空家の転用の可能性
川久保文佳
2019/01/08
最近、空きビルや空き家、空きアパート、空きホテル、空き旅館などの視察が増えてきています。活用できそうな建物も数多くありますが、取り壊さなくてはいけない危険性を伴う建物も増えてきています。その中でも住宅地に点在する空き家についての転用の可能性について、検証をはじめています。
個人として問題になるのは財産として保有していても、放置しているだけでは、固定資産税の支払いや住宅を維持管理する費用なども負担になってくることです。また、こうした物件は雑草等の放置などによる火災や周囲の環境を悪化させる可能性もあり、定期的な伐採や住宅設備のメンテナンスも必要です。これらの費用は年間、数十万円に及ぶこともあり、子ども世代への空き家相続については、家計への負担もかなり大きくなっていきます。
対策として、遊休資産を活用が有効な資産として早めに転用することです。
住宅の活用方法として①地域コミュニティとしての活用、②住宅宿泊事業法による活用、③シェアハウス(留学生向け、障害のある方、高齢者の方)などが考えられます。こうした転用をすることで、遊休資産、が利益をもたらす資産になります。そして、負担だった不動産の赤字が解消されて、個人の家計を安定化させることにもつながります。
地方都市にある空き家について
こうした空き家の中でも、地方都市における空き家については、借り手がいないなど、深刻な問題になりつつあります。
現在も地方都市から都心への人口の流入が続いています。2017 年の東京圏の人口は 3643 万9000人となり、全人口の約3割が集中しています。東京圏への転入超過数の大半 は若年層であり、2017 年は 15~19 歳(2万7000人)と 20~29 歳(9万1000人)を 合わせて 11 万人を超える転入超過となっており、首都圏への企業流入や人口流入は歯止めがきかない状態になってきているようです。
また、少子高齢化も7年連続の減少で、65 歳以上の高齢者人口は、 3515 万2000人、総人口に占める割合(高齢化率)は 27.7%と最高を記録し、我が 国の高齢化が進んでいることはわかっていても、こうした数字を見ると世界的にも空前の速度と規模で進行している現実を改めて感じさせます。
政府も対策として、2014年、地域創生のために「まち・ひと・しごと創生法」を施行さました。一応は総合的な対策が行っているものの、いずれ、個人としてもいつかは相続をしなくてならない不動産資産を早めに活用する方法を探っておく必要があります。
※「まち・ひと・しごと創生法」とは少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域 で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生に関する施策を 総合的かつ計画的に実施する、というもの。
様々なシェアハウス
空いている住宅について、シェアハウス活用について、留学生向け、障害のある方、高齢者の方などの利用希望のお話を頂くことが増えてきました。一人では賃料の負担が大きい戸建て住宅も共同生活の場として何人かで分割して負担をして活用したいというものです。
1) 外国人を対象にしたシェアハウス
特に2019年は、新たな残留資格が創設されたことによって、海外から日本へ向けての就業希望者が増えることが予測されます。特に政策として、「地域における新たな担い手として、外国人材のさらなる活躍が期待されること から、その能力を最大限に発揮し、地域における担い手として定着できるよう 地方における外国人材の受入れを推進する。」としているので、地方都市における留学生や外国人就労者向け住宅へも注視していくことが大切です。
下宿としての申請を行い、一か月以上で貸し出すことも可能です。
2)障害のある方向けの住宅
何人かの方がリーダーや管理者と一緒に住める住宅をさがしているというもので、障害が軽度の方も多く、できるだけ自立したいという思いで探しているようです。日中は勤務先へ向かい、夜は共同生活をリーダーさんや管理者とともに行うということで募集されるケースも多いようです。
3)高齢者向け介護向けシェアハウス
一人暮らしの高齢者が共同して暮らすための住宅の需要も多く、ひとりで不安を抱える高齢者が共同の住まいを求めるケースも多くなってきていますが、65歳以上で新たに賃貸住宅への契約の壁が高く、こういった住宅の提供者も求められています。床面をフラットにするなど、リノベーションを加えて、提供することも増えています。
4)同じ興味のあるもの同士が集まるシェアハウス
近年、暮らし方の変化とともに、同じ趣味や興味を持った人と共同で暮らしたいというニーズも増えてきています。ある面白い取り組みで受け入れられているものに「リバ邸」があります。現在の駆け込み寺シェアハウスということで、日本になくなってきている自分の居場所を全国で作ろうという取り組みで始められたもので、世の中の枠組みや空気に苦しくなった人が集まる場所として愛されています。全国から海外へも広がっています。
この記事を書いた人
一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事
一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。