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賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

360°経営戦略 事前の調査や研究、論理的に考えることが事業を順調に継続させる

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⼤分県在住の久留浩⼀郎さんは、⼤学でバイオ、⼤学院で海洋⽣態学の研究をした後、⼤分県庁に就職。しかし、⼊庁から5年で退職し、現在は約230⼾の賃貸物件を所有している賃貸住宅オーナーである。さらに太陽光発電事業やコインランドリー事業なども⼿掛け、宅地建物取引⼠やファイナンシャル・プランニング技能⼠、クリーニング師など多様な資格も取得している。豊富な知識や経験を持つ久留さんに賃貸経営の⼤きな失敗はない。事業を始めるときの⼼構え、経営を順調に継続するための考え⽅などを聞く。(取材・⽂/財部 寛⼦)


エスペランサグループ 久留 浩⼀郎(ひさどめ こういちろう)/1977年、福岡県福岡市⽣まれ。⼤学時代は理⼯学部⽣物⼯学科でバイオ関係の研究、⼤学院時代は海洋⽣態学の研究を⾏う。⼤学院修了後は、⼤分県庁に⼊庁。2009年12⽉⼤分県庁を退職、合同会社エスペランサアセットマネジメントパートナーズ設⽴。現在、7つの法⼈の代表、おおいた⼤家の会代表、太陽光発電ムラ九州・沖縄⽀部⻑を務める。宅地建物取引⼠、CPM(⽶国公認不動産経営管理⼠)、不動産実務検定1級、住宅ローンアドバイザー、ファイナンシャル・プランニング技能⼠2級、⽇商簿記2級、クリーニング師、太陽光発電アドバイザーなど多くの資格を持つ。趣味は旅⾏で、これまでの訪問国数は50カ国以上にのぼる。

自ら意思決定できる それが賃貸経営の魅力

——久留さんが賃貸経営をスタートしたときは公務員だったそうですね。賃貸経営を始めようと思ったきっかけがあったのでしょうか。

公務員といえども、このまま定年まで働いていけるのだろうかという不安がありました。私が就職した頃は、地⽅⾃治体の財政状況がいいとはいえず、道州制が騒がれていた時期でもありました。県の組織がずっと続いていくのか、疑問に感じていたんです。

そこで、株を購⼊してみたり、ファイナンシャル・プランナーや簿記などの資格をとったりと、⾃分⾃⾝でいろいろな勉強を始めていました。そのうちのひとつに不動産があったという感じです。

——実際に、不動産を購⼊したのはいつごろですか。

2007年、29歳のときです。⼤分市内の築14年のRC造、ファミリー向け6⼾の物件を購⼊しました。

——初めての賃貸経営はどうでしたか。

購⼊するときにはいい物件だと思ったのですが、実際にはいくつか問題もありました。まず、隣にゴミ屋敷のような建物があったこと。時期によってはエントランスに落ち葉が⼤量にたまってしまうという問題もありました。さらに、駐⾞場が6台分しかない。この物件が駅から遠いことは分かっていましたが、夫婦2⼈の⼊居だったとしても、それぞれに1 台ずつ⾞を所有する⼈が多いような⽴地だったのです。それから、ファミリー向けのわりに⼩学校から離れていたこともデメリットでした。そのため、⼊居付けに関しては苦労したことを覚えています。

——そういった問題をどのように解決していきましたか。

最初は、ゴミ屋敷との間にフェンスを建てたり、落ち葉がたまらないようエントランスに扉を作ったり、近隣で駐⾞場を探したりと、外側の問題解決を図ろうとしていました。しかし、管理会社とも相談するうちに、⼊居者のターゲットを変更した⽅がいいのではないかという案にたどり着いたのです。そこで2年⽬くらいからは、ターゲットを単⾝者にして3部屋ある間取りを1LDKにリフォームしていき、クロスや床も単⾝者に好まれるようなものに変えていきました。

——ターゲットを変更したことで、⼊居付けはうまくいきましたか。

5年ほど前に、満室のまま購⼊⾦額を上回る額で売却することができたのです。この1棟⽬の経営によって、不動産についてのさまざまな勉強ができましたし、この事業を「おもしろい」と感じることができました。


おしゃれな外観が目を引く、久留さんが所有している物件

——どういった点におもしろさを感じたのでしょうか。

組織の中で働いていると、⾃分の意思だけで動くことはできませんよね。決定・⾏動までに、いくつもの過程を踏まなければなりません。しかし、賃貸経営は⾃分⾃⾝で考えて⾏動できる。そして、その結果をある程度早く⾒ることができます。そういった点におもしろさを感じました。

——その後も物件を購⼊していったと思いますが、1棟⽬の経験を⽣かすことができましたか。

08年に2棟⽬を購⼊しました。国⽴⼤学近くの学⽣向けの物件です。

2棟⽬に関しても、リスクがなかったわけではありません。⼤学⽣向けの物件なので、春の⼊居シーズンを逃すと1年間空室になる可能性が⾼いこと、これから少⼦化が進んで⼤学⽣の数が減るかもしれないといったこともリスクとして捉えていました。しかし、その物件をもともと所有していた投資会社の経営が悪化して安く売りに出されていたこともあり、リスクをしっかり把握したうえで購⼊しても⼤丈夫だろうと判断しました。おかげさまで経営も順調でした。



