人気のリゾート・街が並ぶなか、異質な答えも 東京都民が移住・二拠点居住したい場所
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/05/05
文/朝倉継道 イメージ/©mnyjhee・123RF
“移住”に関心のある東京都民が、いま移住したい場所の1位は、すぐそばの「八王子・奥多摩エリア」
“二拠点居住”に関心のある東京都民が、いま二拠点居住先として選びたい1位は「鎌倉・三浦エリア」
この3月(2021)に、株式会社リクルート住まいカンパニー(21年4月1日より株式会社リクルート)が、そんな結果が含まれた面白い調査結果を公表している。タイトルは、「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」だ。
調査対象は、東京在住の20~69歳の男女の皆さんのうち、移住もしくは二拠点居住につき「検討している」「強い関心がある」「関心がある」という方。スクリーニング調査回収数1万5572人、本調査有効回答数1万572人と、規模の大きな調査になっている。調査目的はこうだ。
「東京都在住の生活者のうち、東京駅から50km以上離れた地方への移住や、二拠点居住に関心がある人が、全国のどのエリアに住むことを希望しているかを把握すること。また、その希望理由などを把握すること」
そこで、皆さんに希望先として選んでいただく「エリア」だが、こちらはリクルート住まいカンパニーが分類した全国198のエリアとなっている。なお、各ランキングは、集計した回答から算出された得点や偏差値によって決まるかたちだ。
では、「総合」「テーマ別」などなど、たくさん種類のあるランキングのなかから、いくつかをご紹介しよう。
まず、基本といえる、「移住に関心のある東京都民が“移住”したいエリア」のTOP10。(実際のリリースでは50位までが紹介され、得点も公表されている)
1位 八王子・奥多摩エリア(東京都)
2位 鎌倉・三浦エリア(神奈川県)
3位 石狩エリア(北海道 ~札幌市を含むエリアです)
4位 離島・諸島エリア(沖縄県)
5位 福岡エリア(福岡県)
6位 湘南エリア(神奈川県)
7位 伊豆エリア(静岡県)
8位 那覇エリア(沖縄県)
9位 印旛・香取・海匝(かいそう)エリア(千葉県)
10位 外房エリア(千葉県)
続けて、もうひとつの基本ランキング「二拠点居住に関心のある東京都民が“二拠点居住”したいエリア」のTOP10。(実際のリリースでは25位までが紹介され、得点も公表されている)
1位 鎌倉・三浦エリア(神奈川県)
2位 八王子・奥多摩エリア(東京都)
3位 湘南エリア(神奈川県)
4位 伊豆エリア(静岡県)
5位 那覇エリア(沖縄県)
6位 離島・諸島エリア(沖縄県)
7位 東信エリア(長野県~軽井沢を含むエリアです)
8位 箱根・足柄エリア(神奈川県)
9位 石狩エリア(北海道~札幌市を含むエリアです)
10位 外房エリア(千葉県)
ご覧のとおり、まず気付くのは、両方にまたがってランクインするエリアが多いということ。さらには、東京からみての近場、遠くを含め、リゾート地、景勝地の名前が目立つ。
福岡、札幌(石狩エリア)という、人気の地方都市もそこに混じってきている。堅実で定番風、あえて悪くいえば、退屈なイメージのする結果といってよいだろう。
そうしたなかで、両ランキングの上位に挙がっている「八王子・奥多摩エリア」というのは、かなり異質な感じがする。このエリアは、東京都八王子市、青梅市、あきる野市、日の出町、奥多摩町、檜原村で構成されている。
よって、これはまさに「東京都民に尋ねた結果ならでは」と、いうことだろう。八王子・奥多摩方面といえば、古い表現だが、東京の奥座敷といえる辺りだ。あるいは、東京の裏山である。
東京育ちの方であれば、子どもの頃からの思い出がたくさん詰まっているエリア、大変懐かしい地域であることもおそらく多いはず。都心へアクセスしやすい利便性とともに、そうしたことも高い支持を集めた理由なのかもしれない。
ところで、今回のこのリクルート住まいカンパニーの調査だが、前述したとおり、移住もしくは二拠点居住につき、検討していたり関心があったりすることを前提に、調査対象者が選ばれている。
そのため、すでに、移住・二拠点居住したいと思う地域について、情報をかなりの程度集められている方も少なくないようだ。それが、各「テーマ別ランキング」の結果に表れている。例えば……
「子育て環境が良いから」~移住・二拠点居住したい(以下同じ)
1位 宇都宮エリア(栃木県)
2位 高松エリア(香川県)
「自治体が移住に積極的だから(支援策など)」
1位 釧路エリア(北海道)
2位 会津エリア(福島県)、利根・沼田エリア(群馬県)
「行政サービスが充実しているから」
1位 北摂エリア(大阪府)
2位 北九州エリア(福岡県)
「面白いコミュニティがありそうだから」
1位 利根・沼田エリア(群馬県)
2位 渡島エリア(北海道 ~函館市を含むエリアです)
ご覧のとおり、さきほどの2つの基本ランキングとは大分様子が違ってくる。なおかつ、以上を選んでいるのは、あらためて添えるが、上記の地域に住む方々ではない。東京都民だ。つまり、このことは、他地域からの移住や二拠点居住を受け入れたい地域の側が、
・積極的に情報や魅力をPRしたり
・移住や二拠点居住先に選ぶメリットなどを整備したり
そうした施策が実を結ぶ可能性の度合いをおそらく示している。
そのため、都会やほかの地域から人を呼びたい各地の行政スタッフ、それぞれのコミュニティで地域づくりをされているような方々は、最初の2つのランキングのような“定番的”結果だけを見て落胆する必要はない。
移住や二拠点居住を本気で考えている方は、皆さん、きっと貪欲に情報収集をされるはずである。それに的確に応えられる発信や、魅力的な施策をつねに用意しておくことこそが、何よりも肝心といえるだろう。
この記事を書いた人
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