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動線

「動線」は建築業界がルーツ
「動線」と言えば、人や物が移動する軌跡や方向を示す線のことを思い浮かべるでしょうか。例えば客動線と言えば、買い物客が店内を見て回る際に歩く軌跡のこと。この動線が長いほど、買い物客は店内の商品とより多く、より長い時間接することになります。近所のスーパーで内部のレイアウトが変わったとしたら、もしかすると客動線を考えて商品の並べ方を変えたのかもしれません。また、従業員が作業を行うために移動する動線はサービス動線と呼ばれます。他にも生活動線、家事動線などといった用語もあります。
「動線」という言葉は1939年に発行された『小住宅厨房の研究』(同潤会)で使われたのが最古の用例だと言われています。建設業界が言葉のルーツだったわけです(ことばオンライン2011年9月20日記事より)。一部では「導線」という言葉も使われていますが、建設業界ではもともと「導線」は電線という意味で、「動線」とは峻別されていました。
設計では「動線計画」も重要
『建築学用語辞典』(岩波書店)には「建築・都市空間における人や物の動きの量、方向、つながりなどを示す線」として動線が掲載されています。建物の間取りを設計する際は、必ず動線を意識しなければなりません。設計において動線を考慮することを動線計画と言います。
動線計画では、平面での人、または物の動きを線で表し、その流れが機能的であるようにしなければなりません。「スーパーでは動線が長い方がいい」という話を先述しましたが、家づくりの場合は逆になります。家づくりの場合は動線が短くなるように設計するのが基本です。例えば居室や寝室からトイレまでの動線が長ければ1日に何度も長い距離を歩かなければなりませんし、キッチンと洗濯機置場が離れていれば、料理をしながら洗濯をする場合に不便でしょう。部屋の配置はもちろん、家具や設備の配置にも動線を考える必要があるわけです。
動線を考える場合は、異なる動線が交わる「交差」、利用者が移動する距離である「長さ」、迷わず目的を達成できる「明快さ」などを考慮しなければなりません。
炊事や洗濯などをするときの動線を「家事動線」、トイレやお風呂などに移動する動線を「生活動線」、お客様の動線を「来客動線」と言います。特に配慮すべきは来客動線で、これが他の動線と交差してしまうとお客様がリビングに上がる途中で洗面所や浴室など、家族のプライベートな部分を目にすることになります。家を建てる際はストレスを受けることがないように、動線をじっくりシミュレーションすることが大切です。