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物件エリアをしぼってママチャリ移動 地元を生かした賃貸経営で利回り14.1%を実現

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撮影/吉田 達史(Photo Current 66)

自宅のある東京・城東エリアに9棟の物件を所有する小林ヒロシさん。通称「ママチャリ大家」というだけあって、ママチャリで物件や不動産会社を回る。さらに、すべて自主管理であることも小林さんの賃貸経営の大きな特徴だ。サラリーマン大家からスタートした不動産経営だが、現在、14.1%の利回りを実現している。コンパクトにも見える経営で、大きな利益を得る小林さんの賃貸経営の極意を探る。(取材/安本 夏未・文/財部 寛子)

サラリーマンから9棟の専業大家へ

───小林さんは下町の城東エリアに9棟の物件をお持ちです。サラリーマン大家さんから不動産経営を始めたそうですね。

私はもともと、海外取引メインの商社、外資系マーケティング、ライセンス会社などでサラリーマンをしていました。しかし、サラリーマンでいる限り生殺与奪の権を会社に握られている、ひしひしと不安を感じていました。そこで、リスクはあっても、少しずつ自分で道を切り開いていける人生の方がいいのではないかと考えたんです。

───それで不動産経営を始めたのですね。

もちろん、借金をすることにも怖さはありました。しかし、トライアンドエラーを繰り返しながら1棟ずつやっていけばなんとかなるのではないかと、怖々ではありますが不動産経営をスタートしました。

───現在は不動産経営を専業とされています。どのようなことがきっかけで専業にしたのですか。

最初はサラリーマンと不動産経営を並行してやっていたものの、絶対に会社は辞めないと思っていました。しかし、不動産経営を続けるうちに、不動産での収入がサラリーマンの収入を超えるようになっていったんです。サラリーマンの2倍もの収入を稼げるようになってくると、サラリーマンの時間がもったいなく感じるようになってきました。と同時に、会社が日本から撤退したこともあり、不動産経営を専業にすることにしました。

───どのような物件を購入してこられましたか。

最初に物件を購入したのは2004年で、新築の賃貸併用住宅でした。その後は中古物件を購入していきました。最初に購入した中古物件は、6室が入る軽量鉄骨2階建て、駐車場3 台分付きの物件です。その物件を購入した理由は、最寄り駅から徒歩5分で東南角地の公道に面しており、土地値がつく場所だったからです。建物が朽ち果てたとしても、十分に売却できる物件だと見立てました。


初めて購入した中古物件

物件購入の条件は土地資産性と収益性

───物件を購入する際、どのような点を重視していますか。

私は、不動産経営を始めたときから「負けない物件を買う」ことをモットーにしています。つまり、土地資産性があり、なおかつ収益性もある物件。この2つを兼ね備えた物件を妥協しないで見つけてきました。

───土地資産性と収益性とは、具体的にどういったことになりますか。

私が不動産会社によく要望する条件なのですが、私の自宅から10km圏内、利回り8%以上、所有権があるものです。ちなみに、不動産会社には、融資を受けている銀行名、現金で即決できる額なども伝えることで、条件に合った物件を紹介してもらいやすくしています。

───とはいえ、それらを兼ね備えた物件を探すことは簡単ではないように思います。

正直、めちゃくちゃ大変です。しかし、しっかりと自分で決めた基準を持っていると、自分自身にコミットできるんです。紹介されたさまざまな物件をふるいにかけ、残された物件だけを買えばいい。自分軸で買えばいいだけですから、楽といえば楽なんです。

───物件はどこで見つけていますか。

不動産のポータルサイトはよく見ています。物件を紹介されたり購入したりしているうちに、不動産会社の方とも仲良くなり、ポータルサイトに掲載されていない物件を紹介してもらえることもあります。

エリアをしぼって効率的に自主管理

───物件を自宅のある城東エリアにしぼっていますが、エリアをしぼることのメリットにどのようなことが挙げられますか。

一番大きなメリットが、地元の情報が早く入ってくることです。商業施設やスーパー、コンビニエンスストア、スポーツクラブ、道路など、どこになにが新しくできるのかといった情報を入手しやすいんです。また、リフォームや客付けも地元の会社にお願いしているので、作業を集約できるというメリットがあります。銀行も地元で、「近くを通ったので寄りました~」といった感じでおつき合いができます。あちこち遠くまで行かずに、まさにママチャリで移動できる範囲で済ませられるのは、私自身も楽に動けますし、メリットでもあると思います。

───また、小林さんは9棟すべてを自主管理されているということですが、その理由を教えてください。

最初の1棟目が6部屋あったのですが、「とりあえず自分でやってみよう、ダメなら管理会社に頼めばいいや」という気持ちで自主管理を始めました。2棟目、3棟目と買っていくうちに、「まだできる、まだできる」と現在に至っているという状況です。

───自主管理のメリットは感じていますか。

まず、コストを削減できることは大きなメリットです。しかし、それよりも主体的に動けることが自主管理の良さだと思います。たとえば、空室になったときには、すぐに募集をかけることができます。各不動産会社にも空室が出そうになったらすぐにメールを送信して、情報を早く流しています。その結果、リフォーム中の申し込みや先行契約などがよくあるんです。このように自分自身で空室期間を短くできることは自主管理の魅力だと思います。

