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市場背景から読み解く「これからの時代を勝ち抜く賃貸経営」 入居者に選ばれるための賃貸マンションとは?

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『パルコン』の賃貸マンション実例 

昨今、分譲マンションの価格上昇に伴い、賃貸マンションの需要が増大している。今後は、家賃の上昇も見込まれ、いままで以上に入居者に選ばれる賃貸住宅作りが必要になる。そこで、半世紀以上にわたってコンクリート住宅の販売・施工を手掛けている大成建設ハウジング(東京都新宿区)の営業本部 営業推進部 営業推進グループリーダーの山口貴弘氏に「これからの時代を勝ち抜くための賃貸住宅経営」について聞く。(取材・文/財部 寛子)


大成建設ハウジング株式会社 営業本部 営業推進部 営業推進グループリーダー 山口貴弘さん

建築コストの上昇が家賃を上昇させる

―――昨今、賃貸マンションの家賃が大幅に上昇しています。その理由について教えてください。

新築分譲マンションの販売価格が著しく上昇していることがもっとも大きな要因です。2025年7月1日時点での東京都の基準地価(2025年9月16日東京都の公表)は、住宅地が前年比5.6%の上昇となりました。建築費も「資材コストの上昇」と「労務コストの上昇」という2つの大きな要因が重なり、大幅に増大しています。

そもそも新築分譲マンションは、完成した時点で区分所有者に売却します。そのため、土地の仕入れコストと建築コストに利益を上乗せして販売しなければ元が取れません。地価が上がれば、当然、販売価格も上昇するのです。実際に2010年と2024年では全国で2倍以上値上がりし、2025年7月の東京都の平均販売価格は70㎡あたり1億477万円と最高値を更新しました。

こういったことから、本来分譲マンションを希望する層が購入を見送り、賃貸マンションの需要が増えています。とくに50~70㎡のファミリー向けは入居希望者が殺到しています。賃貸家賃の相場は、需要と供給で決まるため、賃料も上昇しているというわけです。

―――一方で、少子高齢化に伴う人口減少により、今後、賃貸入居者が減少して家賃が低下するという懸念はありませんか。

実は、新設住宅着工戸数が大幅に減少しているんです。2024年には82万戸だったところ、2040年には61万戸に減少するとの予測も出ています。また、1都3県+大阪府(都市部)では、持ち家が-2.8%、分譲が-2.9%減少すると見込まれていますが、貸家については-0.4%とほぼ横ばいで推移すると予測されています。そのため、今後は、賃貸住宅が住宅着工の主流になっていくと考えられます。

都市部においては、単独世帯数の増加や住宅価格の上昇により、持ち家から賃貸志向により一層シフトしていくのではないでしょうか。

―――建築費の上昇について、今後はどうなっていくと考えますか。

大工を中心とした“住宅建設技能者”の高齢化によって、今後、その数は大幅に減少すると予測されています。「大工不足で家が建てられなくなる」と懸念される声も多く聞こえます。実際に2020年の国勢調査によると、大工人口は2000年から55%も減少し、30万人を割り込みました。現時点でも大工の60%以上が50歳以上で、2040年には10万人を割り込むと予想されています。

大工不足により、住宅供給にブレーキがかかり、住宅価格の高騰や工事の遅延などといったことも起こり得るでしょう。現在の建築費の高騰は一過性ではなく、今後も継続するのではないでしょうか。

震度7に耐え抜く『パルコン』の強さ

―――そんななか、御社はコンクリート住宅のパイオニアであり、『パルコン』というブランド名で長く住宅を提供しています。特徴を教えてください。

『パルコン』は、主要な構造体となる床・壁・天井のコンクリートパネルを工場で生産する「壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造」を採用しています。一般的な現場打ちの鉄筋コンクリート造と比べ、工場で生産することにより高品質・短工期を実現しています。

また、工場生産のコンクリートパネルを現場に運び、基礎から垂直につなぐ一体化スリーブ工法により強固な6面体構造となります。震度7の大地震でも倒壊せず、さらに損傷を軽微なものに収められることが特徴です。

―――『パルコン』は、なぜそれほどまでに丈夫なのでしょうか。 

『パルコン』は、耐用年数200年といわれる36N/mm2の高強度コンクリートを使用しています。現場打ちの場合、壁の上部からコンクリートを流し込むため水分量が多くなりますが、『パルコン』は、工場で壁を寝かせた状態で固練りのコンクリートを打設できるため、密実で高強度のコンクリートパネルができます。

このコンクリートパネルを一体化接合した壁式鉄筋コンクリート造は、剛性が極めて高い構造体で、大型台風や竜巻などの突風に対しても抵抗力を発揮し、60m/秒の風圧にも余裕で耐え抜くのです。

また、『パルコン』のコンクリートパネルは、1,000℃の火に2時間以上耐え抜くため、隣家からの延焼を防ぐだけでなく、内部火災に対しても延焼を食い止めるという優れた耐火性も発揮します。

―――実際にどのような災害に耐えてきているのでしょうか。

1995年の阪神淡路大震災では、窓ガラス1枚割れなかったという実績があります。2011年の東日本大震災では、多くの家屋が津波に流されるなか、『パルコン』の建物はしっかりと耐え残っていました。2016年の熊本地震で震度7が2回発生した益城町においても、ほとんどの家屋が倒壊するなか、『パルコン』の17棟の住宅すべてが倒壊を免れました。益城町の住宅にお住まいのみなさんは、いまでも災害当時の建物のまま生活をしています。

