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減価償却

減価償却とは、経年に伴って価値が減少していく固定資産に対して計上できる経費です。固定資産を購入したときに、全額を一会計年度に経費として計上するのではなく、経年で減少した価値分を減価償却費という経費として計上します。

不動産における減価償却
経年により価値が減っていく資産が減価償却の対象となります。そのため、減価償却の経費として計上できるものは、建物や建物に付属する設備、機器、器具や備品、車両運搬具などです。経年で資産の価値が減らない土地は、減価償却の対象とはなりません。
減価償却資産の耐用年数と減価償却率
減価償却資産は、国税庁によって耐用年数が定められています。その耐用年数ごとに、さらに経費として計上できる額を計算するための減価償却率が定められています。
建物の耐用年数
建物の耐用年数は、構造や用途によって、たとえば次のように決められています。
木造・合成樹脂造 事務所用    24年
         店舗用・住宅用 22年
木骨モルタル造  事務所用    22年
         店舗用・住宅用 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 事務所用 50年
                      住宅用  47年
金属造      事務所用
          骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの      38年
                  3mmを超え、4mm以下のもの 30年
                  3mm以下のもの       22年
         店舗用・住宅用
          骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの      34年
                  3mmを超え、4mm以下のもの 27年
                  3mm以下のもの       19年
設備や機器などの耐用年数
建物設備や機器の耐用年数は、たとえば次のように決められています。
アーケード・日よけ 主として金属製のもの 15年
          その他のもの      8年
電気設備      蓄電池電源設備     6年
          その他のもの     15年
給排水・衛生設備、ガス設備        15年
事務机、事務いす、キャビネット 主として金属製のもの 15年
                その他のもの      8年
インターホーン、放送用設備 6年
定額法と定率法
減価償却費を計上するにあたっては、定額法と定率法があります。それぞれ次のような特徴があります。
定額法は、償却費の額が原則として毎年同額となる償却方法で、計算方法は、「取得価額×定額法の償却率」となります。
定率法は、償却費の額が基本的に経年とともに減少する方法です。計算方法は、「未償却残高×定率法の償却率」となります。ただし、減価償却費が償却できる最低ラインとなる償却保証額に満たなくなった年以後は「改定取得価額×改定償却率」で計算されます。
ちなみに、建物の減価償却は、定額法での計算しかできません。付属設備や機器などは、定額法と定率法のいずれかの方法を選択することができます。

賃貸オーナーが減価償却を学ぶ意味

減価償却費はキャッシュフローでは引かれない
減価償却とは、一時的な支出を耐用年数に応じて分割して費用化することです。例えば2000万円でマンションを購入した時、その年の費用として2000万円を丸ごと計上したとすると、少しおかしなことになります。マンションは数十年にわたって使うのが普通なのに、翌年以降は費用ゼロでマンションを使うことになってしまうからです。このため、使う年数に応じて費用を分割して考えるのが、減価償却なのです。
減価償却の考え方は、資産評価にもつながります。先ほどの例で言うと、購入した年が終わっても、マンションは現物が残ります。これは資産(財産)ですから、年度末には財産簿に載せることになります。しかし、1年後にはマンションの価値は少し下がっているはず。そこで、減価償却分を費用から引いて考えます。
2000万円のマンションが40年間使えるのであれば、毎年50万円ずつ費用として計上する。帳簿上の資産価値は1年目が終わった時点で1950万円、2年目で1900万となっていくわけです(実際には国税庁によって耐用年数が定められています)。
キャッシュフローで考えると、例えば減価償却費50万円のマンションで毎年80万円収入があったとすると、初年度は80万円-50万円で、利益は30万円(単純化しています)。しかし、実際のキャッシュフローでは初年度に2000万円支払っているので、2年目以降は売上80万円が丸々残ることになります。これは初年度に投資した2000万円を毎年少しずつ回収していることになります。
ちなみに、「○○万円で中古マンションを購入した」と言う場合、この費用に土地代金が含まれていれば、その分は減価償却の対象にはなりません。減価償却の対象になるのは建物部分だけです。土地は何年使っても価値が減らないと考えられるからです。
賃貸オーナーにとっては、減価償却を学ぶことで利回りについて理解を深めることができます。
利回りには年間の家賃収入の総額を物件価格で割って算出する「表面利回り(グロス)」と、諸経費や税金などを計算に入れてより現実に近い利回りを算出する「実質利回り(ネット)」があります。実際に不動産物件を購入する際は借り入れを行うのが普通ですから、毎月返済が生じます。そして、毎月の返済は減価償却で賄おうとするのが一般的です(返済原資は税引後利益に減価償却費を加えた額になります。減価償却費分は実際には支払わないからです)。減価償却を理解すれば、実質利回りが理解しやすくなり、より堅実な経営ができるようになるはずです。