「晴れの日の太陽光、雨の日のコインランドリー」久留さんの行う全天候型の経営方法

天候も味⽅に 複数事業を展開

——そんななか、公務員はいつごろ退職したのですか。

09年にさらに2棟購⼊して、その年の12⽉に退職しました。

——初めての不動産事業にしてはかなり順調なスタートのようですが、なにか秘訣はあったのでしょうか。

賃貸経営に限ったことではありませんが、なにかを始めるとき、私のなかでまず⽬的を設定します。そして、そこに向かうために仮説を⽴てたり⽅法を考えたりするのです。物事を論理的に考えるタイプなのだと思いますが、それで⼤きな失敗を回避できているのかもしれません。

——そもそも学⽣時代に研究を⾏い、県庁でも研究の要素があるお仕事だったそうですね。「研究する」という感覚が事業に⽣かされているのかもしれませんね。また、賃貸経営だけでなく、太陽光発電事業、コインランドリー事業も⼿掛けています。これらの事業も順調に進んでいるようですが、どのような事前調査や前準備をしましたか。

太陽光発電は12年、コインランドリーは14年に始めました。太陽光については収⽀を計算したり、事業としてのおもしろさを感じたりしながらかたちを作っていきました。ただ、晴れているときには売上が上がるのですが、⾬や曇りの⽇が続くと厳しくなります。そんなとき、⾃分の家の前にあったコインランドリーに⾬の⽇にお客さんが多く来ることに気付いたんです。それで、この事業についてインターネットなどで調べることはもちろん、実際に、そのコインランドリーにどのくらいのお客さんが来ているのか、1週間くらいカウンターを持って調査してみました。お客さんの⼈数や客単価などを計算して、やり⽅によっては事業として成り⽴つだろうという結果にたどりついたんです。

——研究の結果、晴れの⽇の太陽光、⾬の⽇のコインランドリー、全天候型の経営が成り⽴っているんですね。ほかにも事業を⼿掛けており、たくさんの資格もお持ちのようですね。

事業としては、⺠泊や貸会議室などもやっています。資格は随時いろいろ取得していますが、これは事業を⼿掛けるにあたっての勉強でもあり、また⾦融機関などへのアピールの役割もあるのです。やはり、⾦融機関からの融資を受けるためには、知識をしっかり持ち、⾃分⾃⾝できちんと説明ができ信頼されることが重要だと考えています。

管理会社や⼤家仲間とのつながりも⼤切

——管理会社とはどのようなおつき合いをしていますか。

私はすべての物件を管理会社に任せています。⼤分の不動産会社では管理と客付けがセットになっている部分もありますし、何かトラブルがあったときに、やはり管理会社は必要です。私の場合、お願いしている管理会社のスタッフでとても信頼している担当者が1⼈います。彼に仕事をお願いしたり相談したりすることで作業がスムーズに進むため助かっています。こういった信頼できる担当者を⾒つけることも賃貸経営をうまく進めるポイントのひとつかもしれません。

——管理会社を選ぶとき、あるいはつき合っていくために⼤切なことはありますか。

管理会社もそれぞれに得意・不得意なことがあると思います。ファミリー向けの物件に強い、学⽣向けの物件に強い、法⼈向けの物件に強い、あるいはどこのエリアに強いなど。そういった点を⾒極めて選ぶこともひとつの⽅法ではないでしょうか。

また、管理会社に任せっきりにしたり、逆に⾃分の意⾒ばかりを押し付けたりするのではなく、⾃分の考えや⽅法をしっかり持ちながらも、管理会社の意⾒も聞き⼊れることは⼤切だと思います。

——久留さんは「おおいた⼤家の会」も主宰されています。⼤家同⼠のつながりは重要でしょうか。

⼤家同⼠の情報交換は必要だと思います。ちょっとした集まりや会話のなかで、事業の流れが⼤きく変わることもあるんです。

私が購⼊した2棟⽬の物件の「経営が悪化している会社が安く売っている」という情報は、まさにほかの⼤家さんから聞いたものでした。その⼤家さんに会っていなかったら、当然その物件は購⼊できていませんし、いまの⾃分の事業も違うかたちになっていたかもしれません。

楽しい事業の継続で社会の役に⽴ちたい

——賃貸経営のみならず、さまざまな事業についてきちんと研究されて、順調に進めている久留さんですが、最後に今後の展開について教えてください。

私は、物件数や家賃収⼊を増やしたいというような⽬的を持っているのではなく、ただ、⾃分がいいと思ったことや好きなことを続けていけたらいいなと考えています。

楽しく事業を継続していくことで間接的に社会のために役⽴つのではないか、そんなふうに考えています。

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この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

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