分譲マンション特化型賃貸経営 幸せな時間を過ごせる “分譲マンションの魅⼒”とは
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/07/01
写真/吉田 達史(PhotoCurrent 66) 聞き⼿/御福 美咲 ⽂/向園 智⼦
⾃分の住みたいと思う物件を提供する——。そんな想いを持っている横⼭顕吾さんは、広島県を中⼼に分譲マンションを区分で購⼊、賃貸として貸し出す経営⽅法を実践している。「ひろしま⼤家の会」の代表でもあり、⾃⾝を「分譲マンションコレクター」と称し、⼊居者に素敵な分譲ライフを提供するため⽇々尽⼒しているという。独⾃の物件を評価する“⽬”と“賃貸経営理論”で、⼤家仲間や⾦融機関からの信頼も厚い横⼭さん。なぜ分譲マンションなのか? 横⼭さんの考える⼤家業のあり方やビジョン、成功に導くマインドセットなどを聞いた。
分譲のクオリティで素敵な賃貸ライフを
——横⼭さんが分譲マンションにこだわる理由を教えてください。
分譲マンションに住んでいる⼈は、ほとんどが所有者だと思います。⾃分の所有物ということで、建物やお部屋を⼤切にする住⼈が多いんですよね。ですので、築年数が経っていたとしても建物の品質が保たれていることが多いのです。
そして重要なのは「管理の仕⽅」です。賃貸専⽤のマンションやアパートは、建物を⼤家⾃⾝で管理したり修繕計画を⽴てたりとさまざまな業務が発⽣しますが、分譲マンションはそういった必要がありません。所有者による修繕費の積み⽴てもあり、マンション管理組合もあって修繕計画もしっかり決められています。建物の資産価値を⼤きく左右するともいわれる管理を、計画的に維持していく流れができているのです。そういったことで品質が保たれている建物を賃貸として貸し出し、⼊居者に所有者同様の分譲マンションライフを提供したい。それが、分譲マンションにこだわる理由です。
横⼭ 顕吾(よこやま けんご)/1970年岡⼭市⽣まれ。筑波⼤学体育専⾨学群卒業後、転職を繰り返し、6つ⽬の勤務先として分譲マンション管理会社に就職。2008年から⼀般財団法⼈⽇本不動産コニュニティー(J-REC)広島⽀部⻑を務め、12 年に投資⽤分譲マンション2 ⼾を取得。17年に区分マンション所有に特化した専業家主へ転⾝。マンション管理⼠、管理業務主任者、宅地建物取引⼠、賃貸不動産経営管理⼠、賃貸経営アドバイザー、防⽕管理者、損害保険募集⼈資格などを持つ。趣味はリフォーム、ラグビー観戦。
——分譲マンションに住むということは⼊居者のステータスも上がりますね。
私は、⾃分が住みたいと思う物件を提供しています。
昔、英会話教材の訪問販売をしていたことがあるのですが、やり始めた頃は、「この教材で学ぶと英語ができるようになる、すごいな」と思って販売していました。しかし時が経つにつれ、教材の本質に疑問を持ち始めてしまい……売れなくなってしまったんです。⾃分は、本当にいいもの、信じられるものでないと売れない、とそのときに実感しました。それを賃貸経営に置き換えると、⾃分が賃貸に住むのなら、分譲マンションか⼾建てがいい。そして、分譲マンションの管理会社に勤めていた経験もあって、⾃分も住みたいと思う分譲マンションで賃貸経営をしようと決めました。
——賃貸経営のスタートも分譲マンションですか。
私が賃貸経営を始めたきっかけが、ロバート・キヨサキ⽒著の『⾦持ち⽗さん 貧乏⽗さん』と、浦⽥健⽒著の『「⾦持ち⼤家さん」になる! アパ・マン満室経営術』を読んだことから始まりました。そして浦⽥⽒のセミナーに参加し、この出会いがきっかけで浦⽥⽒が代表理事を務める「⼀般財団法⼈⽇本不動産コミュニティー(以下、J-REC)」に参加させてもらいました。今は、J-RECの認定講師として広島⽀部の⽀部⻑を務めています。
その頃、私はまだ⼤家ではなく、分譲マンションの管理会社に勤めていました。実際に浦⽥⽒と管理について話をする機会があったのですが……なんと話が噛み合わなかったのです。なぜかというと、私は分譲マンションの建物管理の話。浦⽥⽒は、賃貸経営での⼊居者管理の話をしていたためでした。そのときに、賃貸管理と分譲管理は全く違うんだ、ということを感じたのです。これは、賃貸に分譲管理のいいところを組み込めるのではないかと考えました。⾃分なりに賃貸管理の新しいカタチを創っていきたいと思い、そこから賃貸経営にかかわるようになったのです。
初めて物件を購⼊したのは2012 年。分譲マンションの、35㎡の2Kの物件でした。いまは、分譲マンション33⼾、⼾建て4棟を所有しています。他に太陽光発電も所有しています。
物件の良し悪しを可視化し、⾒極める
——かなりハイペースで購⼊されていますね。
12年から物件を購⼊し始めて、18 年に⼀旦購⼊をやめました。分譲マンションのコンサルティング業に専念するため“買わない宣⾔”をしたのです。しかし、⾃分はマンションが好きで、購⼊することでワクワクするし、経験値も増えて⾃分の勉強にもなる。購⼊をやめたことで実践することは⼤事だなと実感しました。そして買わない宣⾔を撤回し、今年2⼾購⼊するという⽬標設定を掲げました。⾃分で名付けた肩書きですが、「分譲マンションコレクター」と名乗るほどマンションが好きで、趣味のひとつなんです。今後も、さまざまなかたちでマンションにかかわりたいと思っています。
横山さんが所有する分譲マンションの外観(左)とエントランス(右)/撮影 横山さん
