隠れたる瑕疵とは、住宅や土地などの売買契約をした後、契約時点で買主が把握できていなかった瑕疵のことです。瑕疵とは、きずや不具合、欠陥などのことをいいます。ただし、注意力を働かせていれば発見できたであろう瑕疵は隠れたる瑕疵とはなりません。
- 具体的な瑕疵
- 隠れたる瑕疵の具体例として挙げられるのは、地盤の軟弱や陥没、建物の傾斜、屋根に欠陥があったための雨漏り、シロアリ被害などです。
- 瑕疵担保責任
- 売買契約後に隠れたる瑕疵があった場合、買主は売主に対して損害賠償を請求したり、契約解除をしたりできます。売主が買主に対して負う損害賠償などの責任を瑕疵担保責任といいます。隠れたる瑕疵によって、損害賠償請求や契約解除できる期間は、買主が瑕疵の存在を知ってから1年以内と制限されています。
- 住宅瑕疵担保責任保険
- 住宅瑕疵担保責任保険とは、購入した住宅に瑕疵があった場合、修繕や補修などを行った事業者に支払われる保険のことです。つまり、建設業者やリフォーム業者などが加入するもので、消費者が加入する保険ではありません。住宅瑕疵担保責任保険には、新築住宅を対象とした保険、リフォーム工事を対象とした保険、中古住宅を対象とした保険があります。消費者がマイホームを建てる際やリフォームする際は、契約前に業者が住宅瑕疵担保責任保険に加入しているかどうかを確認することが重要です。住宅瑕疵担保責任保険に加入していない業者であれば、その業者の信頼性は低いといえます。
- 住宅瑕疵担保責任保険法人
- 住宅瑕疵保険は、国土交通大臣に指定された住宅瑕疵担保責任保険法人が引き受けています。
- 住宅瑕疵担保履行法
- 住宅瑕疵担保履行法とは、新築住宅を供給する事業者に、住宅の引き渡しから10年間の瑕疵保証責任が義務付けられている法律で、消費者を守るための法律といえます。
- 住宅瑕疵担保責任の範囲
- 住宅瑕疵担保履行法により、10年間の瑕疵担保責任の対象となるのは、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分です。構造耐力上主要な部分とは、屋根版、壁、柱、斜材、床版、土台、基礎などです。雨水の浸入を防止する部分とは、屋根、開口部、外壁などです。
- 住宅リフォーム紛争処理支援センター
- 住宅の売買やリフォームなどでトラブルがあった場合には、国土交通省が所管する公益法人住宅リフォーム紛争処理支援センターで相談することが可能です。住宅紛争処理の支援を行ったり、住宅瑕疵やリフォームによるトラブルなどについて専門家が電話相談に応じたり、情報収集に応じたりしています。
「隠れたる瑕疵」の認定
- 瑕疵が認められる場合、認められない場合
- 住宅や土地などの売買契約をしたあとになって発見される、契約時点で買主が把握できていなかった瑕疵(傷、不具合、欠陥)のことを「隠れたる瑕疵」と言います。不動産投資に携わる人にとっては最も警戒すべきトラブルの一つでしょう。とは言え、実際には「隠れたる瑕疵」と認定されれば、瑕疵担保責任によって買主は守られます(損害賠償請求や契約解除できる期間は買主が瑕疵の存在を知ってから1年以内)。ただし、「発見できたであろう瑕疵」は隠れたる瑕疵とはなりません。ちょっと刺激のきつい事例ですが、殺人事件絡みの土地で買主からの請求が認められた事例と買主からの請求が棄却された事例を比較してみましょう(事例は単純化しています)。
- 瑕疵が認められた例
- XさんがYさんから更地にした土地を購入。Xさんは土地の建売住宅用地として売り出し、土地を購入したいという人も見つかりました。ところが、土地購入予定者は突然キャンセル。その後も広告を打ち続けましたが、一向に売れません。Xさんは不審に思い、警察に照会。すると更地になる前に建っていた建物で殺人事件があったことがわかりました。しかも、女性が胸を刺されて殺害されるという、残虐性が高い事件。XさんはYさんに対し「殺人事件があった事実は『隠れたる瑕疵』に当たる」として損害賠償請求の訴えを提起。裁判では売買金額の5%に相当する額が損害賠償として認められました。
重要なのは、心理的欠陥(嫌悪すべき歴史的背景がある)も瑕疵として認められるということ。裁判では、残虐性の高い殺人事件があったという事実は新聞で広く報道されており付近の住民が覚えていると推測されること、もし土地が売れても居住者が後から事件のことを知る可能性があることなどが考慮されました。同時に、殺人事件が発生したのが売買の8年以上前であること、建物は売買時に解体されていたことなどから、嫌悪すべき心理的欠陥がある程度風化していたことも考慮されています。 - 瑕疵が認められなかった例
- ある建物で8年ほど前に殺人事件がありました。事件は全国紙3紙の社会面で報道されました。数年後、Xさんが土地を購入。その際、重要事項説明書などの資料に事件に関する記述はありませんでした。その後、Xさんはこの土地を転売。Y社が宅件業者の仲介でこの土地を買い取り、さらに、同じ宅件業者の仲介で隣接する土地を購入、合わせた土地の上に建物を新築しました。その後Y社は土地と新築建物に根抵当権を設定、これに基づき数年後に競売にかけられ、Y社は所有権を喪失します。その過程で近隣宅建業者から殺人事件があったことを知らされたY社は「売主(Xさん)と仲介業者は事件のことを知っていて教えなかった」などとして損害賠償を請求しましたが、訴えは退けられました。
Xさんが土地を購入した際の資料には事件に関する記載がなく、土地が相場より安く売られた事実もない。つまり、この時点で事件を前提とした売買契約ではなかったことが推定できます。また、Xさんも仲介業者も、諸事情を考慮すると、新聞記事(社会面の小さな記事)になったから事件を知っていたはずだと推認することはできない、事件を知っていただろうとするY社の主張は前提を欠く、と判断されました。
第一のケースでは残虐性の高い事件の影響が現在でも大であるとして「隠れたる瑕疵」が認められました。第二のケースでは事件が土地売買に影響を与えていなかったこと、売主・仲介業者が事件のことを知っていたとは限らないことから、「隠れたる瑕疵」とは認められませんでした。
(参考:ホームページ「いえと生きる不動産売却バイブル」)