どこまでの経費が開業費になるか?

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1.開業費とは?

開業前、つまり、賃貸不動産を購入する前に、かかった経費は、すべて開業費になると思っていませんか? 開業費に該当すれば、任意償却での償却が可能です。 任意償却とは、経費に繰り入れる年度と金額を自由に決めることができる償却方法です。例えば、赤字になる年は償却せずに、黒字になる年に償却するなど、経費をコントロールすることができるため、節税を考えると非常に有利です。

しかし、開業前にかかった経費がすべて開業費になるとは限りません。 開業費は、下記の3要件を満たすものでなければならないとされています。

  1. 事業に関する費用であって、かつ、支出の効果が1年以上に及ぶもの
  2. 資産の取得に要した費用もしくは、前払費用でないこと
  3. 開業準備のために特別に支出した費用であること

開業準備のために特別に支出した費用でなければなりませんので、開業前何年も前に支出した費用ですと、開業費に該当しない可能性が出てきます。 何年前までならOKという明確な規定はないですが、ある程度開業準備に必要であったことの理由や証拠資料が出せるようにしておく必要があります。

開業費になるか、ならないかは非常に難しい問題です。 個別的に検証していきましょう。

2.登記費用・不動産取得税は開業費になるか?

登記費用は、物件を購入する際にかかるものであり、まだ賃貸開始をしていない状況で支出するものです。 では、開業費に該当するのか、3要件に当てはめてみると、 登記費用や収入印紙費用は、購入時に効果が及ぶものと考えられ、将来にわたって効果が及ぶものではないと考えられます。 したがって、開業費には該当しないことになります。

3.パソコンなどの固定資産は開業費になるか?

10万円以上のパソコンなどは固定資産に該当します。 固定資産は、事業の用に供したときから、減価償却として経費にすることができるという扱いになります。

したがって、事業を開始する前に購入した固定資産については、開業費ではなく、固定資産として計上し、業務を開始した後で減価償却していくことになります。 3要件のなかにも、資産の取得に要した費用ではないことが明確にされています。

4.既に賃貸物件を所有している方が、新たな物件を購入する際にかかる費用

既に賃貸物件をお持ちの方が、新たに物件を購入する際に支出する費用は開業費にはなりません。 賃貸を開始されているのであれば、すでに開業しているからになります。 物件毎に開業という判断をするのではなく、ご自身が賃貸業を開業しているかどうかで判断をしていきます。

この記事のコラムニスト

渡邊浩滋
渡邊浩滋(司法書士・税理士)
渡邊浩滋総合事務所。大家さん専門税理士・司法書士。渡邊浩滋総合事務所代表。「行動する大家さんの会(AOA)」発起人。
大学在学中に司法書士試験に合格。大学卒業後総合商社に入社。法務部として契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。実家のアパート経営(アパート5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚し、経営を立て直すために自ら経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出。資産税専門の税理士法人に勤務後、2011年12月独立開業。税理士の視点と大家の視点からアパート経営を支援するために活動中。従来のような確定申告書だけ作成する税理士ではなく、経営・財政・税金の観点から提案をする不動産専門の税理士・司法書士です。
[著書]「税理士が教える節税Q&A」(TAC出版刊)、「大家さんのための超簡単!青色申告」(クリエイティブ ワークステーション)他。
[担当]不動産登記
渡邊浩滋は個人間直接売買において決済完了後に登記手続きを行います。