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抵当権

お金に「相当する」ものを担保とする
抵当権の「抵当」という言葉、考えてみれば意味がよくわかりませんね。「抵」にも「当」にも「相当する」という意味があります。「大抵」「一騎当千」などの言葉の意味を考えるとわかりやすいかもしれません。つまり「抵当権」とは「相当するものに関する権利」という意味になるでしょう。夏目漱石の『坑夫』には「その金が返せねえから、嚊(かかあ)を抵当に取られちまったんだから」というセリフが出てきます。明治時代にはすでに抵当という言葉があったんですね。抵当権は、住宅ローンなどを借りる時、債務者が万が一債務不履行に陥った場合に備えて購入する住宅の土地と建物に金融機関が設定する権利のことを指します。
金融機関にとっては必要不可欠
抵当権を設定することはいわゆる「担保に取る」行為と同じなので、抵当権の付いたローンのことを有担保ローンと呼ぶことがあります。
抵当権はお金の貸し借りが行われる時点で設定登記を行います。通常は司法書士に頼んで登記してもらいます。金融機関としては不動産に抵当権を確実に設定できることを確認する必要がありますので、司法書士に事前に確認してもらう意味もあります。したがって、抵当権を登記する際は登録免許税と司法書士に対する報酬が必要になります。
ちなみに抵当権が付いた不動産も相続の対象となり、相続税が課税されます。抵当権が設定されていても相続税評価額が下がることはありませんが、借金は財産から差し引いて計算されます。
問題は抵当権の抹消手続きです。住宅ローンなどを完済すれば抵当権は消滅するので登記を抹消しなければならないのですが、金融機関はお金を貸しているだけなので抹消の手続きを行ってはくれません。自分で法務局へ行くか、司法書士に依頼して手続きを行う必要があるのですが、「抵当権自体は消えたのだから」と放置していると思わぬデメリットを被ることがあります。
登記が残っていると不動産が売れない?
ローンを完済して抵当権も消えたから不動産を売却しよう!と思っても、抵当権の登記が抹消されていなければ売却時に不利となってしまいます。買う人から見れば、登記簿上には抵当権が付いたまま。口頭で「完済しました」と説明しても、実際に完済されたかどうかはわからないので、買い手が寄りつかなくなってしまうのです。また、登記が残っていると「ローンを完済したのに、別のローンに登記を流用しているのでは?」と勘繰られたり、増改築などのために融資を受けようとしても二重ローンを疑われて通らない可能性があります。
登記の抹消に期限はないのですが、金融機関の名前などが変わったり、吸収合併で消滅したりすると抹消手続きが煩雑になります。完済したら速やかに手続きしておいた方が良いでしょう。