Millennials' Sensation 若い発想力が生む、新しい不動産投資のカタチ
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/05/11
取材・⽂/財部 寛⼦ 写真/吉田 達史(Photo Current 66)
“⼤家”というと、年齢が⾼めの層をイメージする⼈が多いのではないだろうか。しかし、もっと若い世代が不動産投資にかかわっていても不思議はない。むしろ、若い⼤家が多く⼊ってくることで、業界にも新しい⾵が吹いてくるだろう。そこで注⽬したのが、参加者を1980年以降⽣まれに限定した「TerraCoya⼤家の会」だ。主宰者は3⼈の男性。3⼈とも20歳代から不動産投資を始め、30歳代になった今は、⼤家として賃貸経営も⾏い、賃貸住宅にかかわる関連事業なども行っている。今回は、辻⿓⼀さんと富治林希宇さんの2⼈に、彼らが考える不動産投資、そして「TerraCoya⼤家の会」で⽬指していることなどを聞いた。
20代で不動産投資 建物再⽣を楽しむ
——お⼆⼈が不動産投資を始めたきっかけを教えてください。
辻 ⿓⼀さん(以下、辻):僕は⼤学卒業後、電機メーカーに就職しました。現在も同じ会社でサラリーマンを続けています。しかし、⼊社から7年ほどが経った頃、「このままサラリーマンとして働いていていいのか」「あと30年サラリーマンを続けるイメージが湧かない」など、これからの⼈⽣について考えるようになりました。そんなときに出合ったのが、ロバート・キヨサキ⽒著の『⾦持ち⽗さん貧乏⽗さん』。その本を読み、不動産という世界があることに気付きました。思い返せば、⾃分の実家でも⼟地を所有しており、不動産は⾝近な存在だったんです。そして4年前、28歳から不動産の勉強を本格的に始めました。
辻 ⿓⼀(つじ りゅういち)/1988年⽣まれ。⼤阪府出⾝。⼤学卒業後、電機メーカーに就職し、現在も不動産事業と兼業。2017年に不動産投資の勉強を始め、同年12⽉に1棟⽬の物件を購⼊し、現在は神奈川県と埼⽟県に計4棟を所有。「TerraCoya ⼤家の会」では、HP 更新や勉強会内容の調整、経理事務などを担っている。
富治林 希宇さん(以下、富治林):僕は⼤学時代に建築の勉強をしていました。卒業後は、いくつかの会社で数百万円から数⼗億円を超える不動産の経営・管理、ビルマネジメント、プロパティマネジメント、アセットマネジメントなどに従事し、さまざまな経験のなかで、もっと不動産事業を通して地域に貢献したい、不動産にかかわる⽅に喜んでもらいたいといった思いが湧いてきたんです。そこで、「30歳までに給料以上の年収を稼げるようになって独⽴する」という⽬標を持ち、28歳で不動産投資を始めました。現在は⽬標を達成したので、独立(起業)し、同じ思いを持った仲間と不動産にかかわる方を支援する事業をしています。
富治林 希宇(ふじばやし ねがう)/1989年⽣まれ。京都府出身。⼤学卒業後、不動産にかかわる⾦融やITなどを事業とするいくつかの会社で経験を積み、2017年12⽉に1棟⽬を購⼊。不動産事業を通して地域貢献したいという思いがあり、購⼊した築古物件を地域の業者とともに再⽣していくことを楽しんでいる。「TerraCoya⼤家の会」では、企画や協業調整などを担っている。
——お⼆⼈は“⼤家”でもありますよね。最初はどんな物件を購⼊しましたか。
辻:最初に購⼊したのは2017年12 ⽉に、築15年、約2500万円の物件を購⼊しました。いろいろな不動産会社の⽅と会い、そのなかで、ある⽅から紹介していただいた物件を⽐較的とんとん拍⼦で購⼊することができました。その後、3棟買い⾜しています。
