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実は…

入居者さんは「コストは上乗せじゃなく、家賃にコミにして!」と思っている?

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イメージ/123RF

「こんな設備を導入すれば家賃を1万円上げられる!」と、聞けば、「1万円も?そんなうまい話がそうそうあるもんか」賃貸オーナーのほとんどが、かなりのマユツバで耳を傾けるはずです。

なぜなのでしょうか?

実際のところ、賃貸住宅への新たな設備の導入やリフォームといったものは、家賃を上げる結果にはさほど結びつきません。(フルリノベーションのような、物件を生まれ変わらせるケースは別です)

そのことを経験豊富なオーナーさんほど、実はよくご存知だからです。

では、何に結びついているのか?

答えは、家賃の維持です。もしくは、下落幅の縮小です。

すなわち、設備の導入やリフォームは、刻々経年劣化することで進行していく家賃の下落を食い止めたり、緩和したりすることに主に貢献しています。

「本来であれば5千円は下がっていたはずの家賃。これを2千円の下落に留めることで、ひそかに3千円分の収入を生んでくれている」

実際の効果は、そんなところに生じているというわけです。さらには、入居者の維持です。空室対策です。

設備の導入やリフォームが早期の空室解消につながれば、それはすなわち、何もしなければ逃していたであろう収入を逃さずに済んだということです。

「リフォームしたけど家賃は上がらなかった」
「温水洗浄便座に換えたけれど結局家賃は下がった」

よく、そんな風に嘆かれるオーナーさんがいらっしゃいますが、本当はがっかりするのではなく、家賃の維持や入居者の確保が出来たということで、ホッと胸をなで下ろすべきなのかもしれません。

すなわち、以上のようなことについて、ご経験等から身に染みて分かっている多くのオーナーさんにとってみれば、「こんな設備を導入すれば家賃を1万円上げられる!」は、ほとんどマユツバということにもなるわけです。

そのうえで、ひとつの調査結果をご紹介しましょう。投資用マンションの分譲や管理を行う株式会社クレアスライフが、7月に公表したものです。

「賃貸マンションにあってうれしい設備は『無料WiFi』がダントツ!? ~都心の賃貸ワンルームマンションに住む142人にアンケート調査~」と、題したリリースです。

こんな設問があります。

「今の家賃が1万円高くてもいいと思うマンションの設備は何ですか?」

回答はパーセンテージやグラフではなく、皆さんの声をそのまま並べるかたちで紹介されています。

その中に注目したいものがいくつかあります。こんな回答です。

・家電付きだったら
・家具付きの場合
・備え付けの洗濯機や家電があれば
・家具家電つきの場合

さらには、

・駐輪場がタダの場合
・無料WiFiなど必要経費が含まれていれば
・WiFiが無料であれば

いかがでしょうか。

これらに共通する特徴に、すぐに気づかれた方も多いことでしょう。その特徴とは、ひとことでいえば、コストの肩代わりです。家具や家電への出費は、いわゆる一時出費です。イニシャルコストとよばれるものです。

一方、駐輪場やWiFiへの出費は、それを利用している間はつねに負担が続くものです。すなわちランニングコストです。

いずれにしても、回答者は、家賃以外にかかる生活上のコストを嫌っているのです。賃貸契約のついでにこれらがオーナーに肩代わりされるかたちになっていれば、「それはとてもハッピー」と、感じているのだということです。

さらには、そのハッピーへの対価として、彼らは、「家賃が上がるかたちで月々1万円を払ってもよい」と表明しています。

もちろん、軽い気持ちでの回答だったのだろうとは思いますが、それにしても1万円という数字は大胆ですね!

それだけ払うならば、WiFiは自分で契約したほうがずっと得ですし、家具や家電も、ある程度高額なものが提供されるのでなければ、さほど時をまたずして支払いが原価を超えてしまう場合がほとんどでしょう。

それでも、彼らが上記のような意志を示してくれている点に、われわれはぜひ注目すべきでしょう。このことは、これからの賃貸経営にとって、とてもよいヒントとなっていくのかもしれません。

すなわち、こうした意志については、「コストがインクルーシブされたサービス」を彼らが求めているのだと解釈することができます。

コストがインクルーシブされたサービスとは、つまり「コミコミ」のかたちということです。

定額代金の中に多種類のサービスが含まれていて、それがわかりやすく1個の値段に収まっているかたちです。リゾートホテルなどによく見られます。さらには、サブスクリプション方式を求めるニーズにも近いといえるでしょう。

サブスクリプション方式とは、いわゆる定額課金・利用し放題型のサービスをいいます。「WiFi料金は別個に取らないでほしい。家賃に含めてもいいから」と、いうのは、まさにサブスクリプションとインクルーシブの融合です。

そこで考えると、現在の賃貸住宅においては、家賃以外のコストの上乗せが実に多様化しています。

昔から存在する礼金、敷金、管理・共益費のほか、保険料、保証料(家賃債務)、駆けつけサービス加入料、鍵交換代、除菌クリーニング費用等々…、足し合わせていくと、驚くほどの額になっていることも少なくありません。

しかもこれらは、消費者である入居者さんにとって、おそらくはストレス以外の何ものでもないはずです。


そこで、こうなっていたらどうでしょうか。

礼金、敷金、管理・共益費 無料
保険料 無料
保証料 無料
駆けつけサービス加入料 無料
鍵交換代 無料
除菌費用 無料
家具・家電付き
WiFi 無料

ただし、家賃は相場より若干高くなっている…。

それでもやはり、「家賃自体が安くなければ注目されない。ネットの検索にもかからない」といった声は挙がりそうです。

ですが、住宅の次に出費の高額な「クルマ」の場合、現在、状況がやや動いています。国内個人向けカーリース市場が、年々右肩上がりに成長しているのです。コストがコミコミに収まった、まさにインクルーシブなわかりやすいサービスです。

すると、賃貸市場にももしかすると…? そうした波が訪れる日が、いつかやって来るのかもしれませんね。

(文/朝倉継道 参照元/株式会社クレアスライフ 画像/123RF))

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この記事を書いた人

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