不動産業界の「慣習」が買い手に及ぼす悪影響とは?
大友健右
2016/08/30
悪いのは「不動産業界そのもの」!?
前回紹介した「担ボー(担当者ボーナス)」といったような成功報酬を得る仲介業者の営業マンは、本当に悪徳なのでしょうか。フルコミッションであるか固定給であるかにかかわらず、より稼ぎが多い仕事に向かうのは、一般的な職業心理・就業心理としては当然のことです。その報酬を狙う彼らを一方的に責めることはできません。
悪徳なのは、その仲介業者の営業マン個人ではありません。なぜなら、これは不動産業の取引のしくみのなかで起こっていることだからです。
もし、だれが悪徳なのかを特定するとすれば、それは不動産業界そのものです。悪いのは、取引全体のしくみをブラックボックスで覆い隠し、一般の人はだれも踏み込むことができないようにした業界そのものなのです。
「業者が儲けやすい業界だ」という意識を持つ
その意味では、業者、営業マンのやり口が悪質・悪徳だというのではなく、業界全体が「構造悪」の状態で、そのなかで業者や営業マンは黙認された仕事をしている、という言い方が適切なのかもしれません。そのような取引構造が両手取引、両手片足取引などという、より儲けの多い取引の温床の入り口ともなっています。
ですから、みなさんにとって大事なのは、「家を売ったり買ったりするときは、このような『不動産業界』を相手にしている」という事実を知ることなのです。
この連載では、どんどんこのブラックボックス=構造悪の実態をお伝えしましょう。まさに、「パンドラの箱」を開けるのです。
本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』からの抜粋です。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
この記事を書いた人
株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。