ペットを飼い始める人が増えた2020年 賃貸物件の「消極的ペット可」の末路に注意
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/04/20
文/朝倉 継道 イメージ/©Jenyac・123RF
昨年(2020)は、新たにペットを飼い始める人が増えた年といわれている。
その理由として、多くの報道が「コロナ禍」を挙げている。新型コロナウイルスによる、日々のストレスや不安がもたらす癒しへのニーズが、ペットの需要につながった旨を伝えている。下記は、20年12月に一般社団法人ペットフード協会が公表したデータである。
(20年10月現在での推計)
・全国の犬の飼育頭数は、約848万9000頭
・飼育世帯数は、約680万世帯
・全国の猫の飼育頭数は、約964万4000頭
・飼育世帯数は、約550万6000世帯
これらの数字は、実はいずれも下記、昨年のものよりも減少している。
(19年の数字)
・犬の飼育頭数 …約879万7000頭
・同 飼育世帯数 …約715万2000世帯
・猫の飼育頭数 …約977万8000頭
・同 飼育世帯数 …約552万4000世帯
しかしながら、「1年前(1年以内含む)からペットを飼い始めた」という“新規飼育”に関する数字を挙げると、以下のとおりになる。
「犬」
…20年新規飼育数 約46万2000頭
(前年比約114%・19年は約40万4000頭)
…同 飼育世帯数 約39万5000世帯
(前年比約112%・19年は約35万4000世帯)
「猫」
…20年新規飼育数 約48万3000頭
(前年比約116%・19年は約41万6000頭)
…同 飼育世帯数 約38万2000世帯
(前年比約117%・19年は約32万6000世帯)
ご覧のとおり、いずれの数字も19年のものに比べ、20年の方は結構な割合で伸びている。「ここ1年のうちにペットを飼い始めた」という人が、グッと増えた昨年だった、ということになるだろう。ペットフード協会は、このことにつき、以下のようなコメントを添えている。
「20年の1年以内飼育開始者(新規飼育者)の飼育頭数は2019年と比べて増加し、増加率もそれ以前の年に比べて大きい」
「ペットショップでの購入が、1年以内飼育開始者で例年に比べ20年は多い」
「コロナにより外出を控えるなか、近くのペットショップへ足を運ぶ機会が増え、その結果、購入が伸びたのではないかと推察される」
こうした動きに連動し、昨年は、もしかすると賃貸住宅市場においても「ペット可」物件への問い合わせが、前年比の数を伸ばしていたかもしれない。
一方、今年(21)の3月、ペット保険を取り扱うアニコム損害保険株式会社が、「ペットにかける年間支出調査 2020」と、題した調査結果を公表している。
いまどき、ペットを飼うにはどのくらいのお金がかかるのか……? それについて、アニコムの保険の契約者の人たちに対し、尋ねたというものだ(有効回答数3532)。
以下が、20年の1年間にペット1頭へ支出した費用の平均である。19年の数字も添えておこう。
「犬」
20年 …33万8561円(前年比110.4%)
19年 …30万6801円
「猫」
20年 …16万4835円(前年比103.9%)
19年 …15万8680円
なお、この数字の内訳を見ると、ここにも「コロナ」の影響がいくつか及んでいることが分かる。例えば、そのひとつ「ケガや病気の治療費」だ。
「犬」
20年 …6万430円(前年比134.7%)
19年 …4万4869円
「猫」
20年 …3万1848円(前年比133.1%)
19年 …2万3919円
「ペットホテル・ペットシッター費用」です。
「犬」
20年 …3991円(前年比47.9%)
19年 …8339円
「猫」
20年 …1609円(前年比46.4%)
19年 …3469円
これらについて、アニコム損害保険では、
「コロナ禍により、ペットと家で一緒に過ごす時間が増えたことから、些細な変化に気付き、病院に連れていくことが多くなった結果か?」(ケガや病気の治療費)
「外出自粛により旅行などに行けなかった人が多かったことがうかがえる」(ペットホテル・ペットシッター費用)
との旨をコメントしている。後者は特に的を射たものといえるだろう。
ところで、賃貸住宅での「ペット可」とひと口にいうが、そのスタンスは大きく2つに分かれる。一方は、「ペット共生型」だ。飼育のための環境や設備が整った、いわばペット歓迎型の物件である。
もう一方は、消極的なケース。設備などには投資せずに、専ら空室対策のため、入居条件のみを「ペット可」とするものだ。
これらについては、いろいろと意見も聞かれるが、実は、筆者は後者のスタイルはあまり好きではない。そのため、後者を行うオーナーに対しても、
「徐々に壁紙や床材などをペット対応のものに替えたり、リードフックを取り付けたりなど、できる範囲で投資はされていった方がいいですよ」
と、すすめている。理由は、後者のケースで、物件が急速に荒れていくのをたまに見るからである。ペットがいることによる建物の劣化のみならず、
「空室が埋まらないので、本来望まないペット可を選ばざるを得なくなってしまった。本当は嫌だ……」
オーナーのそうしたメンタルが管理に影響し、それが物件の様子にも表れてくる。例えば、捨てられたチラシが床に散らばるエントランスの壁に、騒音がどうだの、駐輪のし方がああだのと、生活に関する注意書きがベタベタと貼られている……。
そんな、入居者同士までがギスギスした雰囲気の物件が、“消極的ペット可”で運営されているケースを筆者は過去にいくつか見てきている。ペット可にする以上、ペットは入居者の一員だ。
犬や猫は、もちろん彼ら自身が家賃を払ってくれるわけではないが、彼らがいてくれたからこそ、飼い主である入居者は、その物件を選んでくれたわけだ。いわば、ペットは縁結びの神様である。
「ペット可を運営するなら、彼らを大事にしないと運気が下がるぞ」
そんな気持ちで、ぜひペットたちを迎えてあげたいものだ。
この記事を書いた人
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