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建物明渡猶予制度

建物明渡猶予制度とは、抵当権が設定された賃貸借物件において抵当権が実行され、競売などがされた場合、借主は競落人が買い取った日から6カ月間は、その不動産を明け渡さなくてもよいという制度のことをいいます。

短期賃貸借制度の廃止
短期賃貸借制度とは、建物は3年、土地は5年を超えない短期の賃借権については、期間満了までは抵当権者に対抗できるとしていた制度です。賃貸権や敷金返還義務も競落人に引き継がれるとされていました。しかし、実際には、競落人によって借主は直ちに物件の明け渡しを要求されるようなことがあり、抵当権の適正な競売手続きは進められていなかったといえます。
そこで、民法の改正によって短期賃貸借制度を廃止し、平成16年4月1日に建物明渡猶予制度が創設されました。これによって、借主が適正に保護されるようになり、競落人が買い取った日から6カ月間は物件を明け渡さなくてもよいこととなりました。その一方で、競落人に賃貸権や敷金返還義務も承継されないこととなりました。
ただし、平成16年4月1日よりも前に締結された短期賃貸借の場合は、改正後も短期賃貸借制度が適用されます。
抵当権
抵当権とは、家や土地を購入する際に銀行などからお金を借りるとき、その家や土地をローンの担保とする権利のことです。ローンが支払えなくなったときには、その家や土地を銀行などが取り上げることとなります。
抵当不動産
抵当不動産とは、抵当権が設定された不動産のことです。
競売
競売とは、抵当権を設置した不動産などをローンを組んで購入した後、ローンの支払いができなくなったような場合に、裁判所を通じてその不動産を競りにかけることをいいます。また、競売にかけられた物件の所有権を取得した人のことを競落人といいます。
建物明渡猶予中の借主
居住中の賃貸借物件が競落人に買い取られ、物件を明け渡さなければならない場合、借主は退出するまでに6カ月間の猶予を与えられることになります。その間も家賃は発生し、基本的に従来どおりの賃料を競落人に支払うことになります。
敷金に関しては、通常は退出する際に余った敷金は返還されますが、返還義務は競落人に引き継がれません。そのため、元の貸主に返還してもらうことになります。しかし、元の貸主に資金力がないことが考えられるため、敷金の返還がなされない場合もあるようです。
また、引っ越しに関する費用などは、場合によっては競落人や元の貸主が一部負担してくれることもありますが、基本的に請求することはできません。