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追認

追認とは、取り消すことができる法律行為に対して、後からその行為を取り消さないと決める意思表示のことをいいます。取消権の放棄ともいいます。

制限行為能力者
追認は、制限行為能力者を保護する場合に使われることが多くあります。制限行為能力者とは、判断能力が不十分な人のことをいい、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人があります。未成年者とは、20歳未満で婚姻をしていない者をいいます。保護者は親や未成年後見人です。成年被後見人とは、精神上の障害によって、物事の判断能力を欠く状況にある者で、家庭裁判所によって保護される手続きを受けた者をいいます。保護者は成年後見人です。被保佐人とは、精神上の障害により、物事の判断能力を欠く状況にある者で、家庭裁判所によって保護される手続きを受けた者をいいます。保護者は保佐人です。被補助人とは、精神上の障害により、物事の判断能力が不十分である者で、家庭裁判所によって保護される手続きを受けた者をいいます。保護者は補助人です。
たとえば、制限行為能力者が財産上重要で保護者の同意を得なければ取り引きできない行為を取り引きしてしまった場合、その取り引きは取り消すことができます。しかし、その取り消すことができる取り引きを取り消さないとすることが追認です。
重要な財産上の行為
重要な財産上の行為とは、たとえば不動産の売買をしたり、5年を超える土地の賃貸借、3年を超える建物の賃貸借をしたり、新築や改築、増築をしたり、あるいは借金をしたり保証人になったりすることです。
制限行為能力者の相手の保護
追認は、制限行為能力者と取り引きした相手を保護するものといえます。なぜなら、制限行為能力者と取り引きをしたことで、その取り引きがいつ取り消されるかわからない状況に置かれるからです。そのため、制限行為能力者と取り引きをした場合には、1カ月以上の期間を定めて追認するかどうかの催促することができます。これを催告権といいます。
催告
制限行為能力者と取り引きした相手が追認の催告をしたにもかかわらず、それに対する返答がない場合、催告した相手によって追認したとみなされたり、取り消したとみなされたりします。未成年者の場合は、法定代理人に催告し、返答がなければ追認したとみなされます。成年被後見人の場合は、法定代理人に催告し、返答がなければ追認したとみなされます。被保佐人の場合は、保佐人に催告し、返答がなければ追認したとみなされます。本人に催告し、返答がなければ取り消したとみなされます。被補助人の場合は、補助人に催告し、返答がなければ追認したとみなされます。本人に催告し、返答がない場合は取り消したとみなされます。
また、以前は制限行為能力者であったものの、催告するときには行為能力者となっていた場合は、本人に催告し、返答がなければ追認したとみなされます。

追認と無権代理人

追認されたら取り消すことができなくなる
追認とは「過去に遡って事実と認めること」が辞書上の意味ですが、法律的には「取消権の放棄」「事後同意」とも呼ばれる行為を指します。追認は「取り消すことができる法律行為に対して、後からその行為を取り消さないと決める意思表示」「一応有効に成立したとされる法律行為を、意思表示により確定的に有効とする行為」などと解説されますが、なかなかピンと来ないと思います。簡単に言ってしまえば、「権利者が後からOKを出すことで契約が有効になる」ということで、前提として「法律行為が取り消されるかもしれない」という状態があることになります。追認がなされ、取消権の放棄がなされれば、その法律行為(契約など)は有効に確定します。逆に言えば、追認が為された法律行為は取り消すことができなくなります。
追認は契約した相手方を守る
追認は様々な法律行為に適用されますが、例えば宅地建物取引(宅建)にも追認は関わってきます。
追認は主に制限行為能力者(判断力が不十分な人)との関わりでよく使われますが、不動産関係では無権代理人(代理権を有しない者)が行った契約を契約者本人が追認する、といったケースが考えられます。代理人と称していた人物に実は代理権がなかったり、与えられた代理権の範囲を超えた行為をしたり、行為時に代理権が消滅したりしていた場合は、無権代理となります。無権代理人が結んだ契約は無効で、原則として本人に効力は生じません。もちろん本人が追認すれば契約は有効になりますが、これでは契約を結んだ相手方は困ってしまいますね。このような事態に対処するため、民法では相手方は追認するかどうかを催促することができます(返答には1ヵ月以上の期間を設ける)。これを「催告権」と言い、返答がなければ「追認拒絶」と見なされ、契約は有効に成立します。ちなみに契約当時に無権代理人であることを知っていた場合にも催告権は認められます。
契約者本人を縛る「表見代理」
契約を結んだ相手方にはもう一つ、「取消権」が認められています。これは契約時に無権代理であることを知らず(過失の有無は問わない)、本人がまだ追認をしていない場合に認められる権利です。無権代理の例として「与えられた代理権の範囲を超えた行為をする」というものがありましたが、例えば土地の管理を頼まれていた者がその土地を売却してしまった場合などは代理権の範囲を超えていると見なされます。契約者本人が売却を追認すれば問題はないのですが、追認もなく、代理人が売却の権限を持っていなかったことを相手方が知らなければ、相手方は取消権を行使することができます。
ちなみに無権代理行為の中でも、相手方にまるで本当に代理権を持っているように見える場合、契約者本人に対しては無権代理を理由として自分への効果の帰属を拒否できないようにしています。これは無権代理人が代理権を持つと信じて取引した相手方を保護するために代理権が存在した場合と同様の責任を本人に負わせる制度です。これを表見代理と呼びます。表見代理と認められる場合は「自称代理人が勝手にやったことだから無効」という論理は通用しない、ということです。一般的には表見代理は無権代理の一種だと見なされています。