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一筆の土地

土地を「筆」という由来には諸説あり
土地登記簿(不動産登記制度)の歴史は意外と古いものです。権利に関する登記は、1887年(明治20年)2月、登記法(明治19年法律第1号)の施行に始まります。ちなみに登記法は、民法が制定される前に施行された我が国で初の法律であるという歴史を持ちます。実は当時は「地所登記簿」と「建物登記簿」があり、申請に基づいて所有権取得等を登記しました。
その後、民法が施行され、1899年(明治32年)6月、不動産登記法が施行されました。他にも「表示に関する登記」の創設、「農地改革による登記」などを経て、やがて登記簿と土地台帳が一元化。2008年(平成20年)には全国すべての登記所でコンピュータ処理が開始されています。
こうして見てくると、土地を巡る状況はだいぶハイテク化されているような印象を受けますが、言葉の分野では「一筆の土地」という、なかなか古風な用語が現役で使われています。
「分筆」すると様々な恩恵が得られることも
一筆(ひとふで、いっぴつ)の土地とは、登記簿謄本に記載された一個の土地のことを言い、「地番」が付けられます。なぜ土地を「筆」で表現するのかには諸説あり、1つの土地を囲う場合は周囲をなぞって「一筆書き」ができるので一筆と呼ばれるようになったという説、明治時代の「地租改正」の条文の中に「一筆毎ノ、一筆トナス地」という記述があるという事実に根拠を求める説、さらに遡れば豊臣秀吉が行った検地の中では土地の情報を一行(一筆)で書いていたことに由来する、といった説もあります。
建物の場合、マンションなどは「一棟」、家屋は「一軒」になりますが、土地のことを「一筆」と言うのは、意外な分だけ一度聞いたら忘れないかもしれません。
先に述べたとおり、一筆とは登記するときに使われます。宅地は「一区画」、道路は「一車線」などと表記されますが、土地は地目(土地の用途)に関係なく「一筆、二筆」と表記されます。
一筆の土地を不動産登記簿上で二筆以上に分けることを「分筆(ぶんぴつ)」と言います。「土地を子供の間で分けたい」「二世帯住宅だったけど広くなりすぎたので一部を売りたい」というときに役立つのが「分筆」です。
一筆の土地を複数人で所有することもできますが、処分する際は全員の同意が必要になるなど、何かと不便が生じます。しかし分筆しておけば、以下のようなメリットを受けられます。

①土地を共有しなくて済む
②土地を売却しやすくなる
③分筆により土地の地目を変えられる
④道路に面していない土地ができれば固定資産税を安くできることがある