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一戸建てを選ぶ人にとって譲れない「価値」とは

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文/朝倉継道 イメージ/©︎Taiga・123RF

世の中の皆さんそれぞれが思う、住まい選びのポイントを尋ねた調査・アンケートは数々あるが、尋ね方や、調査対象をどう設定するかによって、結果は随分と違ってくることがある。

この4月(2021)に、「レタスクラブ」(株式会社KADOKAWA)が、

「一戸建て? マンション? 都心? 地方? コロナ禍を経て528人の主婦が選んだ『理想の住まい』のリアル!」

と、題して、アンケート結果をWeb上で公表している。21年2月に行われた、23歳~50歳の子育て中の女性を対象とした調査の結果だ。

・男性はおらず、女性のみ
・51歳以上の方もいらっしゃらない
・子育て中

そうした限られた中での「コロナ禍を経た、理想の住まい」……。ただし、これらの皆さんといえば、「家庭内で、住宅選びの決定権を握っている」と、よくいわれる方々とほぼ重なる。どんな結果が出ているのか、とても興味深いところだ。

まずは、「家を選ぶときに大切にしたいポイントをお答えください(3つまで)」との質問に対する答え。

1位「治安が良い」…51.7%
2位「陽当たりが良い」…48.5%
3位「買い物環境が整っている」…45.5%
4位「駅から近い」…26.1%
5位「コストが安い」…21.6%
6位「十分な広さがある」…19.7%
7位「教育環境が良い」…17.4%
8位「学校が近い」…13.3%
9位「実家が近い」…12.3%
10位「防犯性が高い」…11.2%
11位「庭がある」…9.1%
12位「職場が近い」…8.9%
13位「防音性が高い」…4.5%
14位「公園が近い」…1.9%
15位「DIYが出来る」…0.6%
番外「その他」…2.7%

ご覧のとおり、「治安が良い(51.7%)」が、唯一5割を超える支持を得ての1位だ。これに「陽当たりが良い(48.5%)」、「買い物環境が整っている(45.5%)」が続く。いずれも支持率4割超である。

以上が、4位以下をかなり引き離してのTOP3となっている。なお、今回のセグメント(調査対象者のくくり)ならではの特徴が、ここですでに出ていると見る方も多いことだろう。次に、この質問だ。

「今後住みたいと思う理想の住宅スタイルをお答えください」

「持家一戸建て」…69.9%
「持家マンション」…18.8%
「賃貸マンション・アパート」…8.1%
「賃貸一戸建て」…2.3%
「その他」…0.9%

意外にも「賃貸マンション・アパート」が健闘している。われわれ賃貸住宅オーナーの側としてはよい気分だが、それでも、とりあえず圧倒的なのは、約7割におよぶ「持家一戸建て」である。

すなわち、先にご紹介した「家を選ぶときに大切にしたいポイント」については、多くが、一戸建てマイホームを理想としている皆さんの意見、ということになるだろう。

そこで、別のアンケートを引っ張り出してみよう。

株式会社リクルート住まいカンパニー(21年4月1日より株式会社リクルート)が、この3月(21)に公表している「2020年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査」だ。

20年1月~12月の間に、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県の一部)の新築分譲一戸建てを購入・契約された世帯が対象となっている調査だが、こちらは50代以上の方もいくらか混じっているほか、質問に答えられている方は多くがおそらく世帯主である。つまり男性だ。

そのうえで、この調査結果のなかの「物件を検討するうえで重視した項目」部分を見てみよう。

すると、1位は圧倒的に「価格」である。複数回答での割合は89.0%となっている。当たり前ともいえるが、マイホーム選びについては、皆さん、まずは「価格ありき」の状況を示している。

しかしながら、さきほどのレタスクラブさんの調査ではそうではなかった。価格に相当する「コストが安い」は、TOP3からかなり引き離されての5位だった。その理由は…?

「コスト」という表現が、「価格」という直截な言葉とは違ったニュアンスで回答者の皆さんに伝わっているのか。あるいは、両者においては、実際に価格に対する意識の違いが存在するのか?

一方、レタスクラブさんの方での1位、「治安が良い」はどうだろう。リクルート住まいカンパニーさんの方で、これに相当する項目を探すと、「周辺環境」になる。見ると、順位はあまり振るわず8位である。36.8%の支持率だ。

こちらも、「治安」と直に示されれば、パーセンテージはもっと上がっていたのだろうか? あるいはそうでもないのか?

そこで、注目したいのは「日あたり」だ。いずれの結果でも、申し合わせたように2位をゲットしている。

(レタスクラブ)
「陽当たりが良い」…48.5%

(リクルート住まいカンパニー)
「日当たり(周辺の建物状況)」…58.4%

これを見ると、一戸建てを持ち家として選ぶ皆さんにおいて、日あたりが良いことは、とりわけ重視される価値であることがよく分かる。さらに、駅からの距離については……

(レタスクラブ)
「駅から近い」…26.1%(4位)

(リクルート住まいカンパニー)
「最寄り駅からの時間」…56.6%(3位)

パーセンテージに開きはあるが、どちらも上位といってよいだろう。ただし、レタスクラブさんの方では、「駅から近い」は、さきほど掲げたとおり、3位「買い物環境が整っている(45.5%)」に完全に負けている。

一方、リクルート住まいカンパニーさんの方では、これに相当する10位「生活環境(31.3%)」を大きく引き離しての上位にいる。ここにもはっきりと、両調査のセグメントの違いが表れているようだ。

以上、住宅に限らず、世の中にはさまざまな調査結果、アンケート結果が溢れているが、

大規模で緻密なもの(今回の住まいカンパニーさんのものはこれにあたる)
小規模でシンプルなもの(レタスクラブさんのものはこちら)

対象が広いもの(住まいカンパニーさん)
対象を区切ったもの(レタスクラブさん)

などなど、寄せ合い、突き合わせてみることは、とても面白く、ある意味それこそが“真”に迫るコツである。そこでいえば、今回の突き合わせでは、一戸建て住宅を求めるユーザーにおける、

・日あたりに価値をおく想いがかなりの程度確固たるものであること
・価格の追求は、個々人によって(同一世帯内でも)意外に揺れる条件でありそうなこと

2つの「真」が、残るいくつかの疑問とともに拾えたといってよさそうだ。

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この記事を書いた人

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