富治林:⾃分も17年12⽉に1棟⽬を購⼊しました。その後、トータルで10棟ほど購⼊し、すでに売却した物件もあります。⾃分は、築年数が古く、すべて空き室の物件を購⼊することもあります。ボロボロの建物を⾃分で再⽣するというやり⽅を楽しんでいるんです。うまく再⽣できれば、利回りも良くなりますし、古く、誰も近寄らなかった物件が綺麗になることで、新しい⼊居者さんに⼊ってもらったり、近隣住⺠の⽅にも喜んでいただいたりと、地域貢献にもつながると思っています。
世代の違いを痛感 新コミュニティー誕⽣
——そもそも、お⼆⼈はどこで知り合ったのですか。
辻:不動産の勉強を始めた17年の春ごろに参加していた不動産投資コミュニティーです。
富治林:辻さんよりも⾃分の⽅が1 歳下ですが、年齢が近いこともあって話をするようになりました。実は、⼆⼈が同じ⼤学を卒業していることも後で判明したんです。
——TerraCoya⼤家の会を⼀緒に⽴ち上げようと思ったのは、どんなきっかけがあったのですか。
富治林:最も⼤きな理由は、不動産投資を学べるコミュニティーやセミナーなどに参加しても、若い世代がいなかったことです。40〜50歳代以上が多く参加していて、すでに資⾦を持ったうえで不動産投資を学びに来ているんですよね。そうなると、不動産投資の概要や概念を聞くことはできても、「いま、何をすればいいのか」という若い世代が必要としている再現性のある内容は学びにくい。つまり、すでに資⾦を持つ世代と僕たちのように資⾦がない世代では不動産投資のやり⽅が違うと感じたのです。
辻:そこで、⾃分たちのような世代を応援したい、不動産投資の具体的な⽅法を学びたい、そして不動産投資を考える若い世代が集まる場、つながる場を提供したいという思いで、1980年以降⽣まれを限定にしたTerraCoya⼤家の会を発⾜したのです。
会員全員で学ぶ 再現性ある勉強会
——⼤家の会では、どのようなことをしていますか。
辻:所有物件が3棟未満の⽅をBeginner、3棟以上の⽅をAdvanceの会員として勉強会をしています。
不動産の探し⽅や買い⽅、マイソクの勉強会、⽕災保険の申請⽅法、謄本の⾒⽅、融資打診資料の作成⽅法、契約書のチェックポイントの解説、売却価格をアップさせる⽅法など、さまざまな内容をみんなで勉強しています。ときには、弁護⼠や司法書⼠の先⽣に講師をお願いすることも。
この間は、DIYの実践が学べる勉強会を開催し、みんなでクロス貼りの体験をしました。勉強会はオフラインとオンラインの併⽤で、勉強会後の動画配信も⾏っています。勉強会以外にもよく飲みに⾏ったり、みんなでBBQをしたりもしています。
富治林:マイソクの物件価格の部分だけを消して、「この物件をいくらで購⼊するか」を話し合うような勉強会もしています。このマイソク勉強会は、他の⼈がどういう考えで物件を⾒ているのかを確認し合えるので、いつも好評でとても盛り上がるんですよ。
——会員にはどのような⽅がいますか。
富治林:現在、200⼈(有料50人、無料150人)の会員さんがいます。専業⼤家の⼈や、セミリタイアを目指している⼈はもちろん、給料にプラスアルファがほしいという⼈もいます。
属性としては、サラリーマンから、ITエンジニア、メディアの編集者、専業主婦、それから⼤学⽣も2⼈います。不動産投資に対する経験はさまざまですが、意識を⾼く持っている⼈が多いように感じています。
ちなみに、これまでは関東の⽅が中⼼でしたが、オンラインでの勉強会を始めたことによって関東以外の⽅の参加も増えてきました。なかには、海外転勤してタイから参加している⼈もいるくらいです。
