです。
——民泊に興味をもっている人は多いと思いますが、鶴岡さんと同じように、まずは自宅で始めてみるというのがよさそうですね。
鶴岡 それがいいと思います。ただし、家族の問題はクリアしないといけませんね。私の知り合いで、Airbnbを始めた人のなかには、2カ月も3カ月もかけて家族を説得したという人もいます。ある女性は、旦那さんがなかなか「YES」と言ってくれなかったのですが、「収入の10%をお小遣いとして渡す」という条件を提示したところ、ようやく「YES」を引き出せたそうです。
必ずしもお小遣いを渡さなくても、たとえば家族で海外旅行に行くための費用にしようとか、ゲストを受け入れるのは月に何日までにしようとか、子どもたちも一緒に、目的や条件を家族で話し合って折り合いをつけていくことが必要なんだと思います。
それに、何よりもお子さんにとってはプラスだと思うんです。日本にいながら自分の家が世界中のいろいろな国に変わるわけですから。たとえば、お子さんがゲストとの交流を通して、海外に興味を持って本を読んだり、語学の勉強を始めたりといったことがあるかもしれません。事実、私の娘は英語がものすごく上達しましたし、日本の高校ではなく、カナダの高校に行くことを自分で決めて、この4月から留学しています。
不動産会社や大家さんをどう説得したのか?
この部屋も鶴岡さんの手にかかると、おしゃれで居心地のいい空間に
——説得といえば、Airbnbがまだ認知されていない当時、物件を借りるために不動産会社やオーナーさんを説得するのは大変だったのでは?
鶴岡 いえ、何の問題もありませんでした。当時は、Airbnbがほとんど知られていなかったので、いまのようにトラブルが起こるなどといったマイナスのイメージもなかったんです。それに、そもそもAirbnbがどういうものか、民泊がどういうものかを説明しようとしても、まったく理解してもらえませんでした。だから、理解してもらうのはあきらめて、「外国人の友達がたくさん泊まりにくるので、セカンドハウス的に部屋を借りたい」と伝えて、外国人入居者を受け入れている物件を紹介してもらったんです。
Airbnb用の物件は、普通の入居者だったら避けるような条件が悪い部屋でもいいんです。日当たりが悪くても、ユニットバスでも、管理が悪くても問題ありません。だから、「借り手のない部屋を紹介してください」というお願いもしてみました。
借り手のない物件で、不動産会社もオーナーさんも困っているので、敷金・礼金もなし、家賃も下げてくれて、フリーレンとまでつけてくれてと、至れり尽くせりで貸してもらえました。だって、借り手がいないんですから、お互いにWin-Winなわけです。もちろん、いまはAirbnbがこれだけ認知されて、状況はすっかり変わってしまっていますが。
2000組以上のゲストを受け入れて、トラブルはゼロ!
——Airbnbが認知されただけでなく、住民とのトラブルが多いなどマイナスのイメージが強くなってしまっていますね。
鶴岡 「トラブルが起こる」「騒音がすごい」「ゴミ捨てのマナーがなってない」といったバッドニュースばかりが流れてしまっています。でも、少なくとも私の部屋ではトラブルはまったくありません。これまでに2000組以上のゲストを受け入れていますが、トラブルらしいトラブルは起きたことがないんです。
もちろん、近所からクレームが入ったこともないですし、ゴミ捨てのマナーが問題になったこともありません。それどころか、私のところに来てくれるゲストは、半分以上の人が帰る前に部屋を掃除してくれるんですよ。
——トラブルのイメージとは真逆ですね。鶴岡さんの部屋だけが特別なのでしょうか?
