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逸失利益

事故がなければ得られるはずだった収入
不動産投資に限らず、世の中には様々な「損害賠償」が存在します。例えば交通事故であれば、治療費、慰謝料などが含まれますが、事故に遭って一時的にせよ働けなくなった場合は、「事故がなければ得られるはずだった収入」も損害賠償に計上されることになります。この「得られるはずだった収入」のことを「逸失利益」と呼びます。
逸失利益は、より厳密に言えば「債務不履行・不法行為がなければ得られたはずの利益」のことを指します。交通事故で言えば、事故(不法行為)の被害者が死亡したり、後遺症が残るような怪我をしたら「事故がなければ得られるはずだった利益」が算定され、別名「得べかりし利益(うべかりしりえき)」「消極的利益」として処理されます。特に後遺障害の場合は、「将来の休業損害が逸失利益」と考えるとわかりやすいかもしれません。
年収の何%が今後失われるか
逸失利益の基本的な考え方は「年収の何%かが今後数年にわたって失われる」というのもので、以下のような計算式で算出されます。

逸失利益 = ①基礎収入額 × ②労働能力喪失率 × ③対象年数の係数

基礎収入額に関しては専業主婦・主夫(家事従事者)、兼業主婦、若年層、子供の場合で算定方法が異なります。労働能力喪失率は後遺障害等級別に決まっています。
不動産収入、配当収入は逸失利益にならないことも
不動産投資を行っていた人が不幸にして事故に遭ってしまった場合、逸失利益はどうなるのでしょうか。実は、以下の収入等は原則として基礎収入額に含まれません。

1.利子所得
2.配当所得
3.不動産所得
4.譲渡所得
5.一時所得
6.雑所得
7.退職所得

「えっ、不動産所得も含まれないの?」と思うかもしれませんが、考えてみれば不動産所得は「被害者が働かなくても減少・喪失することのない収入」と見なされるもの。得ていた収入が減るのでなければ、逸失利益とは見なされない道理です。
例えば家賃収入と株式の配当収入で生活していた人が事故に遭って死亡した場合、家賃収入と交通事故の有無の金額には関連性はないと考えられます。また、株式の配当収入も、交通事故の有無に関係なく配当を受け取ることができるものなので、一般的に損害とは見なされないでしょう。一方、死亡したのが借り手だった場合、①債務不履行によって生じた損害、②不法行為によって生じた損害は逸失利益と認められるので、大家は相続人に対して違約金や賠償金、逸失利益が請求できますし、死亡事故によって生じた「心理的瑕疵(家賃減額等)」「原状回復費用」等を逸失利益として相続人に請求することが考えられます。事故物件ということで、大家さんは経済的損失を被ることが予想されるからです。遺族にとっては理不尽に感じられることもあるかもしれませんが、よく話し合ってよい着地点を探すことが肝要でしょう。