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ビークル

資産と投資家をつなぐ組織
英語でビークル(vehicle)とは車両の総称。輸送手段、媒介物なども意味します。自動車が連想されることも多いと思いますが、実は宇宙船のことも「a space vehicle」と呼ぶのだとか。要するに何らかの乗り物、もしくは何かを運んだり伝達する手段ことをビークルと呼ぶわけです。
実は不動産証券化においても「ビークル」と呼ばれるものがあります。資産と投資家をつなぎ、その利益を運ぶ組織を総称してビークルと呼ぶのです。もっとも実務上の呼び名は様々で、ビークルには投資法人、特定目的会社、特定目的信託、匿名組合など、様々な形態があります。
二重課税を回避する
不動産証券化の仕組みは、オリジネータ(原債権者)からビークルが不動産を購入し、証券化することで投資家に買いやすくするというものです。高額な不動産に直接投資をすることは難しくても、小口化された証券であれば個人投資家であっても投資しやすくなります。
しかし、証券化には二重課税の問題があります。まずビークルの段階で法人税がかけられ、個人投資家が利益を受け取る段階では所得税がかけられます(法人なら法人税)。すると投資商品としては魅力が半減してしまいますよね。そこで証券化においては、二重課税の回避措置が取られているのです。

①パス・スルー方式
ビークルが課税対象にならない二重課税回避法のことをパススルー方式と言います。これは特定目的会社と匿名組合を組み合わせるもの。匿名組合は商法上の契約形態なのですが、法人ではないので匿名組合の事業の利益には課税されません。利益は匿名組合から分配金として組合員に配当されますが、分売金は損金として計上できるのです。ただし、組合員に配当される際は課税されます。

②ペイ・スルー方式
ペイ・スルー方式ではビークルが稼いだ収益の90%以上を配当に回します。すると「投資法人の課税の特例」により、一定の要件を満たせば法人税がほぼ免除されるのです(分売金を損金算出できる)。ただし、やはり配当の段階では課税されます。

このような仕組みにより、ビークルの儲けは限りなく少なくなり、その大半は投資家の利益となります。このような機能を「導管体」と呼びます。導管とはパイプラインのことで、利益を運ぶ役割を果たします。導管体の機能を持つがゆえに特定目的会社などはビークルと呼ばれるわけです。
なお、ビークルには「倒産隔離」の機能もあります。簡単に言えば証券化に関わるビークルなどが倒産しても不動産や証券化の仕組みを守る機能のことです。この機能により万が一の場合でも投資家や銀行などの利益が損なわれないようになっています。