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内金

手付金と内金
売買契約には、普通の生活をしていてもなかなか出てこないような用語がしばしば登場します。内金もその1つです。
日常生活で比較的よく聞く言葉に「デポジット(deposit)」があります。契約の際に万が一に備えて設定されるもので、意味は「保証金」「預り金」。ホテル、レンタカー、公衆電話などを利用する際に、保証金、預り金として一定の金額を先方に預けるシステムです。ホテルなどでは、クレジットカードの提示を求められることもあります。スタッフはカードのコピーを取り、チェックアウトの際に何か支払が発生していれば、そのカードにチャージされます。あるいはデポジットとして現金を預けていれば、チェックアウトの際に精算され、特に追加の支払がなければデポジットはそのまま返却されます。カードであれば、何もチャージされません。
実はdepositには「手付金」「供託金」「頭金」「敷金」などの意味もあります。不動産売買における手付金と言えば、買主から売主に支払われるお金のこと。売買契約が成立したとき、買主が「その物件を本当に買いますよ!」ということを示す証拠としての役割があります。また、当事者に金銭によって解約権を留保したり、買主・売主共に勝手に契約を反故にしないように保証するものでもあり、後者の場合は契約不履行があれば損害賠償あるいは違約金として支払われます。
内金は「代金の一部前払」
一方、内金は売買契約成立「後」に支払われるお金になります。内金は代金の一部前払が趣旨となっています。つまり、最初から代金の一部ということです。これに対し、手付金は売買代金の一部ではありません。不動産売買では契約締結時点と残金決済・物件の引き渡しに一定期間のずれが生じるのが一般的です。その間は法律関係がやや一定しないので、手付金を支払っておくという慣行ができあがっています。ちなみに契約時に「手付金は、残代金支払時に売買代金の一部に充当する」といった規定が設けられていることが多く、その場合は結局は売買代金の一部になるのですが、あくまでも目的は解約権の設定や損害賠償等の保証にあります。
内金にそういった機能はありませんが、「売買代金の一部の支払があった」という事実は法律効果を持ちます。
宅地建物取引業法では、手付金・内金のいずれに対しても不測の事態が生じた場合に授受された金銭が確実に返還されるように、保全に必要な措置を定めています(第41条・第41条の2)。
賃貸貸借表では「前払金」
ちなみに賃借対照表では、手付金も内金も「前払金」の勘定項目となり、資産に含まれます。事前に手付金や内金を支払うと「後で商品を受け取る権利」が発生するからです。