重量鉄骨造と同等価格で建築可能

―――しかし、やはり建築コストがかなりかかるイメージがあります。

もともと、壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造は現場打ちコンクリート造よりも割高でした。それでも、短工期や災害に対する圧倒的な強さ、耐久性の高さを評価され、われわれは半世紀以上も販売を続けてきました。そして近年になると、現場打ちコンクリート造の建築コストが大幅に上昇し、壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造の方が割安になっています。

現場打ちコンクリートは、型枠価格の上昇や型枠職人の減少に伴い、その型枠や職人を奪い合う状態になっています。運送業界における残業規制の強化も影響しています。さらに、生コン車の順番待ちなどが発生し、価格が跳ね上がっています。

そういった背景から、工場で生産する『パルコン』が割安になっているのです。

―――とはいえ、『パルコン』の価格も同様に上がっていくことになりませんか。

当然、当社の『パルコン』も値上がりはしていますが、工場生産による型枠の再利用や職人の省力化、工場内での生コンクリートの打設が行えるため、価格上昇を低減しています。

首都圏で鉄筋コンクリート造の賃貸マンションを建てる場合、坪単価200万円以上が通常です。しかし、『パルコン』は敷地条件が良ければ坪120万円で施工することも可能です。大手ハウスメーカーの重量鉄骨造と同じ条件で見積もりを出してみると、同等価格であることも珍しくありません。

資産価値が高く相続にも有利

―――そもそも分譲マンションは、ほとんどが鉄筋コンクリート造であるにもかかわらず、賃貸マンションは鉄骨造で建てられています。なぜですか。

まず、分譲マンションは区分所有で購入するため、高い資産価値が求められます。遮音性や耐火性、耐久性に優れた構造が必要となるため、必然的に鉄筋コンクリート造が採用されます。居住用途のため、上層階ほど地震や強風による揺れを低減できない鉄骨造は不向きなのです。なお、商業用の高層ビルは居住しないこともあり、フロアごとに間取りを容易に変えられる鉄骨造がほとんどです。

また、分譲マンションは1階から最上階まで同じ間取りを繰り返し施工することが多くあります。そのため、同じ型枠を使える鉄筋コンクリート造の方が経済性は高くなります。一方で、低層の場合は、鉄筋コンクリート造の方が割高になるため、建築コストが安く、表面利回りが高くなる鉄骨造を選ばれるケースが多いのです。

2024年度の着工実績では、3階建て以下の居住用建物の鉄骨造と鉄筋コンクリート造の棟数割合は、鉄骨造が9割を占めています。ちなみに鉄骨造は、4階建てでは3割となり、5~9階建てでは1割となっています。

―――3階建て以下の低層賃貸マンションでも鉄骨造と同等価格という『パルコン』を採用すれば、賃貸経営をするうえでかなり優位になりそうですね。

長期で考えると相当優位に働きます。新築時は鉄筋コンクリート造も鉄骨造も家賃に大きな差はありません。しかし、築15年以上が経つと鉄骨造は空室率や家賃の下落率が高くなっていきます。一方で、鉄筋コンクリート造は、遮音性の高さや災害時の安心感から空室率が極めて低く、高い家賃を維持することができるのです。

また、鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年です。重量鉄骨造の法定耐用年数34年と比べると13年もの差があります。原価法で築30年の延べ床100坪の再調達価格を比べると、鉄骨造が約700万円であるのに対して、鉄筋コンクリート造は3.4倍の約2400万円です。建築費が同等でも、30年後に高い資産価値が残ります。売却を考慮した場合、賃貸経営のリスクも大幅に軽減されるのではないでしょうか。

―――実際に築古で売却したお客様はいらっしゃいますか。

売却の際の査定で、約20年前の建築時よりも、建物の価格が上がったというお客様がいらっしゃいました。やはり、災害に強い建物であることが大きな理由だと考えられます。長く賃貸経営を続けることも、ご家族に引き継いでいくこともできるため、賃貸オーナー様のなかには『パルコン』のリピーターも多くいらっしゃいます。また、最近では、デベロッパー様からの依頼も多くなっています。つまり、『パルコン』は“プロが選ぶ建物”でもあるのです。

―――最後にオーナーにメッセージをお願いします。

日本では、災害が増えていく一方です。入居者様の大切な命をお預かりしているともいえる賃貸オーナー様には、ぜひ、丈夫で安心できる、そして入居者様からの信頼を得られる建物を所有していただきたいと思います。

大手住宅メーカーで建てる重量鉄骨造とほぼ同コストで建てられる『パルコン』なら、安定した賃貸経営を長期間にわたって実現していただけると自負しています。

新築や建替えの際には、ぜひ、『パルコン』をご検討ください。

<プロフィール>
大成建設ハウジング株式会社
大成建設株式会社グループの一員として、1969年1月創業。主な事業は、鉄筋コンクリート住宅『パルコン』の設計・施工・販売、賃貸専用・併用住宅や店舗付き住宅などの設計・施工・販売、リフォーム(当社戸建住宅商品、一般戸建住宅、マンション等)、壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造躯体の設計・販売。『パルコン』は、1969年に大成建設が販売を開始、建築実績は5万棟(2025年10月現在)。
東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー19階
TEL:03-5339-8015

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この記事を書いた人

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