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意思能力

法律行為を行う能力があるかないか
民法第7条に「事理を弁識する能力」という言葉がありますが、これは「意思能力」のことです。
意思能力とは有効に意思表示をする能力、法律行為を行った際に自己の権利や義務がどのように変動するかを理解するだけの精神能力のことを言います。民法上には「意思能力」と記された明文はないのですが、このような意思能力を持たない者=意思無能力者が行った法律行為は無効とされています。一般的には10歳未満の子供、重い精神病や認知症などを患っている者には意思能力がないものと見なされます。また、飲酒や薬物の服用によって一時的に意思能力がない状況が生じることもあり得ます。
「意思能力がないからと言って、法律行為を無効にするのはやり過ぎではないか」と思う人がいるかもしれませんが、法律行為には義務が生じるものもあります。例えば小さな子供には、その行為によってどのような義務が生じるか、理解することが困難な場合もあるでしょう。よって、意思無能力者を保護するべきであるとの観点から、意思無能力者が行った行為の効力を否定することにより、その者を消極的に保護することとしているのです(行為から生じる義務に拘束されない)。

民法第3条の2…法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

ちなみにこの規定は「民法の一部を改正する法律」によって新設されたもので(2020年4月1日施行)、旧法には規定されていませんでした。もっとも、判例や学説では従来から保護されるべきものとされていました。
通常、法律行為が無効な場合、その契約等の無効は当事者の誰からでも主張することが可能です。これは、意思無能力者が行った法律行為でも同様とされています。
ただし、意思無能力者が無効を主張しない場合、つまり、契約等の効力の存続を希望する場合はこの限りではありません。意思無能力者を保護する観点から、意思無能力者が存続を希望する場合は相手が無効を主張することは許されないと解されています。
意思無能力の証明
意思無能力による無効は、先に述べたような未成年取消、成年後見取消などの規定からも理論付けられています。ただし、例えば酔っ払った勢いで不動産契約を結んでしまった場合、後から「あの時は意思能力がなかったから無効だ」と主張しても認められない場合もあるので、注意が必要です。意思能力を欠くほどの泥酔状態でなければ、契約は有効になるでしょう。