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賃貸経営、暑い季節の重要課題――内見した入居希望者が逃げ出している理由とは 

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文/朝倉 継道 イメージ/©︎elwynn・123RF

クサイ部屋には誰もが住みたくない 

その昔、賃貸住宅の仲介の現場を、客付け業者として経験したことがある。

その際、口が酸っぱくなるほど、賃貸住宅オーナーへ注意喚起していたことがある。それは、暑い季節の空室のニオイについてのことだ。せっかく入居希望者を内見に案内しても、これひとつですべてが台無しになってしまうことがある。その場にいるのがイヤになる「クサい」部屋になど、誰もが住みたくないためだ。

 「暑い季節は、部屋が臭くなっていないか、空室を頻繁に見に行くべき」

声を大にして、賃貸住宅オーナーに伝えたい。

換気扇周りと排水溝に注意  

夏や、その前後の暑い時期に、空室が臭いやすくなることについては、経験上大きな原因が2つある。

ひとつは、換気扇周りなど、キッチンにニオイの元があるケースだ。頭痛をもよおすような悪臭が漂う、クリーニングを済ませたはずの空室のキッチンで、換気扇グリルの内側が油の海のようになっているのを見たことがある。

調べると、なんと、清掃業者がまったく掃除をしていなかった。グリルを外しもせず、外側だけをサラリと拭き、あとの作業は完全にサボっていたという、あってはならないパターンだった。

もっとも、悪いのはその業者だけではない。管理会社も同様によくない。なぜならば、彼らは清掃業者に「作業は終わりました」と言われ、「はいそうですか」で、チェックを怠ってしまっていた。要は、そういう管理会社だからこそ、いい加減な仕事をする業者も寄り付く結果となる。

さらには、オーナーもよくない。この物件のオーナーは、普段からすべてを管理会社に丸投げし、物件を見に行くことがない。空室が長引いても、理由を探したり、現場の状況を確かめたりといった発想自体をしない、いわば自業自得な人だった。この部屋の場合、換気扇内部の汚れは本当に尋常ではなかった。

おそらく、キッチン側から見える範囲だけでなく、外へ通じるダクト(排気管)の内側にも、油がたっぷりとこびりついていたことだろう。当然、これも悪臭の原因となる。

が、清掃業者がたとえまともな会社であっても、ダクトの中まで掃除をしてくれるとは、期待しないほうがいい。それには専門技術が必要になってくるからだ。

すなわち、オーナーが「キレイにしたい」と言い出さないかぎり、ダクト付き換気扇の奥の部分というのは、ひたすら汚れ続けていくものと理解しておくべきだろう。

もうひとつの大きなニオイの原因、それは排水口だ。

暑い季節は、排水トラップ内の乾燥が起こりやすくなる。これが、しばしば空室内に悪臭を発生させる。

ちなみに、排水トラップとは、排水口の下にある、U字、S字といったかたちをした構造のことだ。キッチンのシンク、バスルームなど、あらゆる水まわりに存在する。

この排水トラップに、普段は水が貯まっていて、下水管内の空気と室内とを遮断してくれている。ちなみに、この水のことを封水、または水封という。なので、管はつながっていても、下水のニオイは部屋まで立ちのぼって来ない。シンプルかつ、優れた仕組みとなっている。

ところが、そんな優れた排水トラップが、部屋が空室になり、排水口に水が流されない状態が続くと、やがて役に立たなくなる。中の封水が蒸発してしまうからだ。暑い時期は特にそれが起こりやすい。管の内側が、下水から部屋まで直通となってしまい、下水管内の空気が室内に到達することで、悪臭が生じるかたちだ。

これまで賃貸物件で実際に経験したもっともニオイがひどかったケース、それはトイレで起きていた。周知のとおり、排水トラップは便器の底にも付いている。トイレのフタを開ければ、そこにいつも見えている水こそが、トイレにおける封水だ。ところが、その部屋では、この封水がすべて蒸発し、無くなっていた。

すると、何が起こるか?

イヤな話だが、排泄物が流れるトイレの排水管の中の空気が、そのまま部屋までのぼってくる。よって、当然ながら、その部屋にはその種の臭いがキツく漂っていた。

察するに、オーナーも、管理会社のスタッフも、トイレの水が蒸発し、なくなってしまうくらいの長い間、部屋を見に来ていなかったのだろう。あるいは、たまに来たとしても、水まわりにまで気を配ってはいなかったのだろう。そのことが一目瞭然の事例だった。

小バエの死骸が散乱

ニオイのほかにも、暑い時期に賃貸物件の空室で起こりやすい問題として、虫の侵入がある。

なかでも、一番姿を見かけやすいのが、小バエとクモだ。部屋の隅にクモが巣をつくり、そこで小バエを捕らえ、次々とエサにしてしまう。その結果、小バエの死骸が床に無数に転がっているといった風景を目にすることが非常に多い。この状況だと、女性の入居希望者などは大抵嫌な顔をする。まず、その部屋へは入居してくれない。

さらに、この小バエとクモ、実はさきほどの排水トラップの乾燥とも大いに関係がある。小バエの多くは、排水トラップが乾くと、そこから次々と侵入してくる。おそらく“彼ら”は下水管内部の汚泥の中で羽化しているのだろう。

次いで、部屋に小バエが飛ぶようになると、なぜかクモがこれに気づいて寄って来る。侵入経路は、主に換気扇だろう。

ともあれ、そのようにして部屋に“役者”が揃った結果、さきほど述べたようなことが起こる。空室の床に、ごま塩でも撒いたかのように、小バエの死骸が散乱する風景が生じるわけだ。

今そこにある空室の危機 避けるのは簡単 

このような暑い季節に起こる空室の危機。避ける方法は簡単だ。 

管理会社任せにせず、オーナーも頻繁に物件に出向き、しっかりと空室管理をすること。これに尽きる。 その点、物件が自宅のそばにあるオーナーは仕事が楽になる。有利な条件をぜひとも生かしてほしい。

なお、キッチンと排水口のほかにも、部屋のニオイの原因となりやすいものに、エアコンと壁紙がある。 このうち、エアコン内部の汚れとニオイは、特に見逃されやすい。内見時には気づかれなくとも、入居後、早速クレームになることもある。

さらに、壁紙については、喫煙者が入居していたケース、部屋でペットが飼われていたケースでは、全面貼り替えは必須としておくのがよいだろう。

タバコ臭は、かなり臭っていても、オーナー自身が喫煙者の場合は気づけないことがある。タバコを吸わない家族などにも確かめてもらうなど、ぜひ、細心の注意を払ってほしい。

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この記事を書いた人

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