——横⼭さんはマンションの購⼊の仕⽅に特徴があると聞きました。
私は、「⾃⼰資⾦を必要としない購⼊⽅法」を実践しています。
私が賃貸経営を始めた頃は、分譲マンションを区分で購⼊して賃貸として貸し出すという経営をしている⽅が少なかったんです。購⼊するときは、それほど⾼額ではないのでキャッシュの場合も多いのですが、私にはその考え⽅はなく、⾃分なりに作り出した⽅法が「全額融資で購⼊する」という⽅法です。キャッシュだと⾃⼰資⾦も必要ですし、物件を増やすことに時間がかかります。全額融資で購⼊すると短期間で複数の物件を購⼊することができるんです。実のところ……⾃⼰資⾦がなかったということもあるんですけどね(笑)。
——物件を選ぶ基準というのはあるのでしょうか。
基準というのはないと思います。さまざまな物件があって、いいところも悪いところも絶対にある。物件を可視化し、総合的に判断することが⼤切ですね。悪い部分を⾃分で解決できるのか、できないならやめたほうがいいですし、それを超すほどのいい部分があるのなら購⼊に踏み切ることもあると思います。
私は購⼊する際、物件の評価を1カ⽉間くらい徹底的に調べます。その調べ⽅などは、勤めていた管理会社で学んだことが⼒になっています。今だから話せますが……、働いていた管理会社が結構ブラックな会社で(笑)、従業員も少なかったのでマンション管理についてはなんでもやりました。とても⼤変でしたが、その頃経験したことは今となっては財産です。
価値があるマンションというのは、築年数ではなく管理のいい物件です。管理がしっかりしていれば建物は⻑持ちします。鉄筋コンクリートは、定期的なメンテナンスを⾏うことでその機能を⻑期間維持することができ、建て替えがしばらく必要なくなるのです。分譲マンションであれば、⾃分で管理するということではないので、管理状態、管理組合がしっかりしているかが重要。賃貸アパートやマンションではなかなか実践できない管理の仕⽅なのです。
先ほどの話に戻りますが、そういった物件を購⼊すれば全額融資で購⼊することも難しくないんです。「この物件であれば空き室の⼼配はなく借り⼿が付く」と⾦融機関の信頼を得ることができれば、安⼼して融資してくれます。物件を総合的に⾒極めて選ぶ、ということが重要です。
——そういったことも、ひろしま⼤家の会では学べるのでしょうか。
そうですね。広島⼤家塾という勉強会や、私のブログでも発信しています。ほかにも「広島リフォーム塾」を毎⽉2回開催しています。直近の広島リフォーム塾では、「模様(ガラ)付きの壁紙貼り」をテーマに⾏いました。この塾は、参加者をニックネームで呼ぶような、楽しいアットホームな会です。教えてくれる⽅に対しても“先⽣”は禁⽌です(笑)。
少人数制で行うリフォーム塾/写真提供 横山さん
8⼈程度の少⼈数で、ペアで4部屋に分かれてみんなが作業できるようにしています。少⼈数なので、分からないことも聞きやすい環境で、みんなでワイワイ楽しみながらやっています。とはいえ、実践型なので作業はしっかり⾝に付きます。
実践型のためスキルを習得しやすい/写真提供 横山さん
分譲マンション投資で仲間を増やしたい
——今後のビジョンはありますか。
今後やりたいと思っていることは、分譲マンションで賃貸経営をする⼤家を増やして、会員制の「分譲マンションオーナーズ倶楽部」という会を作りたいと思っています。例えば、加⼊の条件に「分譲マンションを10 ⼾以上所有している」などにして、分譲マンションにある程度精通した⼈たちを集めます。そして年1回、世界中のマンションを⾒て回るツアーに⾏く……分譲マンションを知っている⼈たちで集まるから絶対⾯⽩いはずです。考えるだけでワクワクしますね。
——横⼭さんの考える⼤家業、賃貸経営を教えてください。
多くの⼈がまだ、“⼤家=不労所得”と捉えているかもしれませんが、私には、そういった考え⽅はありません。⼤家業は、資産運⽤ではなくサービス業だと思っています。私はお客様(⼊居者)のために、⼤家は何ができるのかを常に考え喜んでもらえる物件を提供できる⼤家になりたいですね。
そのために私が⾏っていることは、⾃主管理していることもありますが、まずは⼊居が決まった時には⼊居された⽅に挨拶に⾏き、設備が壊れてしまったり、困ったときに連絡が取りやすい環境を作ります。
そして、家賃が⼊ったらお礼メールを⼊れ、近況を伺い、不安や不満、問題を早く⽚付けて、建物はもちろん⼤家としてのサービス⼒にも満⾜してもらいたいですね。ここに住んでよかった、と思ってもらえるよう努⼒しています。努⼒といっても、⼤げさなことではありません。「ありがとう」とお礼を⾔ったり、⼊居者が喜ぶ⼩さなことを積み重ねるだけです。それが、⼊居者の安⼼につながり、⻑期⼊居や、退去後も住んだことがいい思い出になるはずです。
そして、⾃分も嬉しくなる。この家に住んでいることでたくさんの幸せな時間を過ごすことができる、そう感じてもらえる賃貸経営をしていきたいと思っています。そして、資産がどのくらいあるとか、キャッシュフローがどのくらいとか⼤家⽬線だけではなく、⼊居者⽬線を持って賃貸経営を⾏う⼤家が増えていくことを願っています。
⼤家と⼊居者が「ありがとう」と感謝を伝え合える関係性って素敵ですよね。
この記事を書いた人
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