───逆に、自主管理で苦労した経験はありますか。

不動産経営を始めたばかりの頃は知識があまりなかったので、家賃の保証会社と契約していませんでした。そんな状況で入居者に夜逃げされたことがあり、かなり大変な思いをしましたね。

あとは、さまざまなことをすべて自分で判断しなければならない難しさもあります。よくあることでいえば、リフォームするときに「この壁紙の汚れは拭くだけで落ちるんじゃないか、それとも張り替えた方がいいのか」という選択。修繕をどの程度するべきかについては、毎回、悩む点です。管理会社にお願いすれば悩むことはなくなるかもしれませんが、その都度、壁紙も総張り替えで余計なおカネを使うことになるでしょう。

悩むことはあっても、リフォームなどに関する作業も楽しみながらやっています。

すぐに募集をかけて空室リスクを下げる

───入居率は98~99%だとうかがいました。なぜ、高い入居率をキープできるのでしょうか。

ひとつめの理由として考えられるのは、空室になった瞬間に募集をかけていることです。ちなみに、不動産会社は、日常的に見つけたり検索したりして、2,000件ほど連絡先をストックしています。

次に、自主管理することで家賃を自分で決められること。これも入居率の高さにつながっていると思います。最初は少し高めに設定してみて、反応が悪かったらすぐに下げるということが簡単にできますからね。不動産仲介会社から、「ちょっと家賃を下げられますか?」「敷金はどのくらい免除できますか?」といった問い合わせがきたときにも、即決してすぐに返事をしています。

そして、なによりも物件力の高さが入居率に大きく関係していると自負しています。先ほどお伝えした通り、物件の立地にはかなりこだわっているので、入居してもらいやすいのではないでしょうか。


所有物件の一室。立地へのこだわりのほか、2DKなどの比較的広い間取りの部屋が多いという

───なかなか空室が埋まらなかったという経験はありませんか。

あまりありませんが、不動産経営を始めた頃、2カ月ほど空室が続いた部屋はありました。しかし、家賃を下げたことですぐに入居が決まりました。

ただ、空室対策で失敗した経験もありますよ。私は、とにかく空室のリスクが嫌なタイプです。そのため、少し懸念点があるような入居希望者と契約してしまったことがあります。しかし、騒音やゴミ捨てなどのマナーが悪くトラブルがあったため、慌てて入居させるべきではなかったなと反省しました。

───リフォームで工夫していることはありますか。

一番古い所有物件が1988年築なのですが、大規模修繕や外壁塗装など、実はやったことがないんです。室内も奇をてらったリフォームはしていなくて、白い壁紙の普通の部屋がほとんどです。結局、“普通”の方が万人受けすると感じています。

───キャッシュフローの管理はどうしていますか。

最初に不動産を購入したとき、不動産会社の担当者が物件情報をエクセルにまとめてくださったんです。家賃、契約期間、客付け会社、リフォーム歴、トラブルなどの項目を一覧で見られるものです。そこに利回りやキャッシュフローなどの項目を自分でどんどん付け足していき、いまはスプレッドシートにしてどこでも見られるようにしています。

ちなみに、銀行とのおつき合いのなかで金利の引き下げに応じてもらえることもあります。すると、毎月の返済額も減り、家賃を上げる以外でもキャッシュフローを増やせることも学んできました。こんなふうにキャッシュフローを見ていると、ちょっとゲーム感覚で捉えることもできておもしろいなと思っています。

自分軸を持った不動産経営を

───小林さんが不動産経営を始めてから17年が経過しています。今後の不動産経営において、新たな展開は考えていますか。

実はとくに考えていないんです。物件を増やす予定もいまのところありません。築古の物件は売却してもいいのかなと思いつつ、キャッシュフローが結構出ているので、売却の決心がつきません。土地資産性を重視して購入した結果、利回りは14.1%です。このまま所有していてもいいのではないか、とも思っています。

───新しく物件を購入したいと考えるオーナー、あるいは不動産経営を始めたいと思う人はたくさんいると思います。それでも、なかなか購入に踏み切れないという人にメッセージをお願いします。

どんな投資も未来のことは分かりません。いまが一番安いかもしれないし、今後、一切上がることがないかもしれない。どんな状況でも不動産を購入しようとすると、「こんなときに買うの?」などと否定的な意見を言ってくる人もいます。しかし、自分の明確な判断基準に則っているなら、買ってもいいのではないかと思います。まずは、自分軸をしっかり持ってから、不動産投資を始めてみてはどうでしょうか。


小林 ヒロシ(コバヤシ ヒロシ)さん
東京都出身。大学卒業後、海外取引メインの商社や外資系マーケティング会社などで勤務。2004年に賃貸併用住宅の新築2棟を購入し、不動産経営を兼業でスタート。その後、2008年、2010年、2011年、2019年に中古物件を購入し、現在、9棟を所有。2011年にサラリーマンを卒業。所有物件はすべて自宅のある城東エリアにしぼり、ママチャリで移動して自主管理をする。
著書に『「自主管理」で年4000万円稼ぐマンション経営術』(洋泉社)、『スマホ1台でらくらく儲かる不動産投資法』(ダイヤモンド社)がある。MBA(経営管理修士)、中小企業診断士、1級販売士、英検準1級などの資格も持つ。

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この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

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