辻:普通に⽣活していると、かかわることのないようなさまざまなバックグランドを持つ⽅と知り合えることは、⾃分たちにとってもありがたく、うれしいことです。
——不動産投資をするうえで、若いからこそ気を付けるべきこと、⼼掛けておくべきことはありますか。
富治林:⽬的・⽬標をしっかりと持って、それに対してブレないでやることだと思います。“なんとなく”不動産投資をやろうとしている⼈は、あまり先に進むことができていないように思います。
辻:その⽬標に向けて、やるべきことを細分化することが⼤切です。つまり、PDCAサイクルをきちんと意識することです。そうしなければ、「いつか買えればいい」「別に物件を買えなくてもいいか」という⽢えの状態になってしまいます。
すべての⼈が快適な⽣活を送れるために
——お⼆⼈とも“⼤家”という感じがあまりしませんね。
辻:よく⾔われます(笑)。⼤家としての仕事は特にやることも無く、“⼤家業”をしているという感覚はあまりありませんね。⾃分は、管理会社との付き合いを⼤事にして、管理会社に任せる部分はしっかり任せています。しょっちゅうトラブルが起きるわけでもないですしね。
富治林:⾃分は、管理会社にお願いしている物件と⾃主管理している物件がありますが、辻????さんと同じく、“⼤家業”という意識はあまりないですね。TerraCoya⼤家の会でも、「⼤家をしています」というセリフは出てきません。⼤家ではなく、不動産事業という意識だと思います。
——⼤家業と⼤家の会以外にも関連する事業や、書籍も出版されているそうですね。
富治林:“不動産の軽作業”と“地域住⺠のスキマ時間”をつなぐワークシェアサービス「COSOJI(こそーじ)」と、不動産管理業や再⽣事業に取り組むサービスを⽴ち上げています。⾃分たちは、⼤家業で稼ぐというよりも、さまざまなカタチで地域・街・社会に貢献していきたいという思いを持っています。例えば、築古物件を再⽣するときには地元の⼯務店などに仕事を依頼します。⼯務店を⾒つけるまでに⼿間はかかりますが、それが地域貢献につながるという考えがあるので楽しんでやっています。
21年1月、「COSOJI(こそーじ)」は一般社団法人全国古民家再生協会と戦略的提携パートナー契約を締結
辻:20年11⽉に、TerraCoya⼤家の会を⽴ち上げた3⼈で『不動産投資の羅針盤』(TerraCoya⼤家の会著、ソシム刊)を出版しました。不動産事業は、結局、⼈と⼈のつながりです。⼤家と⼊居者さん、⼤家仲間、不動産会社や管理会社、⼯務店、地域の⼈々など、たくさんの⼈と出会います。ただし、そのなかでも⻑く付き合っていける⼈は限られてきます。そういった⼈とのつながりを⼤切にしていかなければならないと思っています。
『不動産投資の羅針盤 豊かな不動産ライフを手に入れる一番わかりやすい教科書』/
TerraCoya⼤家の会 林 奏人・辻 ⿓⼀・富治林 希宇 著 ソシム 刊 定価1650円(税込)
——最後に、それぞれの⽬標はありますか。
辻:個⼈的な目標ですが、⼈⽣好きなことをやって、楽しく⽣きたいと思っています。そのための収⼊を得る⼿段の1つとして不動産事業をやっています。また、⾃分⾃⾝が不動産を通して感じた課題を解決したいと思い、富治林さんとともにCOSOJIなどの事業を進めていきたいと思っています。
富治林:⾃分には、不動産にかかわるすべての⼈にとって快適な世界を提供する、というビジョンがあります。⼤家業以外の事業もそのためで、かかわる⼈みんなに楽しくいてほしいと思っています。直近の⽬標は、これから5年以内にCOSOJIなどの事業を軌道にのせていくことです。
この記事を書いた人
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