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⽇本⼀空き家率の⾼いエリアを⽣き抜く オーナー自らつくりだす"付加価値"(2/2ページ)

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家賃を⾼くする施策 集客⽅法は⾃分次第

築年数の経過によって、同じやり⽅のままでの⼊居付けは年々難しくなっていく。ADをつける、家賃を下げる、新たな設備を付ける、あるいは売却するなど、オーナーによって戦略は変わるが、空き家問題の解決という観点において最も理想的なのはどんな⽅法だろうか。

「銀⾏への返済もあり、『家賃を下げてこのままの募集⽅法でとりあえず家賃収⼊を得る』か、『追加の投資を覚悟して資産価値を上げ、家賃が⾼いまま賃貸経営をする』かの選択をする岐路に⽴たされました。そして私は、後者の戦略をとりました。家賃を下げて⼊居者募集をするのは、オーナーだけでなく、⼊居者、不動産会社にとってデメリットが多いと判断したためです。空き室率が⾼く借り⼿市場の⼭梨県において、⼊居者とオーナーの関係バランスをよく保つために、家賃は⾼いまま募集をし、利幅が⼤きい分を物件に還元することで、不動産会社も募集したくなる物件になり、かつ⼊居者のメリットになるという理想的なスパイラルに導くことができると思いました」(⻑⽥オーナー)

家賃を維持する、または⾼くした状態で⼊居率を確保できれば、その物件は“⽣きた物件”になる。家賃が⾼くてもいいから住みたいという⼈たちが集まり、空き家で問題視されている景観や衛⽣⾯、治安もよくなりやすい。オーナー、⼊居者、不動産会社、そしてその地域、全てにプラスに働くのだ。

では、築年数が経過した物件でも家賃を維持したまま、または⾼くして客付けに困らない物件にするにはどうすればいいのか。⻑⽥オーナーは2つの側⾯から施策を⾏っているという。

「これまでのリフォームから“リノベーション”へと舵を切り、かつ集客⽅法を⼤幅に⾒直すことにしたのです。リノベーションで徹底的に重視したのは、“⼊居者⽬線”での差別化を図ることでした。単に新しくリノベーションされたおしゃれな部屋では、数あるほかの物件に埋もれてしまい、さらに新築も競合物件となり、結局は家賃の価格競争に巻き込まれてしまいます。差別化によって、具体的に誰に向けてアピールする部屋にしていくのか、そこに対してこの部屋でどういう⾵に⽣活ができるかをいかに具体的にイメージさせられるかが勝負になります。

私が所有している物件はファミリー向けのもので、こうした物件での部屋の決定権は、多くの場合は⼥性が握っています。そのため、⼥性⽬線で考えた『おしゃべりしやすい空間』と『癒される空間』を両⽴できる、カフェ⾵の部屋づくりを意識して差別化をしています。築古物件のネックである、キッチンや浴室、洗⾯台などの⽔回りも、新しくするだけでなく、素材やデザインにこだわり、コンセプトに沿った演出をしていくのです。費⽤は1部屋200万円程度と通常のリノベーションよりもかかりますが、同じ条件の物件より1万円以上⾼い家賃ですぐに成約に⾄るので、⼗分ペイできます。 

また、集客の⼤きな窓⼝であるポータルサイトは、お部屋を探している⽅が希望条件を⼊⼒して、気になる物件情報を絞り込むため、1つでも条件から外れるお部屋は成約候補から外れてしまいます。築古で家賃が⾼く、和室がある私の物件は、明らかに顧客のニーズから外れており、ポータルサイトからの反響が激減していました。築年数は変えようがなく、かつ家賃を下げずに集客をするために、私は独⾃のホームページとInstagram、Twitterのアカウントを開設しました。そして定期的な情報発信を続けた結果、今では成約の約8割がこれらの独⾃ルートで集客することができるようになりました。⾃然検索でホームページを閲覧している⼈は、ポータルサイトと⽐べて物件ページの閲覧時間が⻑く、より⾼い集客効果が⾒込めます。SNS経由の場合は、⾃然検索と⽐べて圧倒的にホームページへのアクセス率が⾼いのが特徴です。

これらの独⾃の発信は、開始当初こそSEO的に不利な状態が続くものの、⼊居者のニーズを調査し、そこに直接届けることを意識することで確実に効果を伸ばすことができます。インターネットで『⼭梨 賃貸』と検索すると、関連キーワードに『おしゃれ』や『リノベーション』といった⽂字を⾒ることができます。こういったところからも⼊居者のニーズを把握し、SNSを活⽤する際は、『#おしゃれ賃貸』や『#⼭梨』といったハッシュタグをつけて発信しています。お部屋を探している⼈にダイレクトに情報が届く⼯夫です。

そしてきれいな写真が重要で、IKEAの家具などでホームステージングして視覚的な⼯夫もします。また、『#IKEA』のハッシュタグは活発に閲覧されていることが多いので、つけておくと閲覧数が伸びることが多いです。お部屋を探す⽬的でSNSを閲覧していない場合でも、こういったハッシュタグによって⾒つけてもらうことができます」(⻑⽥オーナー)



素材やデザインにもこだわり、女性目線を意識した空間

“⾃ら動く”がカギ 安⼼感が付加価値に

「さらに差別化として意識しているのは、“オーナー⾃らが動くことによる付加価値”です。私は平⽇に毎⽇物件に出向き、建物の掃除をしたり、ごみ置き場の清掃を⾏ったり、雪かきをしたりしています。山梨県では、こうしたことは⼊居者がやるケースがほとんどですが、オーナーがやる姿をSNSで動画で発信することによって、『この物件のオーナーはここまでやってくれる』という印象を与えることができます。実際、雪かきを⾏っている際に急遽内⾒の申し⼊れがあり、そのまま成約に⾄ったこともあります。そのときの⼊居の決め⼿は、『オーナーが雪かきをしていたから』とおっしゃっていました。オーナーが率先して対応している安⼼感が伝わることによって、その安⼼感こそが価値となり、⾼い家賃でも⼊居が決まる要因になるのです」(⻑⽥オーナー)

こうした施策をすべてのオーナーが⾏うことは難しいが、⻑⽥オーナーは「少しでもいいから⾃分で動いてみることが⼤切」だと語る。こうした⼀つ⼀つの⾏動が、オーナーにとって空き家率が⾼いエリアでも家賃を維持したまま賃貸経営を⽣き抜くことにつながり、空き家問題を解決する⽷⼝になるだろう。

また、⻑⽥オーナーは今までの経験を⽣かし「賃貸リノベーション集客コンサルタント」としても活動している。お困りごとを抱えているオーナーは⼀度相談してみてはどうだろうか。

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この記事を書いた人

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