鶴岡 ほかの方の部屋のことはわかりませんが、私はいいゲストとご縁があるんだと勝手に思っています。というのも、部屋のつくり方や説明文の書き方、部屋の写真の撮り方、それにメールのやり取りなど、ゲストとの接点はいろいろありますが、「ゲストに喜んでもらいたい」という気持ちは自然と伝わるものですよね。
最初にお話ししたように、私はとにかく人が好きで、ゲストに喜んでもらいたいというのが基本スタンスなので、それを相手も感じてくれているんじゃないかと思います。だって、英語がよくわからなくても、「日本を楽しんでもらいたいから、できるかぎり準備をして迎え入れるからね」という気持ちをもってやり取りしていれば、相手も部屋を汚したまま帰るなんてことはないですよね。なかには、掃除だけでなく、シーツの洗濯までしてくれる人もいるほどです。
京都のゲストにはおもてなしの気持ちをメールで伝える
——ゲストも、鶴岡さんの気持ちに応えてくれているようですね。京都にも部屋をお持ちですが、直接顔を合わせることがむずかしい京都の場合は、どうやってゲストをもてなしているのですか?
鶴岡 京都のゲストに関しては、メールのやり取りでおもてなしの気持ちを伝えています。たとえば、「今日はどこに行ったの?」「何が楽しかった?」「好きな場所はどこ?」といったメールを送るんです。
——すべてのゲストとやり取りするんですか? かなりの手間がかかるのでは?
鶴岡 さすがに一人ひとりに対して文面を考えていたら時間がいくらあっても足りないので、実は、こちらから送るメールについては、全部、定型文にしています。その定型文のなかから、1泊目はこのメール、2泊目はこのメールを送るというルールを決めているんです。
それから、ゲストにお気に入りの場所や旅の感想を教えてもらうための定型文もあります。「あなたのお気に入りを、次のゲストに案内してあげたいから教えてほしい」と頼めば、みんな喜んで教えてくれます。次のゲストに教えてあげるといっても、書いてもらったメールの文面をコピペするだけですから、本当にちょっとした手間だけでできてしまいます。でも、そのちょっとした手間をかけるだけで、「グレイト!」って喜んでくれるんですね。
——そのちょっとした手間をかけるかどうかが大切なんですね。
鶴岡 本当にちょっとした手間なんですが、私のようなことをしている人は少ないですよね。ゲストも本当に喜んでくれて、今日はこんなところに行ってきたよって教えてくれたり、写真を送ってくれたり。ときには「MAOもいまから来いよ!」なんていうメールが送られてくることもあります。「私は東京だから」って返事をすると、「Oh! そうだった」みたいな(笑)。
外国人ゲストを受け入れるというと、ちょっと身構えてしまうかもしれませんが、日本を選んで観光に来てくれたゲストを「おもてなししたい!」という気持ちと、ちょっとした運営のコツがあれば誰でもできます。英語もできない、資金もない、不動産もなかったシングルマザーの私でも、自宅の私の寝室をゲストハウスにしたことに始まり、いまでは東京に9件、京都に3件の計12件を運営しています。
ゲストに「ありがとう。MAOの部屋に泊まって楽しく過ごせたよ」って喜んでもらえることが何よりもうれしいんです。こんなに楽しみながらできるビジネスは、ほかにはありませんね!
後編は、7月25日(月)の公開予定です!
今回の「この人」は…
鶴岡真緒(つるおか・まお)さん
おもてなしbnb代表( http://www.omotenashibnb.com )
Airbnbアドバイザー
千葉県生まれ。シングルマザーとして、子育てと結婚相談所での仕事を両立させていた2014年4月、偶然、民泊の新しいスタイルAirbnbを知る。Airbnbのコンセプト「190カ国超の地元の家で、暮らすように旅をしよう」に共感し、自宅の1室をゲストハウスとするところからスタート。瞬く間に稼働率100%を達成する。独自のノウハウで築き上げた「MAO流おもてなし術」が話題を呼び、東京、京都などで複数のゲストハウスを運勢するに至る。現在もゲストハウスを運営しながら、稼働率を上げるセミナーや実践的な部屋づくりセミナーなどを通じて、Airbnb入門者にノウハウをアドバイスしている。
「知識ゼロからの民泊ビジネス がっちり成功術」
鶴岡真緒 著
2016年2月刊行
定価 本体 1,500円+税
四六判 並製 192ページ
ISBN 978-4-8284-1866-7
発売 ビジネス社( http://www.business-sha.co.jp/ )
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https://www.amazon.co.jp/dp/4828418660
この記事を書いた人
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